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懸賞は10万円が上限!?景品表示法をチェックしよう~銀行の「マーケティング」と「営業企画」の教科書~

今日は、入社2年目の花咲さんと景品について学んでいきましょう!
今田美桜さん似の花咲さん・・・OJTのモチベーションあがるー(失礼)

花咲:「尼田さん、今年の『新生活キャンペーン』の景品ってご覧になりました?1等は長崎旅行らしいです。」
尼田:「西九州新幹線も話題になってるし、悪くはないんじゃない?」
花咲:「もっと大胆に、海外旅行とか、現金100万円とかにできないのでしょうか・・・?」

みなさんも、こんな疑問を感じたことではないですか?
実は、懸賞の景品は、法律で上限額が決められています。
その額は10万円。
銀行の場合は、それ以外にも様々な留意点があります。今日は、景品の制限について基本的な事項を学んでいきましょう。


そもそも景品って何?

花咲:「えー!知りませんでした」
尼田:「でも、知らなかったじゃすまされないんだ。法令違反になっちゃうからね(厳しいふりをする上司)」
花咲:「すみません。勉強します・・・」
尼田:「うん、景品表示法と景品規約については、よく学んでおく必要があるね。景品規約は『全国銀行公正取引協議会』ってところが定めたルールだよ」

解説

景品選定の業務を行う際は、法令である景品表示法(「不当景品類及び不当表示防止法」)、銀行の公正競争規約である景品・表示規約(「銀行業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」)をよく理解しておくことが不可欠です。

では、まず、何が「景品」に該当するのか確認しましょう。
景品表示法では、「景品類」を次のように定義しています。

顧客を誘因するための手段として、その方法が直接的であるか間接的であるかを問わず、くじの方法によるかどうかを問わず、事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に付随して相手方に提供する物品、金銭その他経済上の利益

景品表示法 第2条の3
景品類に該当するかを判断する3要素

ちょっとアカデミックな話になってしまいましたね。
次のようなケースは景品類に該当しないことになります

  • 事前に告知を行わず、取引した人に粗品を渡す(顧客を誘因していない)

  • 通行人に無作為にティッシュペーパーを配る(取引に付随していない)

  • 顧客を紹介してくれた人への謝礼を渡す(取引がある人に限定する場合を除く)

  • アンケート回答者への謝礼を送る

一般懸賞と総付景品の違いは?

難しい言葉がたくさん出てきますが、一般懸賞とは「抽選で〇名様プレゼント!」ってやつで、総付景品とは「ご契約者さま、全員にプレゼント」ってやつです。

余談①:一般懸賞と総付景品はどちらが効果的?

花咲:「一般懸賞と総付景品って、どっちが効果的ですか?」
尼田:「いい質問だ!実は、銀行の場合、一般懸賞にほとんど効果はない。懸賞やっているから商品を申し込んだって話は聞いたことないし、実際にアンケートとっても、ほとんどのお客さまは総付の方がいいって回答するよ。」
花咲:「えー!だったら、なぜ一般懸賞なんてやるんですか?」
尼田:「それには2つ理由があるんだ。1つ目は銀行窓口での案内のしやすさ。『今ならキャンペーンやってますから、この機会にいかがですか?』って声をかけやすくなる。2つ目は、後で説明する総付の上限金額。商品によっては上限金額が低くて、『しょぼっ』ってなっちゃうから、キャンペーン感を出すために懸賞をセットでやったりする。いずれにせよ、懸賞をやったからと言って、直接売上げにはつながらないことはよく覚えておいて!」

余談②:「世界一周旅行プレゼント!」はありうる

花咲:「尼田さん、海外旅行のプレゼントはNGっておっしゃってましたけど、私、どこかで見たことあるような気がするんですよね・・・」
尼田:「それね、きっと『オープン懸賞』ってやつだよ。ときどき見かけない?『おかげさまで20周年!〇日本シティ銀行』の『〇』を埋めてくださいってクイズ。」
花咲:「あー、見たことあります。あれ、どうしてあんな簡単なクイズばかりなんでしょうね?」
尼田:「実はそこがポイントなのよ。あれ、誰でも応募できることが条件になってて、クイズの答えも簡単にわからないといけないことになってる。この場合は景品にならないから、何でもプレゼントできるわけ。」

一般懸賞の上限金額は?

さて、本題に戻りましょう。一般懸賞で注意しないといけないのは、景品類の最高額と総額の2点です。
具体的には次の通りです。

①最高額:10万円(但し、取引価格が5,000円未満の場合、その20倍)
②総 額:懸賞に係る売上予定総額の2%

景品表示法による一般懸賞の制限

注意①!預金のキャンペーンは、最高額を10万円にできない

例えば、「定期預金を10万円以上お預入れの方へ、抽選で〇〇プレゼント」というケース。実は、景品に対して税金がかかります(租税特別措置法)。銀行が納税を行うのですが、この金額をあわせて10万円以内に設定する必要があるのです。
20.315%が源泉分離課税されるため、実質的には約8万円が景品の上限になります。納税の手続きも忘れないでくださいね!

注意②!「売上予定総額」は目標ではダメ

「売上予定総額」は、客観的にみて合理的なものでなければならないとされています。従って、単に目標金額を売上予定総額とすることはできません。過去に同様のキャンペーンを実施していれば、その実績等を根拠に算出することが望ましいですが、はじめて実施するキャンペーンの場合は、保守的に見積もりを行いましょう。
当初の見積もりが合理的と判断されれば、仮にその金額に届かなかったとしても、問題にはなりません。

総付景品の上限金額は?

総付景品の限度額は次の通りです。

①取引価格が1,000円未満の場合:200円
②取引価格が1,000円以上の場合:取引価格の2/10
③取引価格が確定しない場合:200円※
※取引を条件とするが、取引金額の多少を問わないで景品類を提供する場合、銀行業では「1回につき1,500円まで」可能

景品表示法による総付景品の制限

例えば、来店者すべてに景品を提供するような場合は、200円が上限となります。また、新規口座やクレジットカードの申込み等は、上記の「※」に該当するため、1,500円が上限となります。

もしも、新規口座開設者に2,000円の景品を贈呈したい場合は、預金残高等を条件に追加するなどの工夫が必要です。

「取引価格」に注意しよう!

景品の上限額算定の基準となる「取引価格」は、一般的には「商品・サービスの対価として事業者に支払う代金」そのものですが、銀行はモノを売っているわけではありませんので、考え方がやや特殊になります。

①「預金」の場合

定期預金は「預入元本」、普通預金等は「平均残高」「最終残高」「日中残高(入金があった場合、その日の最高残高)」、積立型の預金は「積立金額」「目標額」を取引価格にできます。

②「投資信託」の場合

日本証券業協会が「広告等に関する指針」で規定しており、「受渡金額」が取引価格となります。
積立投信やNISAのキャンペーンを実施するときは、この指針に従う必要があります。銀行のルールとあわせて、証券のルールも確認しましょう。

https://www.jsda.or.jp/shijyo/seido/jishukisei/web-handbook/103_koukoku/files/240201_koukokushishin.pdf

③「ローン」の場合 ー 重要! -

ここが一番誤解されやすいのですが、ローン等の貸出は、「利息額」となります。約定後は、約定通りに返済があった(金利の変更等はなかった)と仮定して、利息の予定額を取引価格にすることができます。

④送金その他取引

基本的には、「手数料額」が取引価格になります。

おわりに

景品は、ここに書ききれないくらい奥が深いです。できれば全国銀行公正取引委員会が出している「景品・表示規約ハンドブック」を一読しておくことをおすすめします。
また、実際の景品に関する業務を行うにあたっては、「銀行の景品・表示規約集」も、あわせて参照してください。

全国銀行公正取引委員会のホームページには、様々な事例がQ&A方式でまとめられています。こちらも大変参考になりますので、疑問があるときはぜひ活用しましょう。

景品に関する業務は、ミスが許されない業務の一つ。事前にコンプラ部門や広報部門としっかり連携してください。

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