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自然神との対話の足跡(海面進退について)

暑い日が続くこの時期に、頭を冷やして考えたいことがあります。もちろんテーマは、気候変動と海面進退との関係ですが、科学的エビデンスに基づいて真実を明らかにしておきたいと思います。
歴史解説を鵜呑みにせず自分の足で確かめ自分の頭で考えることで、自然神との対話に近づけると信じています。

1)気候変動と海面進退の歴史から
人類が地球上に姿を現してから今日まで、4回の氷河期(ギュンツ、ミンデル、リス、ビュルム)を経験しています。最後のビュルム氷河期が地球を襲ったのが今から約7万年前のことで、それから徐々に気温が下がり、約2万年前に極寒気を向かえました。「気温は年平均で現在よりも約7~8℃低く、海水面は最大約130メートル低下していた」(推論Ⅰ)と記されています。

「現在との年平均気温差表2-66」埼玉県史 通史編、1987.3出版、p166より

その後は地球の気温は安定し、現在の平均気温の±2℃程度の変動を繰り返しているようです。「縄文前期の最も気温が高かった時、現在よりおよそ2℃ぐらい平均気温が上昇して、海抜8~10mまで海岸線が進むことがあった」(推論Ⅱ)と記録されています。

「縄文人と弥生人」2015.4『日本の歴史1』より

最も直近の気候変動データとしては、1979年から始まった衛星による遠隔観測の結果が全地球を網羅しています。観測以来四十数年間を直線で均してみると、地球底層の大気は10年当たり0.13℃で温度上昇しています
こちらは直接の気温観測のデータであり、前掲の表や図と比較にならないほど精度も高いものです(観測技術検証など、ご参考)。現在と同じペースで気温の上昇が続いたとしても、このあと150年以上経たなければこれまで一万年の気候変動(±2℃)の範囲を超えません。(テレビなどで騒がれている)地球温暖化は単なる雑音レベルか誤差範囲の戯言として聞き流しておけばよいと考えます。

NASA、NOAAの協力を得てアラバマ大学ハンツビル校ロイ・スペーサー教授による報告

2)気候変動はどうやってわかったのか
最初に示した2つ(表と図)は、歴史の教科書に記されている解説ですが、果たしてどのように検証したものでしょうか。彼の話(History)は真実でしょうか。
衛星観測もなければ温度計の発明もない時代の気候変動は、出所が異なる2つの表と図の時系列の気温変化推移が合っていないことからも分かるとおり、直接(一次情報)の観測結果ではないことは明らかです。もちろん、氷河期に生きていて日本海が湖だった現地を見た記録もなければ証人もいません。歴史学者がよりどころにする科学的エビデンスは、遺跡から出土した動物、植物、人造物の検証結果であり、歴史(History)はそれらを合理的につなぎ合せた推論の解説でしかないのです。
例えば、主に大陸に棲息していた巨大動物の骨が日本列島の多くの地域から出土していることから、気候変動、海面進退の時期や程度を推論しているわけです。

第四氷河期の日本列島と哺乳動物出土地『日本歴史体系ほかより』

3)海進、海退の検証について
(1)貝塚分布による海岸線の推定
埼玉県史 通史編(1987.3出版、p130)によると、海岸線が貝塚分布と附合していることを目安として次のように推論しています。
「縄文前期の奥東京湾はすでに大宮台地を挟むように中川流域では栃木県藤岡町付近まで、荒川流域では上尾市平方付近まで入り込んでいたと考えられている。
だが、後期の奥東京湾はかなり縮小、後退していた。中川流域への侵入は庄和町を北限としていたようであり、東は下総台地の緑辺に近い部分までを海域とし、西は慈恩寺支台、岩槻支台、安行支台の台地先端部に寄った場所に汀線を求めることができる。
荒川流域への海の広がりは非常に少なく現在の川口から板橋付近までと想定される。春日部、越谷、草加、松伏、吉川、三郷、八潮、鳩ヶ谷、蕨の各市町は大半が当時は海水に没していたのである。ちなみに「後期の海水面は今の海よりも二~三メートル高かった」(推論Ⅲ)と推定されている。」

縄文後・晩期の貝塚と奥東京湾

(2)海面上昇シミュレーター
上記を検証する方法として、例えばJAXAの地球観測衛星「だいち」が観測した地形データを使った海面上昇のシミュレーションが活用できると思い付きます。地形データ10m地点を海面高さにした地図の説明は縄文前期の海岸線の解説(推論Ⅱ)と附合しているように見受けられます。

地形データ10mを海面高さにした地図(武蔵国一宮氷川神社を中心に)

海面高さを二~三メートルに変えて海面上昇のシミュレーションを行なっても、貝塚分布による海岸線の解説(推論Ⅲ)と一致する結果は得られません(NASAのFloodMapsを使っても同じです)。実際に現在の川口から板橋付近の標高は、想定より数メートル高くなっています。
この差異が後に堆積が加わったものか、あるいは土地が隆起したものかについて、さらに検討を加え精度の高い検証を試みたいところです。

(3)気候変動と海面進退の因果関係について

気候変動と海面進退

歴史解説によると、推論Ⅰでは気温が-8℃で海抜が-130m、推論Ⅱでは平均気温が+2℃で海抜が+10mとの数字が示されていますが、この増減の数値に小学生でも分かる矛盾があります。平均気温あたりの海面進退の数字に5~16(m/℃)の幅があり、この数字自身が信頼性を欠くことを自ら明かしています。
世界(1277 地点の平均)の海面進退の実データがこちらになります。1858~2009 年の152年の期間に限れば、1.92(mm/年)のペースで世界の平均潮位は上昇してきています。この潮位の上昇は水温が上がって水が熱膨張するという科学的な根拠に基づいていると理解しています。
もし直近の気候変動(0.13℃/10年)が152年の期間も同じペースであったとしたら、直近の精密な観測に基づく平均気温あたりの海面進退は+0.148(m/℃)となります。この指標データは、歴史解説の推論Ⅰ~Ⅲの数字がほぼウソに近いレベルの信憑性しかないことを示唆しています。

英国国立海洋センター(NOC)観測データより

温暖化ガスと気候変動

世界の潮位上昇の実データは、人類が化石燃料を大量消費始めた1930年代以降もそれ以前と潮位の上昇速度が変わっていないことを示しています。世間で信じられている温暖化ガスの一つである二酸化炭素の排出が海面上昇の原因になるという因果関係を明らかに否定しています。

人生は宝石箱をいっぱいに満たす時間で、平穏な日常は手を伸ばせばすぐに届く近くに、自分のすぐ隣にあると思っていた……