新宿駅にて

五月雨が微かに吹き込む軒
水を含んだ冷風
身体の熱が僅かに冷える

緩やかな風にそよぐ髪の先
喧騒に降り注ぐ街灯
ありふれた夜の深まりを見つめている

見えない軛から放たれて
重い荷物一つを背負った身体

彷徨い歩く地面は固く
遠くの広がりに続いている

群衆の中の見知らぬ個となり
甘美な孤独を纏って歩く
無名の反響音を割くようにして

どこか遠くかもしれない。会うこともないかもしれない。 でもこの空の下のどこかに、私の作品を好きでいてくれる人がいることが、私の生きていく糧になります。