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司法試験予備試験 憲法 平成23年度


問題

 多くの法科大学院は2004年4月に創設されたが、A大学(国立大学法
人)は、2005年4月に法科大学院を創設することとした。A大学法科大学
院の特色は、女性を優遇する入学者選抜制度の採用であった。A大学法科
大学院が女性を優遇する入学者選抜制度を採用する主たる理由は、法科大
学院・新司法試験という新しい法曹養成制度の目的として多様性が挙げら
れているが、法曹人口における女性の占める比率が低い(参考資料参照)
ことである。A大学法学部では、入学生における女子学生の比率は年々増
え続けており、2004年度には女子学生が約40パーセントを占めていた。
A大学法科大学院としては、法学部で学ぶ女子学生の増加という傾向を踏
まえて、法科大学院に進学する女性を多く受け入れることによって、結果
として法曹における女性の増加へ結び付けることができれば、法科大学院
を創設する社会的意義もある、と考えた。
 A大学法科大学院の入学者選抜制度によれば、入学定員200名のうち
180名に関しては性別にかかわらず成績順に合格者が決定されるが、残り
の20名に関しては成績順位181位以下の女性受験生のみを成績順に合格さ
せることになっている(このことは、募集要項で公表している。)。
 男性であるBは、2007年9月に実施されたA大学法科大学院2008年度入
学試験を受験したが、成績順位181位で不合格となった。なお、A大学法
科大学院の2008年度入学試験における受験生の男女比は、2対1であった。

〔設問1〕
 あなたがA大学法科大学院で是非勉強したいというBの相談を受けた弁
護士であった場合、どのような訴訟を提起し、どのような憲法上の主張を
するか、述べなさい(なお、出訴期間について論ずる必要はない。)。

〔設問2〕
 原告側の憲法上の主張とA大学法科大学院側の憲法上の主張との対立点
を明確にした上で、あなた自身の見解を述べなさい。

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関連条文等

憲法
14条1項後段(第3章 国民の権利及び義務):法の下の平等
23条(第3章 国民の権利及び義務):学問の自由
25条2項(第3章 国民の権利及び義務):
    国の社会的使命(社会国家・福祉主義理念)
26条1項(第3章 国民の権利及び義務):教育を受ける権利
76条1項(第6章 司法):司法権・裁判所
裁判所法
3条(第1編 総則):裁判所の権限(法律上の争訟)
行政事件訴訟法
3条2項(第1章 総則):処分の取消しの訴え
3条6項2号(第1章 総則):申請型義務付けの訴え

一言で何の問題か

1 訴訟選択と審査基準
2 積極的差別是正措置

答案の筋

1 提起すべき訴訟としては、法科大学院に入学できる地位の確認を求める実質的当事者訴訟を提起する。
主張としては、「性別」が本人の努力・意思では如何ともしがたい生来の属性であり、それによる区別は通常合理性が認められないため、厳格な審査基準によるべきところ、目的は必要不可欠と言えず、手段も必要最小限度とは言えないため違憲となる。
2 積極的差別是正措置は弱者の地位が確立されるまでの暫定的なものであり、その合憲性は緩やかな基準で審査されるべきであるとの反論が考えられるが、権利の性質上形式的審査基準の定立はなじまないため、区別の目的に合理的な根拠があるか、区別の方法(手段)が目的との関係において実質的な関連性があるかを判断するに、根拠も関連性もないため、かかる判定は14条1項に反して違憲なものであり、裁量の範囲を超え無効となる。

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