藤井厚年(編集者・ライター)

日刊SPA!・週刊SPA!編集部に所属するWeb/雑誌編集者・ライター。写真も撮ります…

藤井厚年(編集者・ライター)

日刊SPA!・週刊SPA!編集部に所属するWeb/雑誌編集者・ライター。写真も撮ります。著書が何冊かあります。金融機関、men’s egg編集部(最後の世代)、フリーランスやオウンドメディア制作会社などを経て現職。横浜市民。趣味はランニングとサウナ。僕と友だちになってくだちい

マガジン

  • “頭痛が痛い”編集者・ライター

    “頭痛が痛い”は誤用。しかし「間違っている」とも言い切れない。常識や意味は、時代とともに変化していくものだ。なんだかモヤモヤ……。そもそも価値観が異なる雑誌とWebの世界を行ったり来たりしているうちに、気づけば慢性的な頭痛持ち。口癖は「あったまいてぇ」。これは、そんな編集者・ライターの心の叫びである

  • 元『men's egg』編集部員の記憶

    渋谷系ファッション&カルチャー雑誌として全国的な「ギャル男」「読者モデル」ブームを生み出しながら、2013年に休刊。まさに伝説となった『men's egg』。これは休刊付近の時期、いわば最後の世代として約5年間を過ごした、ひとりの編集部員の記憶である。

最近の記事

現場で活躍中のライターが明かす“取材”のコツ【國友公司さん】

「夢を仕事に」「大好きな文章で生きていく」    ここ数年で“Webライター”が急増した。出版社や編集プロダクションから独立した人だけではなく、一般企業に勤める会社員の副業や、子育て中のママでもOK。特別な資格は不要で未経験から始められる……。  自分が駆け出しの編集者・ライターだった頃は、今みたいにSNSやnoteを探せば情報がどんどん出てくるわけではなく、すべて手探りだった。  どこかで同業者に出会っても仕事に関して具体的に聞く機会はあんまりなく、実務としてはブラッ

    • 「早く辞めたい今の仕事」の超意外な価値

      「早く今の仕事を辞めて、フリーの“ライター”で食えるようになりたい……」  時間や場所にとらわれず、全国各地を取材で飛び回りながら著名人にインタビューする。エッセイストやコラムニストとして自分なりの表現を突き詰め、きちんと書店に並ぶような本を出版する……そんな夢を持ちながらも一般社会であくせく働き、“副業”として文章を書いている人も多いかもしれない。  現実では家族や恋人との暮らしがある。収入の不安も大きいなかで、今の仕事を簡単にはやめられない。一方、SNSを見渡せば、ど

      • 文章から溢れ出る“バイブス”とは何なのか? 書き方でこんなに変わる

         記事を読んでいるうちに、取材先の表情や口調、現場の空気感が浮かんできて、気づくとその世界に引き込まれている。そして、ときには書き手の人柄や思いまで。まるで自分の目の前で語りかけてくるような——。  僕は現在、ネットニュースの編集者として働いているが、時折そんな“バイブス”を感じる文章に出合うことがある。  正直、すごいバイブスだな、と思った。いま話題の小説『みどりいせき』(集英社)である。著者が授賞式のスピーチでラップを披露したというので、どんな作品なのか気になっていた

        • 本を出版、有名メディアで執筆…大きな夢を叶える前の心構えとは?

          「もしかしたら、こんな自分にもできるかなあ……?」  「初心者」や「駆け出し」向けのWebライタースクール・コミュニティの入会募集などをSNSで見かけるたびに、今のブームを実感する。もはや「ライター」の仕事をしている人は珍しくなくなった。これから目指すという人は、一体どんな動機なのだろうか? 「在宅ワークで稼ぎたい」「手に職をつけたい」などの現実的な理由が大きいのかもしれないが、せっかく“文章を書く”仕事をするからには、同時になんらかの「夢」も抱いているはずだ。たとえば、

        現場で活躍中のライターが明かす“取材”のコツ【國友公司さん】

        マガジン

        • “頭痛が痛い”編集者・ライター
          12本
        • 元『men's egg』編集部員の記憶
          3本

        記事

          超コスパの時代、1本の記事にどこまでこだわるべきか?

          「マジでやること多すぎ……」  時間に限りがあるなかで、記事の内容にどこまでこだわるべきか、悩んでいる編集者・ライターは少なくないはずだ。  とくにWebメディアの場合、ギャラがよいわけではない。フリーランスならば、1本の記事に引きずられてしまうと、収入面でキツくなってくる(がんばったはずなのに、むしろ稼げないとか……)。  社員あるいは業務委託スタッフとして編集部で仕事しているならば、収入は安定するものの、定量的な目標(というか数字のノルマ)が課され、会議で吊るしあげ

          超コスパの時代、1本の記事にどこまでこだわるべきか?

          「あなたは何者ですか?」に5秒で答えられるか

          「もしかして、“ケツくん”……!?」  自転車に乗った女性が、道端ですれ違いざまにつぶやいた。  ケツくんとは、僕の学生時代のあだ名である。その呼び方を知っているのは一部の友人に限られる。自分でも忘れていたが、かつて僕はケツくんだったのだ。  君の名は。マスクをしていて最初は気づかなかったが、昔よく遊んでいたA子だった。もうずいぶん会っていなかった。ほんの一瞬に過ぎなかったのに、僕のことなんてよくわかったな。  A子の自転車はいわゆる“ママチャリ”で、後部にはチャイル

          「あなたは何者ですか?」に5秒で答えられるか

          写真も撮れる“取材ライター”は生き残れるのか?現役15年以上のリアル

           もはや文章を書くことだけがライターの仕事ではない——。Webメディアで求められるスキルは多岐にわたるが、とくにここ数年で賛否両論ありながらも「写真も撮れるライター」の活躍の場が広がっているように感じる。  誰もが生き残りをかけて熾烈な競争を繰り広げているなか、「取材ライター」向けのノウハウやアドバイスに「撮影」スキルをオススメする記事をよく見かけるようになった。そこで、僕自身の15年以上の経験をすこし書いてみたい。メリットも大きいが、苦労も少なくなかった……。 誰もが生

          写真も撮れる“取材ライター”は生き残れるのか?現役15年以上のリアル

          編集者なのに、なぜ「書く」のか

          「よくそんなに自分で書こうと思いますねえ」  これは仕事関係者からたまに言われる言葉だ。日々の業務に忙殺されるなかで、わざわざ自分で文章を書こうなんて気は起きないだろう、と。たしかに面倒くさいし、ただでさえ少ない可処分時間が減ってしまう。編集部に「所属」している“編集者”ならば基本的には固定給なので、書いたところで1円の足しにもならないわけだ。 Webメディア編集者が、あえて自分で「書く」意味 僕は現在、あるWebメディアの編集者として働いているが、“ライター”として書く

          編集者なのに、なぜ「書く」のか

          編集者の病い

          「ああ、それは編集者の病いですねえ」  出版業界の大先輩に相談してみると、こう返ってきた。有名な『編集者という病い』ではなく、“編集者の病い”である。 「車を運転しながら、なぜだか涙が止まらなくてねえ……。僕もそうだったんだけど、だいたい40代ぐらいで同じように悩む人も多いから気をつけたほうがいいよ」 昼夜逆転・不眠不休でも大丈夫だと思っていたけど… Web編集者のなかでも「ネットニュース」に関わる仕事は、広くて深い海を24時間泳ぎ続けるようなものだ。陸にあがって、心か

          ギャル男雑誌から週刊誌へ…編集者・ライターの道「意味のある遠回り」

           それは道端に転がっていた。きっと普段ならば見て見ぬふりをして「無かった」ことにしていたはずだ。目を逸らしたくなるような現実が、向こうから「カモン!」と言っている。 「ヘイ、カモン! ヘイ!ヘイ!」  その人は数メートル先からこちらを見ており、目が合ってしまった。どうやら物乞いのようだが、彼には足がなかった。私は、多くの人がそうしているように、まるで何事も無かったかのように、素通りしようと思った。すると、彼が目を大きく見開きながら再び「カモン!」と言って、明らかに“私”に

          ギャル男雑誌から週刊誌へ…編集者・ライターの道「意味のある遠回り」

          決められた道なんてない、やりたいことをやればいい

           極論を言えば、やりたいことをやればいい、それでお金が稼げるならば何だっていい——。  スマホがなかった時代にインドを訪れる旅人は、たいてい人生に悩んでいた。それぞれの「答え」を探そうともがいていた。私もそんなひとりだった。  初めてのインドは大学生の頃。まわりの友人・知人がスーツを着て、有名企業から内定を得るべく、最後の最後まで就職活動に精を出すなか、このままレールに乗るべきか、それとも本当にやりたいことを貫くべきか。タイムリミットが迫っていた。 就職活動に悩んでイン

          決められた道なんてない、やりたいことをやればいい

          ハンカチ王子ブームと人知れず消えた「王子」

           今でも世間を賑わせる斎藤佑樹投手。2006年の夏、早稲田実業高校のエースとして甲子園を沸かせた。端正な顔立ち、ハンカチで上品に汗をぬぐう仕草から「ハンカチ王子」と呼ばれた。  流行語大賞にもノミネートされ、巷ではブームに乗っかろうとする「●●王子」が急増。約15年前の出来事にもかかわらず、新しい王子が現在も誕生し続けているのだから、その影響力はすさまじいものだ。  しかしその裏で、人知れず消えてしまった王子も存在する。コーモン王子だ。誰だそれ……僕のことだ。 人知れず

          ハンカチ王子ブームと人知れず消えた「王子」

          SNSがなかった時代、ストリートスナップに載りたい人たちは…

           繁華街でキャッチ(スカウト)を見かけるたびに、思い出すことがある。かつて僕も渋谷系ファッション&カルチャー雑誌『men’s egg』編集部員として、街中でギャルやギャル男に声を掛けまくっていたのだ。 ストスナに載りたい人たち ファッション雑誌の人気企画と言えば、ストリートスナップ(ストスナ)である。InstagramやWEARなどのSNSがなかった頃は、雑誌のストスナに載ることがステータスだった。掲載されると、クラスで羨望の眼差しを受けるのだ。  週末の渋谷や原宿には、

          SNSがなかった時代、ストリートスナップに載りたい人たちは…

          寝過ごした朝

          「ヤバい!」  やっちまったようだ。枕元のケータイを探す。時刻はすでに午前10時をまわっており、いつの間にかアラームは止められていた。状況がつかめないまま、布団から飛び起きる。 「ヤバい、ヤバい、ヤバい……」  ここはどこなのだろうか。「現場」に遅刻してしまう。どうしたら間に合うのか。寝起きで頭がまわらない。自分は何を焦っているのか。  待てよ。もう、現場に行く必要はなかったんだ——。 初出社の日、編集部の片隅に寝袋が… 現在は、目を覚ました瞬間に「ヤバい!」と焦る

          紙からWebの編集者に転職して実感。「ちゃちゃっと書いてよ」問題の根深さ

           私は雑誌や書籍など紙媒体の編集者・ライターとしてキャリアを積み重ねて約10年……。そこそこの成果は出してきたつもりだ。とはいえ、「どれだけ時間をかけて制作しても、人に見てもらえなければ意味がない」。より多くの人に記事を読んでもらうため、思い切ってWebメディアのフィールドに足を踏み入れた。  しかしながら、私は当初、Twitterのアカウントすらもっておらず、ブログはもちろん、基本的にWebメディアは読まない。そんな根っからのアナログ人間だったのだ(取材対象の情報収集にS

          紙からWebの編集者に転職して実感。「ちゃちゃっと書いてよ」問題の根深さ