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ふくしをひらく糸口をさがして|大山健太|2023-24 essay 09 【小松ゼミ・フィールドワーク編】

所属や分野・領域の垣根を超えて多様な人たちが集まり、対話し、実践的に学び合う「ふくしデザインゼミ」。2度目となる今年は、28名の学生と若手社会人が、東京八王子、伊豆大島、滋賀高島、長崎諫早の4地域をフィールドに「福祉をひらくアイディア」を考えてきました。正解のない世界を漂流する2ヶ月のプロセスのなかで、若者たちは何を感じ、何を思うのか。

正解のない世界を漂流する2ヶ月のプロセスのなかで、若者たちは何を感じ、何を思うのか。このエッセイでは、ゼミ生一人ひとりの視点から、ふくしデザインゼミを記録します。essay 07からは、フィールドワークのお話です。

はじめまして!大山健太と申します。
ふだんは大学で広告を学んでいます。

このエッセイでは、福祉とはあまり関係ないことを学んでいる私が、「ふくし」について思ったこと、福祉の外の人がどうやったら福祉に関われるのか考えたことを、言葉にしました。少しでも読んでいただけると嬉しいです。


0日目|福祉の話を聞きに行く

フィールドワークの前々日から、小松ゼミは動き出した。

その日の午前中は八王子駅周辺を散策した。
八王子に住んで2年。大学に入るまで「八王子」という名前しか知らなかった私は、今ではちょっとした八王子マスターになりつつあった。

と言いたいところだが、そんなこともなかった。障害のある人がデザイナーとなって八王子に彩りを加える「想造楽工」、食によって八王子のコミュニティーづくりに貢献する「100円ラーメン」の取り組み、自分の知らない八王子がそこにはあった。

八王子100円ラーメン(八王子ラーメンは、玉ねぎが特徴)

午後は「子どもたちを一人ぼっちにさせない大作戦会議!」に参加。正直、話の内容がよく分からなかった。難しくて、頭のなかに、はてなマークがたくさん立っていた。勉強不足を痛感した。「私みたいな福祉にまったく触れてこなかった人は、この話を理解できるんだろうか」と考えさせられた。

会議の最後の方に、八王子市の副市長がお話をしてくれた。その冒頭は、自分には夫がいないので、兄弟が亡くなったら孤独になるという内容だった。

それを聞いた時、私はハッとした。私は一人っ子なので、結婚をしなかった場合、親が亡くなったら、ずっと孤独なのである。今まであまり考えてこなかった孤独が、音を立てて私に近づいてきた。こんなに孤独を自分ごととして考えたことはなかった。

「難しい」と感じたことについては理解に抵抗があるけれど、「自分も当てはまる」と感じた瞬間に、いろいろなことが頭の中にスッと入ってくる。自分にとってデメリットなことが起こりそうなときは、なおさら。

じゃあ自分は、デメリット(例えば、孤独になってしまったなど)がトリガーになることでしか、「ふくし」のことを考えられないのか?その考え方が、「ふくし」を閉ざしてしまうのか?この日は頭がモヤモヤだらけだった。

1日目|福祉の現場に滞在する

フィールドワーク当日、メインイベントである、八王子福祉作業所での滞在がはじまった。福祉作業所に入るのは初めてだった。とても緊張した。作業所の方々とうまくコミュニケーションが取れるかとても心配だった。

そんな気持ちのなか、施設の方の説明を聞いて、小松ゼミのテーマ(仮)である「ただ、いる」を実践してみようとした。朝10時ごろから16時ごろまで、職員さんや利用者の方と話してもいい、見守っていてもいい、なにもしなくてもいい、という時間を過ごさせてもらった。

無理だ。

ただ、いれていないことに気が付く。その場にいる人に頑張って、話しかけていた。ほかのメンバーはすんなりその空間に溶け込んでいる気がして、私はなぜか焦りを感じてしまった。そうこうしているうちに時間は過ぎていった。

「ただ、いる」ことができない自分に気づく

ただ、ボーっと作業所の中を歩いていると、声をかけてくれる方がいた。その方は、必死に自分の好きなゲームや鉄道の話をしてくれた。とても嬉しかった。その方の目はとても輝いているように見え、自分がどこかで忘れていたような、純粋さや無邪気さを感じた。自分のコミュニケーションの取り方をもう一度見直すようなきっかけになった。

2日目|福祉をひらくことを考える

フィールドワーク最終日は、3月3日の「ふくしをひらくアイディアを考える」プレゼン発表に向けて話し合う時間をつくった。みんな、八王子福祉作業所でのことを踏まえて、色々なことを感じていたと思う。それぞれの意見を尊重したいと思った反面、これをどう発表に持っていくのかが難しいと感じた。

「ふくし」と少しでも関われるようになるためには、どういったことが必要なのか?何も決まらないまま、頭の中でいろいろなアプローチを考える。しんどくなってくる。自分は福祉をメインで学んでない人間だが、何かしらの興味を持ってこのゼミに参加した。誰でも、ではないにしろ、自分みたいにどこかの糸口で興味を持ってくれる人はいるはず、とも思った。

モヤモヤを言語化してみる

モヤモヤはつのるばかり。最適解なんてものはない。いや、最適解をつくろうとすること自体があまり良いことではないのかも。

福祉にあまり関わらない人をどう巻き込むか。それを考える思考の過程が大事なのではなかろうか。

|このエッセイを書いたのは|

大山 健太(おおやま けんた)
法政大学社会学部メディア社会学科2年

お知らせ ~公開プレゼンを開催します!~

3月3日(日)には、正解のない世界を漂流した2ヶ月のプロセス、そしてアウトプットを共有し、みなさんとともに思考と対話を深める、公開プレゼンテーション〈「ふくしをひらく」をひらく〉を開催します!
エッセイを綴るゼミ生たちがみなさんをお待ちしています。ぜひご参加ください!

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