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お片付けの仕事のはじまり

去年の10月、いくつかある私の仕事のうち、安定した定期収入であったものが、突然終わることになった。

ちょうど重なるタイミングで大きな出費も発生し、基本的に貯金ゼロで生きている危なっかしい自営業の私は、急遽いつもより10万円ほど多く稼がなくてはいけなくなった。

こんな時のために人は貯金というものをするのだな、と38歳にして噛み締めつつ、もう仕方ないのでfacebookで「お仕事ください」と投稿することにした。

いつも通り、私の営むカフェに来てくださるのも大歓迎。セッションを受けてくださるのも大歓迎。もし他にも、私にこんなこと頼んでみたいな、というのがあったら何でも言ってね。例えばお片付けなんか大好きです。。

そんな風な投稿だったと思う。

書いていいのか分からないから詳細は伏せるけど、こんな仕事がこの世に存在するんだ、と驚くような不思議な依頼もいくつか受けた。面白そうだから全て引き受けることにした。

それより不思議なことに、軽い気持ちで書いたお片付けの依頼が、本業を上回るかもしれない勢いで殺到し始めたのだ。

本業ではないのだし、素人だし、と遠慮がちに始めた割に、やってみると私はいわゆる水を得た魚だった。

お片付けの仕事を頼んでくれる人はもちろん、私の書くお片付けの話を読んで、間接的にやる気が出てしまい片付けまくる人も続出し始めた。

何か濁流のような力が働いているのを感じざるを得なかった。あのタイミングで収入減と出費が重なったのも、そうでもしないと片付けますなんて言い出さない私を、無理やり動かすために仕組まれたことだったんだろうか。

お片付けを仕事にしてみたいとは、ずっとほんのり思っていた。たとえばテレビでいわゆる「汚部屋」や「ゴミ屋敷」を見ると、ワクワクして片付けたくてたまらなくなるのだ。

だけどちょっと考えただけでも分かる。人様の部屋を触ることは、心を直接触るくらいの繊細なことだ。とてもじゃないけど怖くて、私に務まるかどうか分からなくて、

それにあんまりクリエイティブじゃないしとか、私には立派な本業があるんだしとか、あんまりあれこれ手を出すとキリがないとか、別に私じゃなくてもいいよねとか、やらない理由ならいくらだって挙げることができた。

「やらない理由」はどんな人のどんなものも、笑っちゃうぐらいだいたい同じレパートリーで、人のことなら「分かりやすい言い訳だな〜」なんてこっそり思うくせに、自分のこととなると意外と気付かない。

そんな風にしてずっと踏み出さないまま、ほんのり憧れていたお片付けの仕事だけど、実は元々、私自身が「片付けられない人」だったのだ。

(つづく)




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