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図書館のお仕事紹介(10)レファレンス

今回はいよいよ図書館の花形業務、レファレンスのご紹介です。

今頃になってしまったのは、そもそも私はレファレンス専門の担当者でもなく、例によって「何でも屋」として他業務の合間にバタバタとレファレンスもやっているだけなので、私ごときに語れることがあるのか不安だったからです。
(実際世の中には「レファレンスの鬼」みたいなすごい専門の司書がいて、事例集などもいろいろと発信されています)
とは言え最近はレファレンスに携わる機会もすこし増えたので、「何でも屋」なりの視点からレファレンスについて語ってみたいと思います。

レファレンスとは

日本語で「参考業務」とか、わかりやすく「本のそうだん」などと表示されていることもありますが、要するに「利用者が求める情報にたどりつくためのお手伝い」ですね。

具体的な事例集としては、国立国会図書館の「レファレンス協同データベース」がわかりやすいです。

全国の図書館から寄せられた事例が検索でき、質問と答えだけでなく、回答プロセスや参考文献も載っているので便利です。
世の中には自分と同じことを調べている人がいるもので、ちょっとした疑問ならこれを検索するだけで解決してしまうこともあります。

レファレンスには、ざっくりと次のような区分があります。

文献所在調査

「この本はどこにあるか」といったことです。
単純に自館OPACを検索して配架場所にご案内するだけで済むケースから、横断検索などを駆使して所蔵館を特定するケースまでいろいろです。

書誌的事項調査

「○○という人の××という論文を探しているが、どこに掲載されているか」といった質問に対して、掲載誌や巻号、掲載ページを特定する調査です。
雑誌記事や全集の収録内容はOPACで検索できないことが多いので、ここは司書の腕が試されるところです。

文献案内調査

「○○について調べたいが、どんな資料があるか」といった質問に対して、関連する文献を紹介します。
利用者のニーズに合った提案が必要です。

事項調査

事実関係を調査します。「宇都宮市の昨年度ギョーザ消費量を知りたい」みたいなやつですね。事例集で人気なのはたいていこれです。

利用案内・利用者支援

あまり意識されないのですが、利用者にデータベースや辞典類の使い方を教えたり、「○○の調べ方」的なファイルを用意したりするのも広い意味ではレファレンスの一部です。

レファレンサーに必要なチカラとは

聞くチカラ

「レファレンス・インタビュー」といいます。
ここがすべてのスタートです。利用者からすると「それは具体的にどのようなことか」「どこでその情報を知ったか」「いつまでに必要か」などとあれこれ聞かれて面倒くさいかもしれませんが、ここをきちんと押さえておかないと、間違った方向に走り出してしまってあとで困るのです。

利用者によって「あ、ちょっと気になっただけなので今わからないなら別にいいです」という人、「時間がかかってもいいので関連資料をもれなく調べたい」という人、「何が何でも来月の研究発表までに入手せねば!金に糸目はつけん!」という人までさまざまななので、対応も違ってきます。

調べるチカラ

司書の専門性の見せどころです。各種データベースと辞書事典類などのレファレンスツールについて、その収録範囲と長所短所、キーワードの選び方、「論理演算子」などを駆使した検索技術、自館と他館の蔵書傾向や専門分野…などなど、多岐にわたります。
私のような何でも屋にはここが弱いところで、時間の許す限り研鑽に努めてはいますが、専門のレファレンサーには敵わないですね。

疑うチカラ

じつはこれが重要です。
インターネット上の情報が鵜吞みにできないのは常識ですが、権威ある紙の辞典だから大丈夫だと思っていたら、まさかの誤植、という例もあります。
やはり複数の情報源から裏を取るのが基本です。
利用者の言うこともそのまま受け取れない場合があります。「詩集ってどこですかね」という質問でも実際は「○○という詩が載っている本を探している」というニーズが隠れていることがあるからです。単純に詩の棚を案内して終わりではなく「具体的にお探しの詩などはありますか」という質問が必要です(もちろん「ただ何となく詩が読みたい気分」という可能性もあります)。
利用者が勘違いしていることもあります。学生さんから「先生に図書館で参考文献リストを探すように言われた」という相談があったのですが、本当は「先生が配った参考文献リストにある文献を図書館で探して読むように」という課題で、その事実が発覚するまで、私は先生の配ったプリントにしか存在しない参考文献リストを探すはめになりました。
ただしやたらと疑うのも禁物です。いかにもありそうもないタイトルなので「利用者の勘違いだろう」と思っていたら、本当にそういう本だった、ということもありました。
いちばん疑うべきは「自分自身」です。レファレンサーは博識であるに越したことはないですが、自分の知識だけに頼って失敗することもあるので、「それは自分の思いこみかも?」という疑念と「利用者から教わる」という謙虚さが大切です。

つなげるチカラ

レファレンスで期待される結果が出ないこともあります。
その時に「ありません」「わかりません」で終わらないように心がけています。

「この方法でここまで調べたがわからなかった」「自館ではわからないがわかりそうな機関を紹介する」というかたちで少しでも役に立つことはできます。
文献所在調査で求める資料が自館で提供できそうになく、複写料金や交通費を考えると古書店サイトなどで買ったほうがいい場合、そちらを勧めることもあります。

レファレンスに寄せられた質問から「自館の蔵書構成でここが弱い」「配架場所や掲示がわかりにくい」といった問題点が浮かび上がり、他業務の担当者につなげることもあります。

あとは集合知というか、難しい案件を自分一人で抱えこまず、スタッフ全員に投げてわかる人に回答してもらう、というのも有効ですね。

まとめ

なんだかんだ言っても、レファレンスは面白いです。
本の知識、目録や分類の知識、ネット検索の知識、関係機関や人的資源の知識、対人能力、論理的思考力など、司書としての総合的なチカラが試される場でもあります。
事件を解決する名探偵のように、すべてを疑い、手に入るデータを駆使して真相に迫る、というレファレンスは、やはり図書館の花形なのだと思います。


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