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【小説】おいしいものを、すこしだけ 第9話

 卒業してから最初にサッちゃんと会ったとき「じつは今ジロとつきあっている」と打ち明けると、ほらやっぱり、という顔をされた。
「どうせいつかそうなると思った。ジロは最初から日向子が好きだったからね」
「そうかな」悪い気はしない。
「いつから?」
「卒業式のすこし前」
「ジロから告白されたの」
「うん、まあ」
 サッちゃんは詳しい経緯を根掘り葉掘り聞きたがったけれど、私は断固としてそれ以上は口を割らず、後はお互いの仕事やほかの同級生の近況を報告して別れた。

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1,538字

現役図書館司書が書いた、図書館司書の登場する小説です。 (全20回連載予定)

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