奇病である。内臓がだんだん固くなっていくのだ。
　代替内臓が開発されて、人体のサイボーグ化が急速に進んだ。
　私など、もうほとんどロボットと変わりないが、
「とうとうきましたね」
　と、CTスキャン画像を見ながら医者はいうのである。
「頭、ですか」
「そう。脳が固くなってきている。この白い斑点、これはもう固くなった場所」
「ほっておくとどうなるのでしょう」
「固まった場所には血が通らないわけだから、拡大すれば、死にます」
「でも、脳を取り替えちゃったら、それはもう自分じゃないですね」
「記憶はなるべくバックアップしますし……それに心がどこにあるかという議論は医学の領域じゃないですしね」
「仕方ないかなあ」
「じゃ、代替脳を選んでください。いまなら、DoCoMo製、au製、ソフトバンク製、アップル製が選べます。ソフトバンクのホワイトプランなら家族の方と無料で会話ができますよ」
「いりません。アップルでお願いします」

（了）