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コンサル会社は 『提案書』という名の『コピペ紙芝居』を生産する工場だった

この会社はまるで、「紙芝居工場」のようだ。

結構いいネーミングだ。
工場も紙芝居も好きなので、それぞれを否定するものではない。

サービスを自社開発するベンチャーから、クライアント向けにコンサルティングの実施やソリューション提供をする大手企業に転職し、数ヶ月が経った。

「クライアントワーク」「コンサルティング」と呼ばれる仕事は、案件の受注が全てであり、それがそのまま売上に直結するため、年間に大量の提案書を作らなくてはならない。

提案をした数がそのまま全件受注につながるわけでもないので、受注率から逆算するとそれはもう膨大な数の提案書が作成されており、社内を飛び交う、パワポパワポパワポ。

量産が必要なので、相談を受けた案件ごとにゼロから作成することなどできるはずもない。そんなことをしている時間もリソースもないし、提案期限が決まっていることが多く、とにかく迅速にさばいていくことが重視されるからだ。
この量産体制が、工場みたいだな、と思った。


工場のレーンは、以下の流れで動き出す。

  1. クライアント企業から、「xxで困っているので、貴社で解決してもらえないか」という相談がはいる

  2. 対応できそうなチームのレーンに相談が流される

  3. チームでキックオフMTGが開催される

  4. キックオフMTGでは、「コレって、この間の〇〇社の案件に似てるよね」「どっか他のチームでこういうやつやってなかったっけ?」という会話がなされる

  5. 社内の過去の提案書を漁るタスクが発生する

  6. 社内コミュニケーションツール上や社内フォルダを検索、他チームに既存の提案書を提供してもらえないかという相談、などにより、それっぽい提案書をかき集める

  7. それっぽい過去の提案書をかき集めたら、継ぎ接ぎ検討MTGが開催される

  8. 継ぎ接ぎ検討MTGでは、「ココのコレが使えるね」「トンマナはクライアントに合わせなきゃね、今回は青ベースかな」「事例紹介いれとかなきゃね」という会話がなされる

  9. 経験の浅いメンバーに "つぎはぎ紙芝居"作成の任が課され、膨大なページ数の紙芝居が作成される

  10. チーム向けに"紙芝居発表会"が開催される

  11. "紙芝居発表会"では、「このイラストとこっちのは合っていないんじゃない?」「フォントサイズ揃えて」「もっと他の事例なかったっけ」という、提案の内容とは関わりのない指摘により紙芝居の修正がなされる

  12. クライアントへの提案会(紙芝居発表会本番)が行われる

  13. クライアントへの提案会(紙芝居発表会本番)では、喋りもしない・もしくは何もしていないメンバーが大量に出席し、スピーカーは表情のない顔と抑揚のないトーンで、淡々とページをめくり、報告を実施する


私はこのような紙芝居作成レーンが大量にある工場の一部で、作業員として働いている。
「あのレーンではあんななんだな」と遠目に眺めていることもあるし、自分がレーンに入り、流れてくるものを次に流すこともある。

これの何が、コンサルティングなんだろうか。

コンサル企業も受注できなければボランティアになってしまうので、できるだけコストをかけずに一定の質の提案をすることが重要であるのは理解する。

ただ、レーンのプロセスを改めて整理してみると、頭の使いどころは、「過去の案件を思い出すこと」「どうやったら良い貼り合わせになるかを考えること」「トンマナを合わせること」くらいである。

時間の配分は、過去にやってなかったっけ?の思い出会話に20%、提案書探しの旅に30%、つぎはぎ紙芝居作成作業に40%、紙芝居内部発表会が10%。

クライアントの事業の理解や、問題の深掘りや、クライアントの言葉から他の問題を発見する、などがなされることは稀だ。

何が問題かというと、考える力がどんどん失われていくことである。

このような既存の案件の横流しが当たり前になっていくので、これまで会社で対応したことのない相談や事象が発生すると、レーンの動きは途端に鈍くなる。最初はレーンにたくさん人が立つのに、やったことない領域だと知った途端、人がレーンから去っていき、最終的には気概のある人しか残らず少人数で必死に対応するか、人がゼロになって案件自体を辞退することになる。

つぎはぎしかしたことがないから、イチから物事を捉えて考えて組み立てることができない人が増えているし、クライアントが何を求めているかはそっちのけで手元にあるものを押し付けることには長けていく。

会社の役職者たちは、「考えることができる人がいなくて困っている」と、問題があることを理解はしているようだ。でもその状態を作っているのはそもそも自分たちであるということには気づいていない。

「型化」「モデルケース」という言葉が社内には飛び交い、何かあれば「型化をしたい」とそればかり。
レーンの複製および増産が事業上最も重要視され、新入社員がまず学ぶべきは、レーンへの並び方や、継ぎ接ぎの方法。

考えることができる人を採用して、レーンに新しい機能を追加しようとしても、既存のレーンは新機能に対して拒絶反応を起こすことが多い。
新機能の考えることができる人材は、自分の能力の活用の余地がないまま、意欲が削がれて退職するか、ま・いっかとなってレーンに染まっていくか、のどちらかだ。

さらに問題なのは、レーンで生成されたコピペ紙芝居で受注できているかといったら、そうでもない、ということだ。たまにスマッシュヒットを放つレーンがあり、そのレーンの模造レーンが複数つくられることもあるが、基本的にはクライアントの側に合わせて組み立てていないから、相手の望むものにならずに失注することが多い。


世の中に多くある食品工場などのレーンに立つ人を批判するものではない。同じものを一定の品質で提供し続けるための工場は重要であるし、それが生活を支えている。

ただ、コンサル会社は「万人に同じものを届ける」ことが仕事なのだっけ?
自分は工場に入ったんだっけ?
と考えることが増えた。


もちろんコンサル会社が全てこの通りではないし、自分がみえている世界だけの話ではある、という自己弁護もおいておくとしよう。

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