見出し画像

新規事業創出の極意①新規事業は本当に必要なのか?

今までに、民間企業、大学、NPOの立場で新規事業創出にそれぞれ携わってきました。個別の具体例は色々と問題になってしまいますが、折角の経験なので考え方などをまとめて欲しいと知人に勧められました。

テクニカルな部分は色々な著書があるので、そちらを参照ください。それよりも新規事業推進には情熱と環境作りなどの心理的側面が大事なので、なかなか文章化されていない部分にフォーカスしています。

そんな訳で、ステイホーム中の連休を最大限に活用して、全10回位で連載記事にしていきます。記事数はあまり考えていないので、まあ大体です。

理解が分かれる新規事業創出の意味

最初は「新規事業」という点について、理解を共有化してみます。
もちろん、多くの人が「新規事業」という言葉を聞いたことはあると思います。

ただ、「新規事業とは何ですか?」という質問をすると結構な割合で回答に困ってしまうケースが多いです。また、人によって思っているイメージはバラバラです。単純には、「新しい製品を生み出すこと」なのですが、話はそれほど単純ではないです。

例えば、「既存の自社製品を改良したモノ」と「飛び地の新製品」ではニーズをとらえる考え方や市場予測、製品化に至るアプローチは全く異なります。でも、どちらも「新規事業」という点では正解です。

もちろん、企業の継続的な成長には必要不可欠なことなので、多くの経営者は「新規事業創出」を求めます。既存事業は長期的に見れば売り上げが落ちてきますので、必ず「新規事業創出」は必要です。

その時に社内のメンバー間の意志の統一ができていないために迷走するのを何度も見てきました。まずは「新規事業」に対する考え方が人によって違い、それを理解することが大事です。

「既存の自社製品を改良したモノ」では、想定顧客がいて、これまでに深い交流をしているので、市場ニーズや売り上げの予測が高精度にできます。また、開発部隊にとっても、知見のある分野なので、どういったアプローチで製品を仕上げていくかを容易にイメージできます。

これにはもちろん「既存の自社製品を改良したモノ」を製品化するためには他社に先駆けて情報を入手したり、使い勝手を良くする工夫など多くのスキルが求められます。また、スピードが決め手になる場合もあります。

一方、「飛び地の新製品」には同じ新事業ですが、全くと言ってよいほど進め方や求められるスキルが違います。それらを同じ価値基準で考えてしまうから、不幸が始まってしまうのです。

多くの場合には、「自社の保有技術」を活かして「新しい領域」の製品を生み出すケースです。多くの会社には自社の得意な技術分野があり、それを活かして事業を展開してきました。

例えば、「ビックデータの活用ノウハウ」、「医療機器の安全性保障」、「樹脂の合成技術」、「モジュール化プロセス」、「優れたユーザーインターフェース」など色々とありますが、少なくとも他社よりも優れている点があるので、事業が成立しています。

次の段階として、これらの「自社の保有技術」を新しい領域に展開することを考えます。これは当然の流れです。今まで「店舗向けにビックデータ解析」をしていた企業が「医療用途へビックデータ解析技術を展開」するなどです。

ただ、そうなると一気に顧客との距離が遠くなります。業界によって常識や言語が全く異なります。「技術は分かっているはずだろう」と言われますが、それだけではどうすることもできません。

上記の例でいうと、一般店舗と病院では全然カルチャーが違います。
それはその通りですよね。

「情報」を入手して「データ解析する」という点は全く同じですが、データ解析の質や取り扱い方法などが異なります。また、求められるデータ解析の精度も全然違います。

もう一つの課題として、どうやって新領域の顧客と接点を持てるかも分かりません。また、知り合えたとしても、その分野では素人なのでどうやって信頼してもらえるかも分からないのが実情です。

新規事業担当者の苦悩

さらに、社内にも敵がでてきます。

「飛び地の新製品」はどうしても「既存の自社製品を改良したモノ」よりも時間がかかってしまいます。また、途中段階で全く進捗していないように周囲から見えてしまうのです。

そうなってくると、「既存の自社製品を改良したモノ」を担当している人からすると、もっと短期的に目に見える成果につながる仕事をするように言われたりします。また、目に見える成果がないと担当している本人が精神的につらくなってしまいます。

よくある話ですが、担当者としては困ってしまいます。今後の記事ではこういった悩みを抱える人を少しでも救うために、なかなか表に出てこないノウハウをまとめていきます。

まずは社内の意識の統一が大事

一つの解決策として、自分が担当したときに新規事業を承認する役員などへ提案する数を増やすことです。くだらないと思われる提案を何度もするのには抵抗があるかもしれませんが、それでは前に進みません。

例えば、具体的に提案をすれば「こんなの既存製品の改良だろ?」とか「こんな全く飛び地だと自社がやる意味がない」などのリアクションがあると思います。そういった積み重ねでどの辺なら自社でも取り組める範囲なのかが、実体験として理解できます。

提案が一つも認められない日々はつらいですが、そういったことを理解できるだけで十分な成果です。日々悩んでいく中で、良いアイデアが浮かんだ時に社内で承認されやすいプランを作り上げることに繋がります。

役員レベルになると知識は結構あります。

それこそ、新規事業は「バックキャスティングで考える」とか「セグメントに分けて分析する」とか一般的なことは当然理解しています。ただ、新規事業に対する細かい解釈というか自分の判断基準はその人しか分かりません。

そういったことを理解するために、定期的に役員に情報をインプットして、その反応を見ていくことが大事だと思っています。また、役員自身の想いもちゃんと整理させていないケースもあるので、若い人と何度も議論することで自分の考えが整理していくことも多いので、一石二鳥です。

なかなか大企業だと役員に直接提案するのは心理的な障壁も大きいですが、悶々と一人で迷走するくらいなら一度騙されたと思って実行してみてください。二回目以降はそれまでの悩みが何だったのかと思うくらい、簡単に提案できるようになります。

そういったプロセスを繰り返して、直属の上司やメンバーの間でも「自社の新規事業に対する考え方」を共有できます。多少時間はかかりますが、そうやって社内の新規事業を効率的に推進する雰囲気を作り上げてください。

新規事業はコロナ禍で必要か?

結論としては、コロナ禍こそ必要です。

既存事業の売り上げが大幅に減少している企業が多く、そこで少しでも売り上げを当初予想に近づけるかという努力はもちろん必要です。それは企業として当然の取り組みです。

一方で、新規事業は未来への投資なので、ここで新規事業への取り組みを先送りすると、何年か後に大きな差を付けられてしまうことが危惧されます。

また、社会構造が本当に大きく変わってしまった数か月です。来年以降がどうなっていくのかという正確な予想は難しいですが、それをチャンスと捉えて新しい分野に挑戦していく企業が大きく飛躍します。

今は新規事業に対する投資が減っている訳ではないというデータもあります。先の見通せない今は大変な状況ですが、是非、今こそ新しい事業の種をしっかりと育てていきましょう。

次回は「未来予測」や「ビジョン構築」について記事をまとめる予定です。




宜しければサポートお願いします。サポートは活動しているNPOを通じて社会貢献します!