小学5年生の娘を洗いながら。
#20240416-385
2024年4月16日(火)
ノコ(娘小5)の習い事が進級により、1つ上のクラスになった。
今日は新しいクラスでのレッスン初日。
週2日が3日に増え、平日にもレッスンが入る。小学校の宿題も多いため、平日の負荷を重く、正直ノコが機嫌よく日々をまわせるか怪しい。
それでも、1つ上のクラスに行きたいという。
忙しくなるといくら説明しても、まだノコにはわからない。やってみて、楽しめていなければ、そのときに辞めるという選択肢もあることを伝えるしかない。
ノコよりは先の見通しがきく大人とはいえ、外れることもある。
やらずに、やりたい気持ちを摘むのはよくない。
たとえ、年度のはじめで施設利用料だのいつもより高額な月謝を払った途端、辞めることになったとしても、うん、目をつぶるしかない。
4年生のあいだは、できるだけ手助けせずに1人で入浴をさせていた。
一緒に入浴すると、甘えたくなるのかノコは自分で洗おうとしない。
「ママママ、ママママ、洗ってぇ~」
舌ったらずの声でせがんでくる。
いつまでも洗ってあげられるわけではないので、リラックスするお風呂タイムくらい甘えさせたいと思うが、なんせノコは大音量で歌う。狭い浴室に響き渡るノコの歌声に私の耳が悲鳴をあげ、気持ちがささくれてしまう。
歌だけではない。ノコは歌声に合わせ手叩き、足を踏み鳴らす。
「ママは大きな音が苦手だから、ママと入るときは静かにしてほしいな」
何度伝えても、静寂は3秒ももたない。
「ノコさん、さっきもいったけどね」
その繰り返しに私は疲弊してしまう。
とはいっても、夜遅くなった場合は、日々の確認も兼ねて洗うこともある。私は下着姿で、女三助よろしく、ノコを上から下、前に後ろと洗えていない部分がないかと確かめながら手を動かす。
たまに、たまにゆえの「特別」だった。
せっかく根付いた1人入浴だが、5年生に進級した途端、洗ってあげる回数が増えた。
とにかく少しでも早く寝ることが最優先になったからだ。
「新しいクラスはどうだった?」
今までのクラスは4年生が最高学年だったが、今日からのクラスは5年生と6年生のみだ。
世話好きのノコは年下の子どもたちに声を掛け、あれやこれやと手助けをする。自分でやりたい性格の子どもでなければ、わりと相性はよい。
同学年相手だとそれがうまくいかない。
情緒面に幼さを残すノコは、おませな同学年女子とのやりとりでつまずくことが増える。目配せや遠まわしなものいいに気付かず、「なんで?」「どうして?」と突撃してしまう。言葉を濁すことやうやむやにすることができないので、しつこく追ってしまう。
「ほら、ちゃんと上を向かないと顔にお湯がかかるよ」
シャンプーの泡を洗い流しながら、目をつぶったノコの顔を見下ろす。
「うーん、今日は誰とも喋らなかった」
同学年は、同じクラスだった面々だ。
「レッスンが大変で喋る時間もなかった?」
ノコの眉根がわずかに寄る。目を閉じたノコは薄闇にいるせいか、とても無防備に見える。
「ほかの子たちは喋ってた。でも、私は喋る人、いないから」
髪の生え際にやさしく湯をあてる。
「そっか」
むーくん(夫)はノコの態度もよくないという。確かに先に相手がノコを拒んだかもしれないが、ノコも積極的に関わろうとしないから仲が改善されないと見ている。
ただ私としては、壁のある相手に近寄るのはかなり勇気がいると思う。声を掛けても返してもらえない可能性が高いのなら、気軽になれない。
「いいかい、ノコさん、楽しいのが大切だよ。レッスンが大事で、ノコさんが楽しいのならいいけれど、〇〇ちゃんたちとうまくいかないことがしんどくなったら、続けなくていいからね。習いたいのなら、別の場所もあるよ」
「レッスンは好き」
ノコが目を閉じたままいう。
もしノコがこの習い事をやめたいといったら、私はしがみつかないようにしよう。
今までの時間がもったいないと思わないようにしよう。
積み重ねてきたものをやめるとき。
そこにかけた時間と労力の重さに目がいってしまうけど、まだ何もない軽い未来のほうへ気持ちを向けよう。
軽さは、きっと明るい。
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