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【読書】矢野惣一「怒っていい⁉」から見えた娘の怒り。

#20231221-323

2023年12月21日(木)
 「怒る」という感情について、毎日毎日考えている。

 里子のノコ(娘小4)が我が家に委託されて4年。
 朝から晩までノコは怒っているわけではない。何がおかしいのか、声を上げて笑い転げているときもある。それでも、些細なことで怒りに転じる
 ノコの根っこには、周囲に対する「怒り」が存在する
 委託直後、先輩里母さんにいわれた。

ノコちゃんは、あなたたち夫婦に対して怒っているんじゃない。
実親さんに対しての怒りを、今、出せているの。
あなたたちの後ろにいる実親さんにぶつけているのだから、自信をなくさないで。

先輩里母さんの言葉

 乳児院、児童養護施設を経て、我が家に来たノコは、自分の生い立ちを年齢なりに理解している。実親さんが自分を施設に預け、そして里親に委託した経緯は伝えてある。
 事情を子どもなりに受けとめても、言葉にできない不満はあるのだろう。
 その怒りの感情が少しの刺激で、関連がなさそうな場面でも噴き出す。
 一緒に暮らした記憶はないだろうに、実親への愛着がそこにある。

 ノコと暮らすまで、私自身のなかに「怒り」という感情は希薄だった。
 これは「怒り」はよくない感情であると親から教えられていたこともあるが、無理にふたをしていたわけでもない。
 幸いなことに、人に軽視されたり、理不尽なふるまいをされたりしたことが少なかったのだと思う。だから、自分を守るために戦う「怒り」を登場させる必要がなかった。恵まれた子ども時代だともいえるが、親の仕事の転勤に伴う転校があったため、土地によっては「よそ者」というやわらかな線が引かれ、疎外感はあった。ただそれを「仲間外れ」と感じず、「途中から来たのだから当然」と受け入れていた。
 群れるより、1人でいることも好む性格だったこともある。

 本書には「怒りが生まれる3つの原因」が挙げられている。

  1. 相手のしたことが自分の『期待』に反する

  2. 相手のしたことが自分の『価値観』に反する

  3. 怒りで相手を『コントロール』しようとする

 ノコが周囲に対する怒りは、これらに当てはまる。

  1. 「私にこう接してほしい」という期待に反する

  2. 「私は正しい」というノコの価値観に反する

  3. 「怒れば、思い通りになるかもしれない」と相手をコントロールしたい

 本書は、これらの怒りについての対処法として次を挙げている。
 →期待には「相手に対する期待値を下げる
 →価値観には「あなたと私は違う
 →コントロールには弱味を見せた途端、反撃されるため「もろいことを知る

 ただこれは自分の力で視野を広く持てる人でなければ厳しい。
 自分でできないことがまだまだ多い子どもは、どうしても周りへの期待は高くなる。「周りに期待するな」といわれても頼らなければ叶わない。
 世界が狭い子どもに「世の中にはいろんな人がいるし、あなたが正しいとは限らない」といっても、体験を通して世界の広さを実感できなければ理解できない。
 「怒りで相手を動かすとやり返されることもある」といっても、怒って願いが叶ったことが一度でもあれば、学習してしまう。

怒っている人は、相手に人生の主導権を取られまいと、もがいているのだということが分かります。

矢野惣一「怒っていい⁉ 〈誰にも嫌われない〉〈相手を傷つけない〉怒り方」(ヒカルランド)p.125

 この一文が私には重い。
 怒りが近いノコは、ほんの幼い頃から人生の主導権をさまざまな人に取られたといえる。
 実親のもとから乳児院へ、そこから児童養護施設、またそこから里親へ。ノコに主導権はない。今も必死にノコは「人生の主導権」を握ろうと戦っているのかもしれない。
 ノコが守っているのは、「人生の主導権」であり、奪おうとする者と戦っている。

 人生の主導権は確かに守らねばならないものだ。
 だが、ノコは「奪おうとしていない者」にも奪われまいと攻撃しているように見える。
 「奪う者」と「奪おうとしていない者」の基準が曖昧で、少しでも自分を「嫌な気持ち」にさせた人は「奪う可能性がある者」と認定している。
 本書には「怒り」を抑えるのではなく、どう表出し、どう利用するか綴られている。
 ノコの場合は、まず「この人は奪おうとしていない」と気付かせることが第一かもしれない。
 ここには、あなたの人生の主導権を奪おうとする者はいない
 ノコに安心を。
 それは今日やって、明日得られるものではない。
 毎日の積み重ねでしかない。
 昨日は安全だった。
 今日も安全だった。
 明日も安全「だろう」……と安心して眠れるように。

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