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鳥人間コンテストに際したパイロット冷却について

今年のエアクラのプレクーリングは成功だったと思う。猛暑が予想される中でパイロットの運動時間を少しでも増やすためプレクーリングに力をいれた。

1.体外から冷やす方法について


ロードレースのウォームアップシーンではよくアイスベストを着用している選手が見られるが、これに加えて手足など末梢を冷やすことを行った。ウォームアップ終了後クーラーボックスの中に氷水を用意し、足首以下の感覚が無くなるまで冷やした。手には氷を入れたストッキングを手に持っていた。こちらも指の感覚が麻痺するレベルまで冷やした。首にも氷を入れ、とにかく身体全体を冷やすことを意識した。事前の実験では20分程度のウォームアップ終了時点からこの方法を25分ほど行うことで0.5℃程度体温を下げることを確認した。

実験時のもの。氷水で指先の感覚が無くなるまで冷やす。

2.体内から冷やす方法について


いわゆるアイススラリー。冷たいものを摂取することで体内から体温を下げる方法。コンビニで売っているアイスコーヒー用の氷に経口補水液を加えたものをフライトまで絶えず摂取し続けた。アイススラリーはかなり効果があり、事前の実験では1.5℃程度体温を下げることが確認できていた。

アイススラリーの実験。本番ではコンビニのアイスコーヒー用の氷にOS-1を入れたものを飲んでいた。

上記1.2の方法を組み合わせることでウォームアップ終了時点から2℃程度体温を下げることができる。(事前の実験では37.9-35.7℃と25分程度で2℃体温を下げることができていた。)

そもそもプレクーリングにはどれほどの効果があるのか


プレクーリングを行うことでどれほど運動時間が延びるのかという点に関しても記述する。実験の際にはA、B、Cの3条件に分けてそれぞれ運動継続時間の評価をおこなった。Aはプレクーリング無し、Bは体外アプローチのみ、Cは体内アプローチである。
実験内容は20分間のウォーミングアップを行った後それぞれの条件を施した後、35℃の環境下で265w(5.9w/kg)を持続できる時間を測定するものである。35℃というのは直射日光環境下で耐久回転試験を行った際のフェアリング内部の温度である。結果としてはAでは265wを維持できた時間は20分、Bでは25分、Cでは35分と明らかに差ができている。
このことからプレクーリングによって運動時間を延ばすことが可能であると結論づけた上で先述のアプローチを鳥コン本番時にも行うことにした。

3.その他のアプローチ


ウェアやシューズなど身につけるものは全てビニール袋に入れ、氷を詰めたクーラーボックスで冷やしていた。ウェアはプラホに上がる直前に着る必要があったが、シューズやソックスなどはプラホ上で着用した。また、ウォームアップ終了後は常にアイスベストを着用し体温が上昇する要因を極力無くすように心掛けた。

4.機内での冷却について


機内に積み込んだドリンクは二つ。
一つはBCAAにMag-onを溶かしたもの400gに砕いた氷350gを入れたもの。ガイガーリグのチューブの中を通るように氷を砕いておくことがポイント。当初は経口補水液を入れる予定だったが喉に引っかかる感じがあったので回避。

ガイガーリグの中身はBCAAとmag-onと氷。氷が溶けないよう発進直前まで搭載しなかった。


もう一つは氷多めの氷水450。これは主に身体にかける目的だった。氷が多いのは少しでも溶けるまでの時間を稼ぐため。35℃の中で20分程度は氷が持つように量を調整した。このボトルはパイロットの顔の前に搭載しインテイクからパイロットの顔に流れる風を冷やす目的もあった。

ピンクのボトルの中身は氷水。この氷水の配合はパイロットのインタビューの間にプラットフォーム上で行った。

加えて、フライト直前にはパイロット搭乗直前までシートと操縦桿を氷で冷やした。パイロットのウェアも搭乗直前に冷却スプレーをかけて冷やした。

かなりこれらの方法は効果があり、発進時には本当に暑さを感じなかった。来年以降鳥人間コンテストに出場されるチームのパイロットはぜひ試してみてほしい。

最後に、この方法を行うにあたってOrca Projectの伊藤透(@toruito16)様には大変お世話になりました。この場をお借りしてお礼申し上げます。本当にありがとうございました

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