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銀河鉄道の父~映画感想文

タイに行く機内で暇だったので、映画を見た。
ちょうど、1年前の岩手旅行の時に花巻でポスターを見かけた「銀河鉄道の父」が入っていたからだ。

まさか、こんなに泣くか?と自分でも思うくらい嗚咽しながら大号泣したので、感想文を残すことにする。
昨年末から映画は翔んで埼玉、ウォンカのチョコレート工場(ひたすら、ティモシーシャラメがかっこいい)、と見ているわけだが、どれも当たりばかりだ。

さて、銀河鉄道の父は題名の通り、宮沢賢治の父である政次郎の目線から描いた作品だ。
最初は主演が菅田将暉なので、これは若手俳優を使っておけばいいと思った浅い映画か?と邪な思いがあったが、実際は菅田将暉をはじめ役所広司の演技力が凄まじく、感動を誘った。

大前提、私は宮沢賢治の一生や人となりを記念館や書物で知っているので、映画の中のエピソードのネタバレが分かってしまう箇所が多々あり、点と点が繋がったような、なんとなく受験勉強の復習をしているようなそんな気持ちになった。
私の父方のルーツは東北なので、映画の中の素朴で純朴な東北弁が妙に懐かしく、ずっと祖母や祖母の家を思い出しながら見ていた。

私が宮沢賢治を好きなのは、彼自身が存命している時は有名でなく、後世で有名になるように、私利私欲ではなく、周囲のために働いて、生き続けたところである。さながら「雨にも負けず」のような人柄だ。
彼自身がとても裕福な家庭に生まれ育ったので、「お坊ちゃんの戯言、おままごとだ」と言われれば、それまでなのだけど、お坊ちゃまなのに不器用で憎めないところが魅力的だ。
そして、「雨にも負けず」にもあるように、賢治の作品や生き方を見ていると、「何者にかならないといけないんだ」という強迫観念を取り除き、日常にいる普通の幸せが大きな幸せであり、比べなくていいんだ。と安心させてくれる。
「成功した人生」を歩まなければとつい、思ってしまう自分を慰めてくれるのだ。

特に、最後政次郎が「雨にも負けず」の文章を息絶える賢治に語り掛けるシーンで涙が止まらなかった。
長男であり、質屋を継いで欲しい気持ちがあった政次郎と自分の赴くままに生きる賢治の間にはしばしば確執も生まれたが、最後は政次郎自身が賢治を認め、誇りに思っているのだ。
特に、私自身の父親もけんじという名前であり、父の父(私から見た祖父)は東北弁を話すことから、この映画を見ることで、亡くなった祖父を思い出すことができると思い、父の映画を紹介した。
※実は既に原作を買っていたそうだが

ラストは銀河鉄道の夜になぞらえて、亡くなった賢治と妹のトシはカンパネルラとジョバンニさながら、永遠に続く旅に行くのだが、そこに相席する形で政次郎が登場するのが、宮沢賢治の作品に対するリスペクトと、この映画自体をファンタジーに仕上げる要素な気がした。
邦画は好きではないので、あまり見ないが、久しぶりに素敵な邦画だと思った。
ちなみに私が邦画の中で好きなのは、7つの会議とこの映画になる。
※余談だが、7つの会議は企業で働くとは何かを考えるきっかけになるので、ぜひ全社会人に見て欲しい

ちょうど、山口に移住した幼馴染から「今度山口で宮沢賢治の弟の孫の講演会があるから来ないか?」と誘ってもらった。
私が以前、宮沢賢治が好きだと話したことを覚えていてくれたらしい。
もちろん行くしかない。宮沢賢治の弟さんのお孫さんは精力的に賢治の作品を普及する活動や講演会をされている。
山口にも行きたいし、幼馴染にも会いたいし、ちょうどいい機会だ。
これまた余談になるが、離れていても、日々連絡を取っていなくても、こうやって私の何気なく話した内容を覚えていてくれているような友人がいて、幸せだ。幼馴染には大阪のお土産を買っていこう。

おととしの年末、何気なく行った岩手でドンピシャに自分の価値観や大事にしていることと合致して、拠り所になるような賢治と出会えたことは結構、人生においても素敵なことというか、大きな影響を与えてくれたと思っている。
宮沢賢治の作品は短く読み易いものが多いが、それでも読みたくない文章嫌いのあなたへ。そうではないただの映画好きへ。普通に菅田将暉をみたいあなたへ。
この作品はとてもおススメですので、ティッシュを用意して号泣する準備をして見てください。

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