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人生の先輩に仕事を教える

私もこの年齢になって、そろそろ後進の育成みたいなことに貢献したいと思っていたのですが。

ふと気が付くと、自分の職業人生で、自分より若い人に教える回数より年配者に教える回数のほうが圧倒的に多いのですね。

「大学卒業したて!司書資格取りたて!」というキラキラした瞳の志ある若者に、司書の仕事を伝えていければ…と夢見ていたのですが、現実はだいぶ違いました。
そもそも図書館で新卒採用などしていませんし、たまたま若い人が入ってもすぐ他部署に異動するか5年で雇い止めになります。
その代わり多いのが、子育てが一段落した女性と定年後再雇用or転職組のシニアです。
「子育て一段落組」については前職ですごいキャリアがあったり出産前に図書館業務経験があったりでむしろ私などより優秀なので関係ないですが、悩ましいのはシニアです。

目録や分類などの専門的な図書館業務を伝えるのはまだいいのですが、Word・ExcelとかPDFの印刷とか、べつに詳しいわけでもないことまで若いというだけであてにされるのはけっこうな負担です。
見渡すと、私と同世代のスタッフはみんな同じ状態になっています。

少子高齢化の昨今、スポーツジムのインストラクターなどもほぼ介護職という噂ですし、世の中全体がそうなのかもしれません。

子どもや若者に教える仕事というのは「社会の未来を担う人材の育成に貢献できる」「自分が死んだあとも次世代に自分の知識を遺せる」という魅力がありますし、実際教職を志す人もそのへんにやりがいを感じているのでしょう。
また職場の場合「若手を育てて将来自分を補佐してくれればラクができる」という計算もあるでしょうが、自分より20歳以上年上で定年間際の人を教えてもそうした希望はありません。

年配者のみなさんは熱心ではあるのですが、その学習意欲は「目の前に食べ物があるからとりあえず食べられるだけ食べておこう」というものに近く、その知識を使って次世代を助ける、という意識は希薄であるようです。

私自身、自分が若くて何もわからず困っていたとき、上の世代は助けてくれませんでした。
私に役立つ知識を分けてくれたのは、同世代の人たちでした。
今となっては、私が教えてほしいと思うのは、むしろ年下の人たちです。

年配者に対しても、頼りにされているならできるだけ期待に応えたい気持ちもあるのですが、一方で「自分が若い時助けてくれなかった世代に自分が苦労して独学で得た知識に無料でたかられる」というモヤモヤも感じます。

ネットを見ている限りでは、図書館司書を志す若者はそれなりの数存在している印象ですが、全国の図書館で未経験の若者を長期雇用して一人前の司書に育てているところはほとんどありません。

私も将来年を取って、年下の人に知識をたかるようになり、そのころには私の知識など大して必要とされず、相手には「困っていたときに助けてくれなかったくせに」と思われるようになるのでは、と恐れています。



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