【コンテ】チェルシーvsマンチェスター・シティ【2017.4.6】

fukuharaです。

今回はコンテチェルシーを見ます。
2017年4月6日に行われたグアルディオラ率いるマンチェスター・シティとの1戦です。

スターティングイレブン

コンテのチェルシーは「1-3-4-3」。
何か特別に対策を練っている、という印象のメンバーではありません。
モーゼスは怪我か累積警告か、ベンチ外でした。
グアルディオラのシティは「1-4-2-1-3」。
勝手なイメージですがシティの中盤構成はアンカー+2IHだと思っていたので意外です。
このシーズンどうやって戦ってきたのかは分かりませんが、チェルシー相手には良かったですね。

シティのビルドアップの狙い

シティのビルドアップの狙いは中盤の噛み合わせで2vs3で1人浮かせることです。
このシーズン、シティがどんなシステムで戦っていたのかは不明ですが「1-4-2-1-3」はチェルシーの「1-3-4-3」対策としてはとても有効でした。
ダビド・シルバが2ライン間で自由に動くことでCBからのパスを引き出します。
仮にダビド・シルバを捕まえても、今度は2DHのどちらかが空いて前進されてしまいます。
チェルシーは守備の立ち位置でパスコースを消すこともできますが、シティが縦パスを意図的に狙ったときは殆ど通っていました。

チェルシーの守備

一気に前線5枚置き去りにされる事を嫌ったチェルシーはミドルサードまでは前進を許す撤退守備に変更、撤退時は「1-5-4-1」になります。
ここまで順調にミドルサードに侵入できたシティですがWGが幅をとれず苦労していました。
恐らくSBが高い位置で幅を取る役目だと思いますが実行できません。
SBが高い位置で幅をとるとアザールとペドロによるカウンターがある為です。

ならばとデ・ブルイネが降りる動きでボールを引き出し、HVを釣り出しますがチェルシーのディフェンスラインの連動がとても良いです。
ゾーンディフェンスの基本ですね。
5人がロープを持った状態を想像するとイメージしやすいと思います。
誰かが前に出たらその分スライドします。

仙台はよくこのHVが釣りだされたスペースを狙われたりしてピンチを迎えますが、この基本ができない事が原因の一つだと思います。
渡邉監督はゾーンディフェンスを仕込めないんじゃないか疑惑もありましたが恐らく仕込めない。
+選手たちも今まであまり取り組んでこなかったのではないでしょうか。
日本代表の選手たちがロープを持ったままプレーする練習をしているあたり、日本ではトッププレイヤーでもゾーンディフェンスができない事が予想されます。
ちなみに僕もゾーンの割合が高いチームではやったことないです。

チェルシーの守備配置

とはいっても、エリア内に侵入される時は侵入されます。
「結果が変わらないなら別にスライドする意味なくない?」となりそうですが、意味はあります。
大外からの侵入はチェルシーにとって想定内だからです。
得点確率が最も高いローポストからのクロスを想定内にする秘密はチェルシーの守備配置にあります。

赤の矢印は右利きのプレーヤーが蹴れるパスコースです。
図はマグネットの縮尺が狂っていますが何となく予想がつくと思います。
守備配置をしっかりとられるとクロスは通りません。

①マイナス・・・ディフェンダー+中盤の選手を配置して面を作り弾く
②ニア・・・ディフェンダーを配置して面を作り弾く
③ファー・・・ディフェンダー+ゴールキーパーの間を通させない配置をしている

恐らくチェルシーはローポストに侵入された際、人ではなくこの配置を優先して守っています。
これがコンテのチェルシーが堅守の理由です。

チェルシーの先制点

チェルシーの先制点はカウンター→ローポスト侵入→クロスから決まりました。
先ほどの話を踏まえるとローポストからのクロスは怖くないように感じますが、守備配置がとれていないとどうなるかよく分かります。

チェルシーとの違いは4つです。

①4バックである。
②SBが大外に釣りだされて、CB-SB間(チャンネル)が大きく広がった。
③チャンネルからローポストを目的地として走るプレーヤーに中盤の選手が釣られた。
④マイナスのパスコースを消す選手が不在になった。

同じ空間を塞ぐ守備でも、シティの場合は"空いたスペース"を埋めました。
危険な位置に人を配置するチェルシーとは似ているようで違います。
これによってフリーになったアザールが決めて先制しました。

得点確率の少ない大外からのクロスを捨てるのか、それともクロス自体蹴らせないのか、人を守るのか、配置を守るのか。
2年近く前の試合ですが、今後なにが主流になるか楽しみな部分です。

チェルシーのビルドアップ

チェルシーのビルドアップは基本的にディフェンディングサードからは前進できません。
前進できるのはアザールがボールを持ったカウンターの時くらいです。
一度セットされてしまうと、WBが降りてきて空いたスペースに前線3枚目掛けてロングフィードを蹴るのが最優先です。
もちろんこれは1点リードしている状況から安全策をとって行っているプレーかもしれないので、1試合見ただけでは分かりませんが。
セカンドボールを何とか拾えてミドルサードに侵入できると「1-3-2-5」から立ち位置をとって崩しの局面へ入る事ができますが、この試合ではセカンドボールをうまく拾う仕組みは見つけられませんでした。

シティの先制点

シティの先制点はチェルシーのビルドアップの失敗から生まれました。

①セスクはプレッシャーを受けてズマへのバックパスを選択。
②バックパスのボールが移動中にそのままプレッシャーをかけてセスクをカバーシャドウで消す。
③ズマはパスコースを消されてクルトゥワへのバックパスを選択。
④バックパスのボールが移動中に前方のパスコースを消しながらクルトゥワへプレス
⑤左へのパスコースを消されたクルトゥワは利き足ではない右でフィードを蹴ってボールロスト。カウンターから失点。

恐らくシティはチェルシー守備陣のビルドアップ能力がダビド・ルイスに依存していることを分析してこのプレッシャーをかけたと思います。
カバーシャドウで消されやすいのは3バックあるあるなのかもしれないので、この辺りは引き続き見ていきたいと思います。

後半の対応

前半のうちにPKで再びリードを奪ったチェルシーは選手交代を行います。
OUT→ズマ IN→マティッチ
守備時の立ち位置は右WBのアスピリクエタを右HVに、シャドーのペドロを右WBに、中央を3枚に変更しました。
前半再三見られた2ライン間で浮いているダビド・シルバを捕まえる対策です。
リードしている事もあって、より守備に重きを置いた布陣に変更しました。

コンテはただ守るだけではなく攻撃にも2つの手を加えました。

①野津田ロールをするセスク
IHとシャドーの立ち位置を何度も出入りするセスク。
崩しの局面では相手につかまらない位置をうまくとり攻撃の潤滑材になっていました。

②右に張るペドロ
俗にいうアイソレーション。
孤立させたペドロによる1vs1を作ってチャンスを作っていました。
トランジションもかなり早くカウンターの起点にもなっていました。

変わらぬ試合展開

試合展開は後半になっても特に変わりなく、2-1のまま試合終了。

相変わらずビルドアップで詰まってロングフィードを蹴るチェルシー。(なぜかセカンドを拾えてチャンスも作る)
ボールは持てるものの局面は破壊できないシティ。
そんな展開がずっと続きました。

少し変わったのはチェルシーの対策によって、よりミドルゾーンからシティの攻撃が始まる事が多くなったことと、ペドロを入れたことでカウンターでフィニッシュまで行く頻度が増えたこと。

中盤の枚数は増やしたもののビルドアップに詰まるチェルシーには何か理由があるんだと思いますが、それがリードしていたからなのか、それともそもそもビルドアップできないのかは分かりません。
ローカルに落としてあるビッグクラブとの残り3試合をみてその辺りは判断しようと思います。

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