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【サマータイムレンダ】彼女の最期の願いのために時ヲクリ返セ!

バタフライエフェクトが怖い。タイムリープものって当たり外れが大きいですよね。過去を変えることに対する整合性の取り方とか、デジャブなプロットとか。最初は「どうなるんだろう」で期待感が膨らんでいくんだけど、話が進むにつれて、期待のバブルは弾けてしまう。

さて、今回紹介する作品は『サマータイムレンダ』です。アニメ放送中のマンガで、わたしもアニメを見てからマンガを読むに至りました。



1.誰にオススメ?

・タイムリープものが好き
・心理サスペンスが好き
・Key作品が好き
・考察の動画をよく見る
・サディスティックな彼女が欲しい
・ゾンビものをよく見る

◆相性がいい本
・ホーンテッド・キャンパス(櫛木理宇)
・Re:ゼロから始める異世界生活
・楢山節考(深沢七郎)
・まほり(高田大介)

◆相性がいいアニメ
・Vivy-Fluorite Eye's Song-
・ひぐらしのなく頃に
・地獄少女

2.あらすじ

義姉の葬式を終えた夜。育ての親と義妹(澪)が住む和歌山の孤島で事件は起きる。ドッペルゲンガーがオリジナルの自分を殺して、成り変わる。徐々にニセモノに蝕まれていく世界で、果たしてそこにいる義妹はホンモノか、ニセモノか……。ミオ(ニセモノ)を殺し、澪を守ることができるのか。

3.キャッチコピー

 風土病 ✕ サスペンス ✕ タイムリープ
愛する家族を守るために時をクリカエセ!

4.読みどころ

◎主人公が冴えている


 タイムリープもので一番いやなのは、主人公がまどろっこしいことをしたり、不合理な行動をすることですよね。「なんでこうしないんだ」と読者はもどかしく、ストレスを感じることがあるでしょう。しかし、この作品の主人公は竹を割ったような性格と、切り替えがはやい冴えたノウミソをしてます。だから、読者が「こうすればいいんじゃないかな」という行動をしっかりとアクションしてくれる。だからこそ、主人公の行動に納得がいくし、追い詰められたときの緊迫感も増すというものです。

◎「誰一人」信じることができない


 マンガという媒体(メディア)の効果を最大限活かしているのが、この点です。作中の影という存在(=ドッペルゲンガー)は、性格も記憶も見た目も完全に模倣している。だからこそ、我々読者は、その人物がホンモノかニセモノか判断がつかない。それは、主人公に対してもそうです。ある意味、読者はすべてのキャラクターから突き放されている。主人公さえも信じることができない状態で話が進むから、考察がはかどる!!!!! 疑心暗鬼が読者と主人公を蝕んでいて、常にテンスを張り詰めた状態で読むことができるから、興奮が冷めやりません。

◎伏線、たくさん。

 意味深な描写がところどころ散りばめられている。考察厨にはこれほど嬉しいことはありません。
 わたしが一番気になっているところは、妹・澪が、姉・潮のドッペルゲンガーを瞬時に見破ったこと。先述のようにドッペルゲンガーは、記憶も性格も見た目も完全にコピーしている。いくら血の繋がった姉妹でも、姉がニセモノだと一瞬で判断できるだろうか? そう、例えば——自分が姉を確実に殺したと認識していない限り——。少なくとも姉の死に関して彼女は関わっているのではないでしょうか。また彼女=澪のドッペルゲンガーがトリックスターとして動いていることも怪しさを増していると思いませんか?また、澪は主人公に恋心を抱いているようで、かつ潮も主人公に恋を抱いている。このラブ・トライアングルもまた伏線、あるいはミスリードか。ページを捲る手が止まりません。

◎ジレンマを抱える主人公

 主人公の行動にブレーキをかけているのが妹・澪の存在。主人公は義姉・潮に、「澪を守って」と遺志を託されている。だからこそ主人公は彼女を守ることに奔走すればいいのだが、そうは問屋が卸さない。なぜなら、澪さえもドッペルゲンガーである可能性がぬぐえないから。そして澪のドッペルゲンガーは島で起きているこの事件についてなにか知っているらしい。大事な情報を持っている敵ってやっかいですよね。簡単に○せないし、かと言って放っておけない。一番厄介なタイプです。


5.かんたん書評

 読者を飽きさせない工夫が凝らされている。風土病や、アクション、ドッペルゲンガーなど。主人公は仲間を手に入れ、過去の知識を利用し、ニセモノの見分け方を知る。ただあくまで作品の軸はタイムリープ。そのタイムリープ能力は回数制限がある。澪が殺されるタイムリミットはあと数日。時間があるのに時間がない矛盾が読者を焦らせる。静かな孤島のおだやかなサマータイム(青春)と、それを腐食するコールタールの懐かしくて不気味な夏をご賞味あれ。



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