マンホールの蓋をフリスビー代わりにして遊んでいる子どもたちがいた。
　高速回転する円盤が首筋の近くを飛びすぎたときは、死を覚悟した。怒鳴る気力さえわかない。
　目をつむって歩き続けた。
　だいぶたってから、窓ガラスが割れ、家が潰れるような破壊音が聞こえてきたが、振り返ってはいけないと固く自分に言い聞かせ、地下鉄の階段を下った。
　ホームがなかった。
　盗まれてしまったらしい。そういえば、線路もない。
　ここにも子どもたちがいて、線路を引き千切った鉄棒でちゃんばらをしていた。
　ひそかに身を隠す私はまるで鼠のようだ。

（了）

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