「ヨルダンの本屋に住んでみた」のフウ

「ここで働かせてください!」で中東の本屋に住んでみた。そこには店に惹かれて様々な国から…

「ヨルダンの本屋に住んでみた」のフウ

「ここで働かせてください!」で中東の本屋に住んでみた。そこには店に惹かれて様々な国から飛び込んできたスタッフたちが既に住んでいて..。全42話のアラブ書店日記。多言語の書籍化を目指しています。 創作大賞2023エッセイ部門入選。🇯🇴

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第1話 「ここで働かせてください!」でアラブの本屋に住んでみた(創作大賞2023入選)

●「ここで働かせてください!」実写版誰もが思ったことのあるように、私もふと思った。「なんかこう、すごくワクワクすることがしたい…」。例えば、「全く知らない異世界で『ここで働かせてください!』と頼み込む」ぐらいのことを。 そんなことができたら、なんてアドベンチャラスで、エキサイティングなんだろう。 ということで、ヨルダンである。やりたいなら今からやればいいじゃない、ということで色々調べてみたら…。 イラク・パレスチナ・サウジアラビアという「なかなかな」耳障りのメンバーに囲

    • 中東の人が漫画やアニメで学んだ「日本語」、なんでそれ?8選@ヨルダン生活

      ●店長に「手土産」を渡した日まだあまり知られていないが。どうやら、この本屋に来るにあたって「サプライズ」を仕込んできた日本人がいるらしい。私である。 無事に本屋に着いて、生活を始めたばかりのある日のこと。「実は日本からの手土産があるの」と、ご飯の後にいそいそと準備を始めた。 店長は「え!さては桜の苗だな!?」と目を輝かせている。私はヨルダンに来る前、店長から「桜の苗を持ってきてくれ。庭に植えたいんだ」とリクエストを受けていたのだ。 しかし、海外旅行の荷造りなんてわずかな

      • アラビア語リテラシー「皆無」の私が、中東でどのように言語を学んだか

        ●アラビア語リテラシー「ゼロ」で出陣!風の噂によると、ヨルダンの場所はおろか言語も文化も何も知らないまま、「とりあえず」で中東の本屋で暮らし始めたジャパニーズ・ガールがいるらしい。 私である。 アラビア語圏で生きていく気満々のようだが、はたして大丈夫なのだろうか。 結果としては全然大丈夫だった。なぜなら当店での暮らしはありがたいことに、英語しか話せなくても難なく生きていける環境だったのだ。 それでも毎日、スタッフやお客さんがアラビア語を話すこの環境に身を置いていたら、1

        • 「ルールを守ってしまってごめんなさい」23歳、書店員時代の1番の失敗@ヨルダン

          ●当店の特徴:見た目が美しいことヨルダンにあるこの本屋は、なにせ「見た目」が魅力的である。 人々はみな、店に一歩踏み入れた途端「うっわあ・・」と目を丸くして立ち止まる。そして体をこわばらせながらも、あらゆる情報を得ようと首だけをぐるりと回し、ゴツゴツした壁や高くて開放的な天井を見渡すのだ。 私も初めて店に来た時、全く同じリアクションだったのを覚えている。 ●店長の悩み:見た目が美しいことしかし店長にとって、「美しいゆえの悩み」があった。 それは、「美しすぎること」であ

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          初めて「海外で誕生日」!幸せな時、人はどうすればいいのか@ヨルダンの本屋

          ●初めての「海外で誕生日」総務省が毎年出している統計によれば、この世には2種類の人間がいるらしい。ヨルダンで誕生日を迎えたことのない人間と、ある人間だ。 恐れ多くも私は「ない」側だったのだが、このたび偶然「ある」側に所属する運びとなった。 振り返ってみれば、私は今まで色々な国に遊びに行ったことがある。 しかし「海外で誕生日を迎える」のは、ここ18カ国目のヨルダンが初だった。私は冬生まれなのだが、今までの海外は大学の春休み・夏休みに行くことが多かったのも大きい。 今回の

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          「カップルじゃない」と言い張る、見るからにカップルの常連客@ヨルダンの本屋

          ●常連 “カップル”の彼女この店には、ある常連の学生カップルがいた。 「あ!あのカップル今日も来てるね」とスタッフに話しかけると、「でもあの子たち『カップルじゃない』って言い張るよ笑」と言われた。ええ!見るからにカップルだけど…。 後から知ったが、なんとイスラムの文化では「付き合う」がNGらしい。NGというか、厳密には「デート=付き合う=結婚」らしいのだ。荒く言えば多分、「デートしたってことは結婚するってことですよね、ハイ、一族のみんなを巻き込んで大忙し」みたいな感じだろ

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          「健康で文化的な最低限度のココア」で締めくくる当店の1日@中東ヨルダンでの生活

          「日常」と書いて「ひにちじょう」と読む。当店はそういうタイプの本屋なのである。今日は「いつもの何でもない1日」を時系列に振り返ってみよう。 ●[朝] 打倒!ジブリミュージック実はヨルダン滞在中、極めて症例の少ない疾患にかかってしまった。深刻な顔でヨルダン人の医師に、ジブリノイローゼだと診断された。なにせうちの店長はジブリの大ファンで、本屋の中は常にジブリの音楽がかかっている。本当に「常に」だ。 「なんなのだ!遥々日本を飛び出したのに、なんでまた日本を感じねばならんのだ」。

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          中東のカフェで「看板を作ってくれ」。ただし空気抵抗は無視できるものとする@ヨルダン

          ●突然の「呼び出し」にドキドキある日のこと。住んでいる本屋(ブックカフェ)でまったり過ごしていたら、なんの前触れもなく突然店長に呼ばれた。今までなら、私が呼ばれるときは同期のラウラとセットだったので、私だけが呼ばれるなんてちょっと奇妙だ。 「何!?」と思いながら店長の元に行くと、こんなことを言われた。「うちのカフェで『バナナミルクシェイク』を売り出すから、その看板を作ってくれないか。必要な道具はバイトリーダーのアリスに聞いてくれ」 な、なにい〜!?私が、看板作り〜!?!?

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          「イラスト描けます」の自己PRで中東に来た私、まさかの方向から感謝される

          ●懐かしのセリフ、「イラストもできます」ここヨルダンの本屋に「働かせてください」と長文を送った時、自己PRのひとつにこんなことを書いた。「イラストもできます」。(その話は第1話) しかし本屋に来てみると、自分よりも遥かに絵のセンスがあるスタッフたちがいることが発覚。「ほうほう、自分はこの店ではイラスト担当ではないな」と、なんとなく絵は描かずに過ごしていた。 しかしついに、描かざるを得ない場面に陥ってしまった。それがキッチン編にも書いたように、「フードを作る仕事」をしていた

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          みんなの憧れ「大工」の魔法で、本屋がどんどん素敵になっていく

          ●本屋にある「大工ルーム」この店にはスタッフ専用の「大工ルーム」がある。大量の木材・ペンキや、見るからに危ない大きな機械が置かれているのだ。いつもこの部屋の前を通るとけたたましい音が鳴り響いていた。 素人の私とラウラは知識も経験も無いが、大工の仕事に興味津々。時々この部屋で「木と木をつなぐ」「木を切る」といったちょっとした作業を体験させてもらっていた。ほんの少しでも携わることで「私も作ったんだぞ」と家具に愛着が出る。 私はこの経験を通して「既製品の家具」に初めて感謝を感じ

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          これも「文化の違い」!?海外の台所で起こった「丸つけ作戦」の落とし穴 @中東

          ●キッチンでのドタバタ業務当店は本屋でありながら、カフェでもある。朝から晩まで料理の注文が入り、キッチンは結構忙しい。本屋で働くためにヨルダンに来たのに、なぜか毎日キッチンで働いているのだから困惑することも正直多かった。 一気に6人分なんて注文がドカっと入れば、キッチンでおしゃべりしていた私とラウラは大騒ぎ。「まず何からやればいいわけ!?」と言いながらバタバタ準備していると、店長がキッチンに入ってきて「お前たち!さっさと動くんだ!」と怒られながら、3人であわあわと料理してい

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          焦げたクッキーを削っていたら、同僚が人生について教えてくれた

          ●「空いた時間」にやる仕事とは何屋さんにも「"やること"がないときにやること」というのがあると思う。レストラン店員なら座席の醤油を補充したり、スーパーのレジ担当者ならビニール袋を畳んだり(?)…といったあれだ。私とラウラにとってのそれは、「クッキーを作る」ことだった。 暇な時に大きめのクッキーをたくさん作って、カフェの大きなガラス瓶に補充しておき、日々1個180円ぐらいで売っていた。 このクッキーにはチョコチップだけでなく、中東料理の隠し味に入れるような「スパイスミックス

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          本屋の閉店後は何してる?福利厚生の「コーヒータイム」で最高の夜を過ごす

          この記事では、私たちヨルダン書店のスタッフが勤務を終えてからの、夜の過ごし方について書く。 ●最後のコーヒーで締め本屋の仕事として、本を仕分けたり料理したり…としているうちに、あっという間に19時ごろ。そろそろ今日の仕事は終わりとさせていただこう。仕事を何時に終えるかももちろん、スタッフの裁量に委ねられている。 スタッフは仕事を終えるとご褒美として、本屋のカフェで好きな飲み物を一杯をもらえる。それがもう私たちにとって至福の時間、至福の一杯であった。「こんなに美味しいコーヒ

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          ヨルダンの本屋で働くってどんな感じ?「戦力外通告」をのりこえろ!

          当店で働くスタッフ8人には、本屋、大工、キッチン、バリスタなど色々な業務があった。この記事では「本屋」の仕事を紹介する。 ●とにかく仕分け!本屋業務の仕事私が本屋に到着したばかりの頃。当店の本はカテゴリ別にまとまっておらず、ごちゃ混ぜで床にどさっと置かれていた。これを「仕入れたてホヤホヤ」と言うか「置きたてぐちゃぐちゃ」と呼ぶかは、スタッフに委ねられている。なぜなら当店では個人の裁量が大きいからだ。 店長に「ブックショップガールズ」と呼ばれる私とラウラの任務は、本の仕分け

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          【本屋案内】ヨルダン本屋のルームツアー!店に庭にカフェに、うっとりため息

          「ここで働かせてください!」で住んでみた、ヨルダンの本屋をご紹介。当店は「本屋」だけにあらず、カフェに庭にと複合施設のようでもあった。それぞれの部屋にまつわるエピソードも交えながら、ルームツアーならぬ"ブックショップツアー"にご招待する。 ●ワクワクする門をくぐると、広場(1)世界中の客のワクワクを受け止める「門」 さて、私たちの本屋にようこそ。これが門。丸いロゴの下にはポットがぶら下がっているのが可愛らしい。(クリックで拡大できます) 全体的にゴツゴツした岩と、それに

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          砂漠ですれ違った人に「また後で」で本当にまた会えるのか?

          ●大冒険を経て、やっと本屋に帰る旅行の準備段階から早速大変だったこの大冒険。ペトラ遺跡、ヒッチハイク、砂漠、を通して私たちの旅程は全て終了し、あとは住んでいる本屋に戻るだけだった。 砂漠のツアーを経て、英語のチグハグな砂漠ホテルスタッフたちと、アラビア語の壊滅的な私たちはなんとか意思疎通をし、なんとか砂漠の受付センター(つまり砂漠の出口)まで辿り着いた。 さて、次の課題は、本屋のある街までどうやって帰るかだ。 本当は長距離バスを取る予定だったけれど、さっき砂漠で遊んでい

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