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「海外」の印刷事情

ここのところ、お仕事で英語のメール文を書くことにほぼ抵抗が無くなったえとやんです。難しい文法や単語を使わず、できるだけ中学校で学ぶ程度の知っている(専門用語は使うが)ものだけでシンプルに書くことを心掛けています。メールだけでの海外取引歴は6年、ただ頑張って英会話の勉強するも、なかなか喋れない歴2年といったところです(苦笑)。

海外取引歴6年と書きましたが、日本と海外の印刷事情って地味に異なります。私が知っていることを少しだけ書いてみようと思います。


用紙とか資材とか

私たちの常用紙の種類として、大きくは「コート」「マット」「上質」などがあります。「コート」は表面がツルツルとした光沢のある紙、「マット」はスルスルしてても光沢のない紙、「上質」は表面がややフンワリしてて光沢のない紙、といった感じです。そして日本の場合は、ある程度の厚みのある用紙は、この「コート」「マット」「上質」に関係無く「板紙」といった別カテゴリも存在しますが、海外でいう「Paperboard」という括りとはちょっと違うかもしれません。

一方、海外でも「Coated Gloss」「Coated Matte」「Uncoated」となっていて基本は変わりません。ただ、海外特有の「Silk」というものも存在するらしいです。「Silk」って絹みたいな?コート?マット?日本にも「ダル(マットに近いがインキ面のみ光沢が出やすい特性)」というカテゴリがありますが、どうやらそれとも異なる・・・。
別名「Light Gloss」とも言われるそうで、それって「微塗工かな?」とも思うのですが、実際にサンプルでSilk paperを受け取ったときは「全然マットやん!」と感じた経験もあり、未だに謎が残っています。

ちなみに「コート」や「マット」的な表面フィルム貼り付け加工がありますが、そのフィルムにも「Gloss lamination」「Matte lamination」の他に「Velvet lamination」なるものも存在。日本には馴染みの無いフィルム・・・。当社では対応していますが、一言でいうならば「Soft touch」といった感じでしょうか。

まあ、他には、いわゆるTシャツとか、マグカップとか、当社では用紙以外の印刷も色々とやっていますが、殆どが中国とかベトナムとかの海外製なのでその辺は違いを感じたことはありません。
ただ、一言だけ言うならば、日本国内で流通するものは、品質がちゃんと管理されています。そこはやはり「日本品質だなぁ!(いい意味で)」といつも思っちゃいます。

Tシャツとか、マグカップとかをオリジナルで作る
クリエイターズプリントステーション


色とか

印刷で再現する「色」って、かなりマニアックで奥深い世界です。印刷物は、通常C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色の「点々(業界では "網点" と呼ばれています)」を重ね合わせてフルカラーを表現しております。この技術は、世界共通です。
しかし、いま「点々」と書きましたが、この「点々」が厄介で、この「点」の大きさがいろんな条件によって大きさが変わり、そしてそのビミョーな違いによって表現される色調が変化するのです。

これは「印刷機」によっても変わりますし、「インキ」によっても変わります。一言に「印刷機」といっても、一般的なオフセット印刷機だけでなく近年はデジタル印刷機と呼ばれるものも広まっています。それにより「インキ」も異なりますし、その特性はそれぞれで異なります。
仮に全く同じ「点」の大きさであっても、オフセットインキとデジタル印刷機の「インキ」の特性が異なるので、色調は異なるということも当然だったりします。

さらに複雑なことを述べるならば、皆さんが「画面(PCとかスマホとか)」で見ている色は、そもそもCMYKでは無く、RGBという別の方式で表現されています。よく聞くのは「画面と印刷物の色、違うやん!」といった声。色の再現領域が違うので、全く一緒にはなりません。

前置きが長くなりましたが、上記のようなものを「なるべく同じように色再現できるように」するために、カラープロファイルというものが使われています。例えば、印刷機にも画面(実際にはソフトウェア)にも「Japan Color 2011」でと指定すると、基本的には双方が違わないように再現される仕組みになっています。
ただ、勘の良い人はすでにお気づきかもしれませんが、海外からすると「Japan Colorって何やねんっ?!」という話です。名称どおり、日本国内でしか普及していない独自のものであり、これでは海外と互換しにくいです。

このままだと海外と互換しにくいのですが、最近は「G7」なるグレーバランスを使った別の管理手法があります。主にパッケージ印刷系で採用されている手法なのですが、この「G7」ガイドラインだと国際基準です。当社は、デジタル印刷においては、この「G7」に対応しております。

色管理のG7認証資格を取得


印刷データとか

印刷物は、一般的にはAdobe IllustratorとかPhotoshopといったソフトウェアを使い制作を行ないます。IllustratorだとAI形式、PhotoshopだとPSD形式などがありますが、この二者に共通したファイルフォーマットとしてはEPS形式なるものも存在します。

ただ近年はブラウザ上でデザイン制作ができるツールも数多く存在し、印刷物は特別なソフトウェアを持っていなくても自由にデザイン制作できるようになったことを実感しております。代表格でいえばCanva、Figmaといったところでしょうか。これらには「PDF」でデータ出力できる機能が備わっており、いまや国際標準的な存在です。

でも、一言に「PDF」といっても厳密には如何様にも設定は変更でき、「PDFだから印刷できる」という訳ではありません。そんなPDFにも実は規格というものが存在し、具体的には「PDF/X」に沿って保存(生成)されたPDFであれば印刷可能になります。特に「PDF/X-1a」「PDF/X-4」がよく推奨されています。

海外で印刷するとき、一番注意すべき点は「フォント」なんです。日本語のフォントは当然ながら「日本だけ」が通常であり海外では使われませんし、一般的な欧文フォントは1バイト方式に対し、日本語フォントは2バイト方式なので、そもそも異なります。このフォント情報がデザイン内に引き継がれなければ、文字は化けたり、無くなったりします。
そこで先程ご紹介した「PDF/X-1a」「PDF/X-4」にはフォントの埋め込みという機能があり、このおかげで、国内・海外どんな環境下であっても、文字が化けることなく印刷データとして使えるものになります。

参考「Canva - データ入稿についてのご注意」

主に「用紙・資材」「色」「印刷データ」さえ押さえておけば、海外でもほぼ問題無く印刷対応できます。


あ!もう1つ!とても重要なことをお伝えし忘れていました!印刷データをファイルでお渡しする際は、必ず1バイト(半角英数字など)のファイル名にしておいてくださいね。(笑)

ちなみに、当社では「結 MUSUBI」というサービスを、2023/10/10に正式リリースしました。日本のクリエイター作品を海外に伝えるため、海外の人が購入できて、海外現地にて製造する仕組みを作っています。

印刷もクリエイティブも、もはやボーダレス。ワタクシこの仕事25年以上していますが、こんなマニアックな印刷も "面白い時代" になってきたなと日々実感しています。


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