見出し画像

綺麗にきみをあいしてたい/SHE IS SUMMER

「ごめん、仕事でトラブル対応しないといけなくて…映画、来週の土曜日でもいい?」

金曜日の夜、明日のデートに備えて顔パックをつけながら入念にボディクリームを塗り込みストレッチを始めた時に鳴った電話だった。


付き合って一年。付き合い初めの頃は、休日出勤なんて建前で浮気をしてるのではないかと疑い、かと言って指摘する度胸もなく、消えないモヤモヤがいつまでも渦巻いていた。休まらない気持ちのまま月曜日を迎え、うっすら青いクマができてげんなりしながら出勤することもあった。

私が不安を感じていることを察したのか、休日に会えない時は平日の帰り道に落ち合うようになった。寂しさを埋めれる程には十分でない時間、ならばいっそ会わないまま寂しさを抱きしめていたかった、なんて言えるわけない。

彼のお気に入りのお店で仲の良い常連さんと共に乾杯する。人の懐に入るのが上手な彼はいつだって話の中心にいて、笑顔が絶えない。青空の似合う眩しさ。彼に惹かれていることを自覚した時もこの笑顔を思い出してたな、とふと思い出す。好きなところなのに、この気持ちはなんだろう。

驚くほどに彼の周囲に女の影が無いことは、半年も経たない内に分かっていた。休日のデート中も鳴り止まない取引先からの電話。責任感の強さから、休日でも後輩を手伝うために出勤する姿に、尊敬すると同時に嫉妬し浮気を疑った自分の醜さにへこんでしまった。

それでも未だに拗ねてしまう。大切にされていることは分かっているのに、頭と心が分離してしまう。いつ頃からか、彼がため息をこっそりつくようになった事に気付いた夜、風呂場でこっそり涙を流した。


いくつ恋愛経験を重ねてもちっとも成長しない感情を、誰かに打ち明ける勇気はない。


「休日出勤頑張ってね!映画の後に行きたいお店探しておきます♪」
ラインを返して窓を開ける。大きく伸びをして、ベランダのプランターに小さな芽が出てることに気付く。水をあげながら、花が咲いたら一番に写真を送りたいなと、彼の笑顔を思い出す。


寂しい気持ちは静かに私の中で消化する。尊敬するあなたに相応しく、綺麗な気持ちで君を愛し続けたいよ。

SHE IS SUMMER

「綺麗にきみをあいしてたい」

配色が素敵。

PS.春先の日差しが暖かい朝に口ずさむ曲。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?