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男のコンプレックス Vol.21「やっかみ男子の嫉妬心」

【注記】
これは、マガジンハウス「POPEYE」2010年2月号〜2012年5月号に連載していたコラムの再録です。文中に出てくる情報や固有名詞はすべて連載当時のものです。現在では男尊女卑や女性蔑視、ジェンダーバイアスに当たる表現もあり、私自身の考えも当時から変化している点が多々ありますが、本文は当時のまま掲載し、文末に2023年現在の寸評を追記しました。

おもろうてやがて悲しきは、
男のジェラシーや!

「ソネミでーす!」

「ネタミでーす!」

「2人合わせて“嫉妬心”でーす!」

「うちら姉妹ですけど、キャラかぶりすぎちゃうかってよう言われるね」

「“エーデルワイス”と“へーベルハウス”くらい似てますからね」

「似てるの響きだけやん! よく見ると全然違うんですよー。『勝間和代の生き方って、前のめりにがっつきすぎで正直マネしたないわぁ』いうのがソネミ。『金麦のCMの壇れいって、男に媚びてぬくぬく専業主婦に収まった女に見えていけ好かないわぁ』いうのがネタミ。覚えて帰ってくださいねー」

「しかし何がアカンって、男のジェラシーほど見苦しいもんはないね」

「そんなことないわ! 嫉妬もしない恋なんて、女装してないマツコ・デラックスみたいなもんやで! ほとんど伊集院光と一緒やないの」

「一緒ちゃうわ! “マラドーナ”と“カマドウマ”くらい違うわ! 嫉妬が恋のスパイスになるのは、彼女がいてる場合の話。ウチが言うてるのは、付き合うてもいない女に、勝手に妬いてウジウジしとる男のことや」

「あーそれはダサいわ。特にしょうもないのが、好きな女と男友達が仲良うしてるの見てやっかむパターン。“あのコ、アイツのギャグにだけウケてるな”とか、“彼女もどうせアソコのムケとる男が好きなんやろ?”とか思うねん」

「ほんで、“ヤツみたいに向井理似に生まれたかった”とか、“タイムスリップして童貞のお前に間違った性知識を植え付けてやりたい”とか、“恋愛やセックスのないゾウリムシの頃に戻りたい”とか、ないものねだりすんねんな」

「それって結局、恋ちゃうわ。自分がその男に引け目感じとるだけ。そんなん、ソネミでもネタミでもなくて……」

「ども、はじめまして、ヒガムです」

「なんや兄さん、おったんかいな!」

「ほな聴いてください、“嫉妬心フィーチャリング・ヒガム”のニューシングル『そんな嫉妬せんでもあのコはお前の知らんとこでヤりまくっとるから心配すんなや!』です。どうぞ!」

「漫才師やなかったんかーい!」

(初出:『POPEYE』2011年10月号)

* * * * * * * * * *

【2023年の追記】

いろんな文体を模索していた時期ですね。あと、「羞恥心」が解散したのもたぶんこの時期ですね。今考えると、このネタミ、ソネミ姉さん、ヒガム兄さんのトリオによる誌上漫才のフォーマットは、もっと突き詰めればいろんな原稿に応用してひとつの「作風」にできたかもなあ…と思うと、この1回だけで終わらせてしまったのはもったいないキャラクターだったかもしれません。

「ソネミでーす!」
「ネタミでーす!」
「2人合わせて”猜疑心”でーす!」
「おい、”猜疑心”ちゃうやん、”嫉妬心”やがな!」
「似たようなもんちゃいますの?」
「全然違うわ! ”コンテンポラリー”と”のんべんだらり”くらい違うわ」
「ほんまや、よう見たら”がらんどう”と”ギャランドゥ”くらい違うわなあ」
「ええかソネミ姉さん、『プチプラコーデでバズったインフルエンサーが、売れてハイブランドの服を着始めるのどうなん?』いうてるのが嫉妬心、『愛してるって最近言わなくなったのは本当にあなたを愛し始めたからなわけあるか? 飽きただけちゃう?』いうてるのが猜疑心ですわ。皆さんも、違いだけでも覚えて帰ってくださいねー」
「せやけどネタミ、SNSで嫉妬が隠せないヤツほど恥ずいもんないな」
「醍醐味やん! 嫉妬のないTwitterなんて、映画を撮らない岩井俊二みたいなもんやわ。ほぼ吉岡秀隆やないか、そんなもん」
「全然ちゃうわ! しながわ水族館とアクアパーク品川くらい違うわ!」
「おい、早よ呼べや!」
「ヒガム兄さん! おったん?」
「裏で待っとったわ! 待ちくたびれて、『可愛くてごめん」とか『あなたが思うより健康です』とかわざわざ相手に言わないと保ってられない自尊心ってそれ大丈夫? って余計な心配してもうたわ!」

……みたいなね。

読む漫才、またどこかで書きたいと思います。

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