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部活動の地域移行でソフトテニスはどうなる?

弁護士ソフトテニス愛好家のふくもとです。

部活動の地域移行というワードを聞いたことがありますか?
現在、政府の主導により、中学校の部活動が、転換点を迎えています

私も、中学校の部活動でソフトテニスと出会った者の一人であるため、その動向に注目しています。

今回は、「部活動の地域移行でソフトテニスはどうなる?」というタイトルで、政府が進める「部活動の地域移行」について、概要を紹介したいと思います。

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1 部活動の地域移行とは?

(1) 部活動の地域移行について

部活動の地域移行とは、政府による公立中学校の部活動改革の取組みの一環です。
特に運動部については、中学校の管理下にある運動部活動について、地域のスポーツクラブや、民間のスポーツ教室などに委ねようとする取組みを指しています。
(この記事では、以下、「部活動の地域移行」という文言は、運動部活動の地域移行を意味するものとして使用します。)

今年に入ってからは、文部科学省の外局であるスポーツ庁等において提言が取りまとめられるなど、部活動の地域移行の実現に向けた動きは加速しています

(2) 部活動の地域移行の背景

部活動の地域移行という取組みには、近年問題視されている、中学校生徒数の減少教師の業務負担の増加などといった状況が、背景として存在します。
中学校の部活動は、特に持続可能性という面でその厳しさを増しているという現実があります。

部活動の地域移行には、実現に向けた課題も多くあると言われています。
しかし、日本全体としても、少子化の進行、働き方改革といった問題に直面しており、これらに喫緊の対応が必要とされていることから、この流れは、不可逆的な流れであるだろうと思われます。

(3) ソフトテニスへの影響

中学校の部活動の中でも、ソフトテニス部は、所属する生徒数が最も多い部活動の一つです((公財)日本中学校体育連盟「令和3年度 加盟校・加盟生徒数調査集計表」)。

部活動の地域移行によってソフトテニスというスポーツが受ける影響も大きいことが予想されます。

ぜひこの記事を読んでいただき、ソフトテニスに関わる方々に、部活動の地域移行という取組みに関心を持っていただければと思います。

2 スポーツ庁による提言

(1) 2022年6月の提言

部活動の地域移行に主導的な役割を果たしているのが、文部科学省の外局であるスポーツ庁です。
スポーツ庁では、以前より、部活動の在り方についての議論が積み重ねられてきました。
そして、2022年6月に、「運動部活動の地域移行に関する検討会議提言」という提言が取りまとめられています。

スポーツ庁: 運動部活動の地域移行に関する検討会議提言について

この提言には、現代の部活動の意義・課題や、中学生がどのようにスポーツに関わるべきかといった考え方、部活動の地域移行という改革の方向性、改革実現の課題への対応といった内容が記載されています。

(2) 提言の中身 ー先行事例や目標時期などー

提言の参考資料には地域移行の先行事例が紹介されています。
これによると、運営主体としては地域スポーツクラブが担っている例が多いようです。
他には、教育委員会が運営主体となって、社会人(実業団選手・元選手)が指導を行っている例などもあるようです。
競技種目については、ソフトテニスを実施している事例もあれば、ない事例もあるようです。

それでは、政府は、いつまでにどのような形で部活動の地域移行を実現しようとしているのでしょうか。
提言では、まずは、休日の部活動から段階的に地域移行していくことを基本とするという方向性が示されており、休日の部活動の地域移行に向けた改革集中期間として、2023年度から、3年後の2025年度末を目途とされています。

ソフトテニスについても、この先数年において、スポーツ庁が主導する部活動の地域移行の流れにどのように乗っていくかが、競技の発展において重要となってくる可能性があります。

3 経済産業省による提言

(1) 2022年9月の提言

部活動の地域移行については、スポーツ産業の所管と振興を担う立場にある経済産業省においても、日本における「サービス業としての地域スポーツクラブ」の可能性や、ジュニア世代のスポーツ基盤の「学校部活動」の持続可能性問題といった観点から、検討がなされています。
そして、2022年9月には、「『未来のブカツ』ビジョン」という提言が取りまとめられています。

経済産業省:
「未来のブカツ」ビジョンを取りまとめました
−地域×スポーツクラブ産業研究会 最終提言−

(2) 提言の中身 ー取組み例や課題などー

この提言においては、「未来のブカツ」FS事業における取組み例が紹介されています。
同事業においては、部活動の地域移行の受け皿として、①プロスポーツクラブ活用、②市の外郭団体主導、③地域スポーツクラブ活用、④大学連携、⑤新団体設立、またはそれらの組み合わせなどが挙がったようです。

また、提言では、実務的な課題や組織文化的な課題に対する指摘が取り上げられています。
実務的な課題では、現状として、収益性が低く不採算であり持続可能性がないことや、全学校・全競技の地域移行を受け入れられるような受け皿が存在しないこと等が指摘されています。

ソフトテニスについても、部活動の地域移行を実現しようとする際の現実的な問題として、受け皿をどこまで用意できるか、そして、その受け皿が収益性等の観点から持続可能であるかが問題となる可能性があります。

4 部活動の地域移行の課題

部活動の地域移行における課題については、先に紹介したスポーツ庁の提言においても、経済産業省の提言においても、指導者の質や量の確保活動を実施する施設の確保大会の在り方会費の在り方といった課題が挙げられています。

法的な面からみた場合にも、例えば以下のような課題が挙げられると思います。

(1) 事故、不祥事などがあった時の責任

部活動の地域移行によって、外部の団体が生徒の指導に当たる場合には、以下のような事故や不祥事が発生する可能性が生じます。

  • 競技中に身体や用具が接触することによる事故

  • 激しい練習による熱中症や怪我

  • パワハラ・セクハラといった指導者による不適切な指導

  • お金が絡むことに起因するスポーツクラブ等による不祥事

これらについて、部活動の地域移行によって、誰が責任を負うことになるのかが不明確になるおそれがあります。
また、責任の所在が明確になったとしても、適切に損害が賠償されるのかという問題もあります。

そして、そもそもこのような事故や不祥事を防止するために、指導者や、スポーツクラブ等において、ガバナンス・コンプライアンス面の意識を向上させることが重要です。

これらの課題の解決には、生徒、指導者、スポーツクラブにおいて保険を活用することなどが考えられます。
また、場合によっては、研修の受講や、資格の取得の義務づけなどの取組みの必要となるかもしれません。

(2) 持続可能性を確保するための施策

部活動の地域移行を実現しようとする際には、収益性の観点などから、持続可能性の問題も考える必要があります。
その場合、お金が発生する場面に応じ、以下のような問題について検討する必要が生じます。

  • スポーツクラブ等がどのような内容のサービスを中学生に提供するのか

  • スポーツクラブ等がどのような内容で指導者を雇用又は業務委託するのか

  • スポーツクラブ等で指導を希望する者が副業で指導に従事したいと考える場合には本業とどのように調整するのか

このような問題には、お金にまつわるトラブルを未然に防ぐために、それぞれの間において「契約」で明確な取決めをしておくなどの対策が必要となる可能性が生じます。

なお、この記事の本題には少し外れますが、ソフトテニスについても、最近はスクールなどが増えてきている印象です。
部活動の地域移行について、その役割を担うかどうかは別としても、(1)、(2)で指摘したような課題については、共通であるように思います。

5 最後に

部活動の地域移行は、検討すべき課題も多く、実現の可能性や方向性に不透明な部分もないとはいえないと思います。
しかし、昨今の日本が直面している少子化、働き方改革という課題からして、大きな方向性として、将来部活動の地域移行という流れが進んでいくことは、ほぼ間違いないと思います。

ソフトテニスというスポーツの将来を考える上でも、注目に値する動きではないかと思い、今回記事にして取り上げました。

ご参考になれば幸いです。

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