見出し画像

2023年、読んだ本ランキング


無職と有職の時代

2023年、あけましておめでとうございます。と言ってたころ私は無職であった。SE時代にメンタルをやられ、1年以上無職を経験し、カウンセリングに通い万全にして4月から新天地として高校教師になったのである。
こういう経緯の為ここ2,3年はろくに数学もできず、いや出来ても頭を素通りする感じがあり、今年(特に下半期)は久しぶりに数学にどっぷり漬かることが出来たと思う。しかもSE時代は常に技術系の勉強が足かせになっており(※末期は7冊同時読みし、週に3つ勉強会、2回は発表者とかあった)、数学は殆ど出来なかったのであるが、今年からは専門が数学(と情報)なのであるから沢山出来た!

ランキングを作るにあたって

ランキングは今年出版された本では無く今年読んだ本である。断っておくと今年読んだ全ての本が名著レベルであるように思う。

数学の本は色んな意味で読破する方が少ないので、理解レベルはまちまちである。大体は全部読めた本や理解した本を上位に持ってくるので、本の名著具合とランキング順位は一切無関係である。
他にも自分が好んでる分野はひいきするし、簡単すぎてもダメ、難しすぎてもダメ、理由もなく2週間しか読んでおらずその後積読化したのを下に位置付けるなどやりたい放題なので、本当に私の自己満ランキングであり一切の参考にならない。
さて、いこう!(は?)

1位:球面調和函数と群の表現

読了レベル:テンソルが分からず、残り10ページ読んでない。
数学における表現論・非可換調和解析という分野の本であり、難解だと思う。モチベーションとしてはランキング2位の「群上の調和解析」を読み、調和解析の奥深さに少し感動したので非可換調和解析をやろうとした次第である。
消化しきれていないがひとつのオチとしては$${\mathbb{R}^n}$$上の関数を動径方向と球面上のものに分離し、$${L^2(\mathbb{R}^n)}$$の既約分解を与える事である。
正直それをして何が嬉しいのかまだ分かっていないが、そんな私でも久しぶりに純粋数学の美しさや奥深さの一端を感じる事が出来た本である。
来年あたり記事に出来れば良いなあと思う。

2位:群上の調和解析

読了レベル:読了。
詳しくは読書感想文を書いているので下の記事を見てください。

元々フーリエ解析・ウェーブレット解析が好きで抽象調和解析に興味があったものの難しそうですっかり諦めていたのだが、謎にやる気が起こり読んだ本である。因みに可換調和解析はフーリエ解析とほぼ同義らしく(※不正確情報)、これは可換群上の調和解析なのでフーリエ解析みたいなもんである。
個人的に意味のない抽象化が嫌いなので(※私は純粋数学出身だが、応用のある数学にしか興味がない。なので特に代数や幾何の人とは喧嘩になるかも・・・w)、応用系の疑問を解決するレベルの丁度良い塩梅の抽象化をしてくれているのでとても楽しめた。
私の裏芸は経済学なので(本当か?)、同先生の「経済現象の調和解析」も近い内に読んでみたい。

3位:対話・確率過程入門

読了レベル:読了。
詳しくは読書感想文を書いているので下の記事を見てください。

難解な記事を書いてしまったなと思った割に、スキを結構もらえてて驚いたのだが、記事内で良いと思う所を書いたのでここでは割愛する。
確率過程はかなり難しいような気がするが、これを分かる・分からないでは統計学の応用の幅が格段に違うように思うので神様のような本である。対話と書いているように先生と学生の美子と一夫の対話で進んでいくのであるが、この2人の学生があまりにも鋭すぎてつい笑ってしまう。どちらかと言うと一夫は劣等生キャラだと思うが、それでも超一流数学者になれそうな鋭さである。

4位:現代数理統計学

読了レベル:あんまり読んでない。
「現代数理統計学の基礎」とどっちを上にしようか迷ったが、こっちを上にした。理由としては書き味が私好みで、饒舌だが本質を手短に、しかし痺れるようについてくるからである。
殆ど読んでいないのは統計学も先に進むのに目がいってしまい、内容的に大体分かりそうだなと思ってしまったからである。しかし、本当に面白い本だと思うので時間があったら読みたいまごうこと無き名著。

5位:現代数理統計学の基礎

読了レベル:読了。
詳しくは読書感想文を書いているので下の記事を見てください。

今年初読みの本。4位の「現代数理統計学」と非常に迷った。「現代数理統計学」と違うのはあまり饒舌にならずにあっさり定義や定理を書いている所であろうか。特に面白かったのは10章の「リスク最適性の理論」であり、ベイズ統計学の数学的最適性などはいつか記事に起こそうと思っている。
Amazonレビューによると統計検定1級の対策本ともなっているらしいのでそういう意味でもおすすめかも。

6位:カーネル法によるパターン解析

読了レベル:1/3。
詳しくは読書感想文を書いているので下の記事を見てください。

機械学習の本である。
第1部・・・基本概念
第2部・・・パターン解析のアルゴリズム
第3部・・・カーネルの構築
の中の1部だけ読んだ。カーネル法の本は何冊か読んでいるが、初めて理解できた気がする。書き味に独特なリズムがあり難解なので読めない人は読めないと思う。特に数学(関数解析の基礎程度)は勿論だが幾ばくかのエンジニア的直感が必要なように思う。2部からアルゴリズムになるので私も読めるかどうか不明であるが、近い内に読みたい。そして記事を書く。

7位:極値統計学

読了レベル:1/2。
もし読了ならこの本が3位か4位にくるだろう。非常に満足感が高い本。統計学は計算がとってもハードでその例に漏れずこれもだいぶハードであるが、論証が丁寧なので何とかついていける。
極値統計学とは順序統計量における最大統計量の主に漸近分布関する理論である。平均統計量には漸近分布理論の帰結として中心極限定理があるが、それに準ずる定理がやや複雑化する。
面白いのは特に自然現象に対しての応用が近くにあり、難しい理論が活用されているのを感じ実学的だと思えるところである。
いつか記事を書こうと思うがpending中。

8位:スプライン関数入門

読了レベル:読了。
詳しくは読書感想文を書いているので下の記事を見てください。

スキが一件も入らずに悲しい。。。
スプライン関数は元々非線形回帰の始まり的な意味合いを持っていたり(※不正確)、エンジニアの方も曲線を描くときにライブラリで親しみがあったりとマイナーなような近いようなという感じのものなのだが、結局その適切性(つまりある種の一意性)を言わないといけないので、その理論本である。
使っているのは多分微積だけのように思うので、初等的で応用的で凄く面白いと思うのだが・・・。しかし初等的だからと言って簡単な訳ではないというのを記事へのスキの入らなさを見て思いましたとさ。

9位:数理流体力学への招待

読了レベル:1/3。
詳しくは読書感想文を書いているので下の記事を見てください。

そもそも私はNavier-Stokesの数学サイドからの解析が専門だったので、ここに関しては普通の人よりは詳しい。そしてこの本は最新の研究レベルの事まで載っているようである。
書いているのは業界では有名な先生だし、もし今も微分方程式に興味があればもっと高い順位の本なのは間違いないが、今は応用として純粋に微分方程式への還元だけ、というのに興味が無くなってしまった。しかしそれでも「ミレニアム問題」という響きは甘美であり、そそられるものがあり、2次元の適切性の解決の仕方は読んでて面白いと思った。
でももうやらないかな・・・。

10位:画像処理の統計モデリング

読了レベル:1/3。
こんなに計算が激しいのは初めてかもしれない。このハードさは間違いなく専門としている人しか検算していないと確信できるレベルであった。作為的に白色ノイズが加えられた画像に対し、ガウシアングラフィカルモデルという数理モデルを仮定し、EMアルゴリズムを通してノイズ除去を行うという話なのだが、まあ苦しい。まずガウシアングラフィカルモデル仮定の直感的妥当性が分からないと何をしているのか分からないと思うし、分かったとしてもアルゴリズムがあまりにやばすぎて組める気がしない。
読んでいる途中はいつか記事に起こしたいと思っていたが、数理モデルの定義だけで1ページ使っていたりするので書くのがあまりに面倒くさいので無理かもしれない。。。

11位:ウェーブレットと確率過程入門

読了レベル:1/3。
タイトルからして難しいこれは相当に専門レベルの高い本である。しかもこれも計算が相当にハードなのでテキトーにななめ読みしかしていないのだが、今はpending状態である。
ノールックでインパルス応答函数とかパワースペクトルとかいう単語が出てくるのがきつい。数学的な新井「ウェーブレット」はだいぶ前に読了しているのだが、この分野は応用も混ざり難易度がカオスと化しているので「一旦応用系のフーリエ解析を読まないと駄目だな。」と思っている。日野「スペクトル解析」を読んだ後に出直すつもりであるが、まだ手を付けていない。

12位:力学の考え方

読了レベル:読了。
本来は熱力学のエントロピー的直感が欲しいから物理をやり直そうと思い、高校以来の物理として力学から取り組んだ。ポテンシャルの考え方や、ラプラシアンの直感的意味合い、解析力学のモチベーションが分かったり有益だったように思う。
有益さにしてはランキングを低くつけてしまったが、内容が初等的過ぎてちょっと退屈さがあったからである。(すみません)。それはこの本の話ではなく、専門だった解析学は結構奥まで進んでいるので、力学のはじめの一歩的な内容がどうも・・・という分野論的な話である。これは初等的な代数学や幾何学においても今更あまりやる気が起こらないのと同様の感覚である。
しかし、得られた直感は多くあるので本当はこういう初等的な事も嫌がらずやらなきゃダメなんだろうなとは感じている。そしてプロアマ問わず数学者は物理とか応用系に対してこういうジレンマ抱えてそうだなと思った。

13位:意思決定理論

読了レベル:あまり読んでいない。
詳しくは読書感想文を書いているので下の記事を見てください。

公理的意思決定理論(経済学)である。難易度的に経済学部の殆どの人は読めないんじゃないかと思っている。純粋数学科でも難物の測度論を使いこなすレベルに出来てないといけない。
順位が低いのは私は俗物なのでサクッと応用的に面白いものを取得したかったのだが、数学的にまあまあ(応用的には相当)ハードな事をやっている割には、得る結論が「危険回避選好を持つ人の効用関数はより凹」というような当たり前の事だったので理論方面に多趣味な人間には「ちょっとこの理論を突き詰められないな」と感じてしまったからである。あと気のせいだと思うが理論体系に若干の抜けがあるように感じてしまったのが憂鬱だったというのもある。
数学的公理論な経済学というニッチ(?)な戦略を取りたい人は、武器になりそうだし良いのではないかと思う。

ありがとう2023年

2023年は誠にお世話になりました。一番は可愛い生徒達に出会えたことです(※圧倒的1番!!!)が、noteの皆さんに出会えて数学熱が再び高まったことも充実してて良かったです。
まとめると来年は
①純粋数学的な事は調和解析と表現論と代数解析をやりたい。
②数理統計学と機械学習、その応用方面にも力を入れる。
としてやっていきたいです。

皆さんへ。
数学も良いですが、メンタルに気を付けて、体だけはお大事に。
そしていっぱいのハートをあげますね♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?