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不足感を埋める責任感【電子書籍「反対側へのダイアリー」制作日誌】

ふれるま たみ子初めてのエッセイ「反対側へのダイアリー:わたしが見つけた、もうひとつの世界」についての制作背景や想いなどを書き綴っています。

第2章 心に抱えていたもの(2017年10月 前半)
■15 正社員のダブルワークが許されても【回想】同年9月22日

 悪い時には全てが離れていくんだろう。家庭の不和に続き、今度は会社との関係が悪化していった。

 私が勤めていたのは社員8人ほどの小さな映像制作会社で、肩書きはプロデューサーだったけれど営業から事務、総務、労務、経理まで一任されていた。ひと言で言えばデザイナーたちのお世話係のような存在だった。だからこそビジネスの生産性を高めるため、一年間、起業とのダブルワークをしてきた。

 ただデザインや映像などは、一案件に数日から数ヵ月間も時間を要する仕事で、ひとりじゃ到底受注の幅を広げられない。それまで企業間の取引しか可能性がなかった会社の新規マーケット開拓を私がする代わりに、労働力の提供を受ける約束で雇用が成立していた。社長との信頼関係も良好のはずだったのだけど。

 歯車がズレ始めたのは、私がインセンティブの計算を誤ったミスが原因だった。時短勤務といえど、月の満額の給与をもらい、取ってきた仕事のインセンティブを+アルファで受けているわけだ。だんだんと新規マーケットのビジネスにかける工数が増えていくのに使える時間は変わらない。会社の仕事にちらほらとミスが出始め、よりによって一番ナイーブなインセンティブの計算を誤ったのは、確かに意識不足もあったろうが、運が悪かった。

 キャパがいっぱいだ。ヘトヘトに疲れていたんだ。
 (本文より)

制作背景:不足感を埋める責任感

心にある不足感はあきらかに自分のプライベートな事に対するものなのに、それを埋めようと、なぜか意識は外に向いてしまうのですよね。私にとって会社という場所は、唯一の社会との繋がりだったので、心にぽっかりと空いた穴を仲間や取引先からの信頼で埋めることが、私の体を限界まで頑張らせる支えとなっていきました。

スタッフのバッググラウンドをサポートするのは、スタッフの為でなく、私がただそれで役に立っている安心感や存在意義が欲しかったから。会社の新規マーケット開拓とかこつけてSNS起業を始めたのも、副業を認めて欲しさのうまい言い訳でしかありませんでした。これまでの行動を振り返ると、自分の意志だけで何かを始めるという事はなかったように思います。自分の本当の願いになんとなく気付いてはいるものの、表向きは誰からも求められていない幻想の使命感に陶酔しているような状態でした。


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