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アラビア語リテラシー「皆無」の私が、中東でどのように言語を学んだか

中東ヨルダンにある素敵な本屋に一目惚れし、「ここで働かせてください!」と飛び込んで本屋で暮らしていたときの話。(詳しくはこちら

●アラビア語リテラシー「ゼロ」で出陣!

風の噂によると、ヨルダンの場所はおろか言語も文化も何も知らないまま、「とりあえず」で中東の本屋で暮らし始めたジャパニーズ・ガールがいるらしい。

私である。


アラビア語圏で生きていく気満々のようだが、はたして大丈夫なのだろうか。

結果としては全然大丈夫だった。なぜなら当店での暮らしはありがたいことに、英語しか話せなくても難なく生きていける環境だったのだ。

それでも毎日、スタッフやお客さんがアラビア語を話すこの環境に身を置いていたら、1ヶ月で13のアラビア語単語を習得した。

当店で使われる言語について
・我々スタッフ=みんな国籍もバラバラで、共通言語は英語のみ
・店長と副店長=スタッフや観光客とは英語、地元客とはアラビア語
・地元のお客さん=普段はアラビア語だが英語を話せる人も多い

習得といっても大層なことではない。ヨルダン人同士のアラビア語会話をぼんやり聞いてると、耳でキャッチできる単語が時々ある。それをその場で「今言ったそれ、どういう意味?」と聞くだけだ。

「耳でキャッチできる言葉=自分が認識できる音=自分の口で出せる音」とどこかで聞いたことがあるが、その通りだと思う。

●私の「お気に入り」のアラビア語

私のお気に入りアラビア語は、「しゅうぇい しゅうぇい」。毎回みんな必ず「シュウェイシュウェイ」と素早く繰り返すから耳に残ったのだ。

その意味を聞くと「ちょっとだけ」という意味らしい。ふむ、何だかシュワシュワした音のイメージにもあっているではないか。そのようにして私は「シュウェイシュウェイ」を習得した。

しばらくしてある時、店長が「しゅうぇいしゅうぇい〜」と地元のお客さんに言っていたのだが、どうもこの状況で「ちょっとだけ」と言うのは奇妙だな…と側から聞いていて思った。

後から店長に「もしかして『シュウェイシュウェイ』には『ちょっと』以外の意味もある?」と聞いてみると「まあそうだね、『ゆっくりゆっくり』という意味もあるかな」と教えてくれた。

か、かわいい!アラビア語では「ちょっとだけ」と「ゆっくり」を、同じ語が担っているなんて!!その事実がかわいすぎる。それを知って、「しゅうぇいしゅうぇい」のことがさらに大好きになった。

●通りかかった子供に声をかけられる

当店の広場。オレンジの木の葉っぱが左上に見える

当店は入口の門をくぐるとまず「広場」があり、シンボルツリーであるオレンジの木が植えられている。しかしこの木に実るオレンジは食べられないほど苦く、「あくまで美観のため」に植えられているという。

美観のためっていいよなあ〜、美観って大事だもんな。写真では見えないがこのオレンジは本当に、本屋の美しさに一役買っているのだった。

このオレンジは、2月ごろになると熟れてボタボタと地面に落ちるため、その前に木を揺すって一気に収穫するのだそうだ。「どうぶつの森」実写版である。

当店の門。本屋にようこそ

ある昼前ごろ。店を通りかかった地元の子たちが門から店を覗き、私たちに向かってアラビア語で何か叫び出した。

「え?何?何が起きてるの!?」と隣にいたアリス(フランス人のバイトリーダー)を咄嗟に見ると、アリスは子供たちに向かって「レ〜!レ〜!」と叫んで何かをペラペラと返し、子どもたちは諦めたように去っていった。

「今何が起こったの?」と聞くと「本屋の前を通り過ぎる子たちが、ときどきオレンジを見て『採ってもいいか』と聞いてくるんだよ。それで『苦いから美味しくないよ〜!』と答えるの。何度も聞かれすぎて、このアラビア語だけ喋れるようになっちゃった笑」

なんだと。「店のオレンジを採っていいか…って普通聞くか?」。そう思ったが、さすがヨルダン。

「そんなの普通聞かんだろ笑」という私が、圧倒的少数派なのである。


まったく。聞くだけタダなのだから、聞かない理由なんてそう言えば無いのだった。というか「苦いから美味しくないよ」を喋れるようになったアリスもすごいな。

・・などと色々考えながらも、私は新たに「アラビア語で『No』は『レ』」だと学んだのだった。

●アラビア語の数字に撃沈

私はヨルダンでよく、買い物中に値札を見て困惑することがあった。

例えば「17」かと思えば実際は「16」を意味していた…など、「数字の一部はあってるのに、一部が違う」ことが時々起こったのだ。

ある時、「せっかくヨルダンに来たし」と言ってアラビア語を勉強中のラウラ(イタリア人スタッフ)と会話していたら偶然、その値札の謎が解けた。

この謎の背景は、日本には漢数字「一二三四五」があるように、アラビア語には「アラビア語で表す数字」があることだった。

上段の「見慣れた数字」に対応する、下段の「アラビア語数字」

存在すら知らなかった「アラビア語の数字」。
「6を意味するのに7に見える数字」や「0みたいなのに5を表す数字」がある一方で「1や9は見慣れた数字にそっくり」だったりと、紛らわしいにもほどがある。

海外での数字は「12345」の書き方しか見たことがなかったので、全てがまさかのことであった。この複合的な魔力によって、私はヨルダンで見かける数字に翻弄されていたようだ。

「困っちゃうでしょう…?」という顔で、ラウラ先生は続けた。「ねえ、しかも『4』を見て?…3を反転させたみたいでしょ…」

は、はわわわあ〜


私はついに頭がクラクラし、アラブの力によって寝込んでしまったのだった。


この「数字事件」があってから一時期、私はこの「数字一覧」をスマホの待ち受け画像にすることで、アラブの数字を暗記しようとした。高校生の時によく、覚えられない英単語や世界史の語句を待ち受け画像にしていたのが懐かしい。

まあ10個ぐらいならしゅうぇいしゅうぇい(ちょっとだけ)だから、しゅうぇいしゅうぇい(ゆっくりゆっくり)やれば、覚えられるはずだ。


そうして1ヶ月後。

今回の挑戦は「しゅうぇいしゅうぇい」にも関わらずひたすら苦戦し、ついにはスマホを見るたびに「うわ、まだ全然覚えてないわ」とじんわり落ち込むようにまでなってしまった。

そうしてついに私は「レ〜!レ〜!」と音を上げ、たった10個の記号相手に降参してしまったのであった。


アラビア語、おそるべし!

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