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『&Premium カルチャーのあるカフェ』『珈琲いかがでしょう』〜食の本紹介〜

近所にできた「みんなでつくる本とアートの実験室」ラムリアにて、シェア本棚を借りています。食関係の本を集めようと決めて、100冊の本を紹介することをとりあえずのゴールに設定しました。今回は軽く読める2冊を紹介します。

6.『&Premium』カルチャーのあるカフェ(2016年10月号)


無料の「差し上げます」コーナーから拾ってきたんだか、買ったんだか。

手元にきたときからずっと大切にしている。いつめくっても幸せな気持ちにさせてくれるから。

巻頭は写真たっぷり。黒磯の「1988 CAFE SHOZO」と奈良の「くるみの木」。

その次の「47都道府県カフェマニアが選ぶカルチャーのあるカフェ134軒」特集がたまらなく好き。

オススメカフェが北海道から沖縄まで紹介されている。紹介されたカフェを目指して出歩いて、ただいま134軒中、22軒。

中でも忘れられないのは、福島の猪苗代湖のほとりにある「タロ・カフェ」。

車で到着したら、青い空に山頂の白い磐梯山がばーんと鎮座している。

カフェの脇の広場には、桜があって、桃色の花びらが風に舞っている。湖のほとりに低木がずらっと生えている。

日本ではないみたい。行ったこともないのにイギリスの田舎みたいだと思う。山に桜、といかにも日本的な風景のはずなのになぜだろう。

風景がずっと遠くに連れていってくれて、別の物語と繋がっているような気がする。

運転手だった人も私も疲れて車の中ではイライラしていたけれど、この風景のすばらしさに一気にご機嫌になった。

桜の脇に立っている、白い可愛らしいカフェのウッドデッキで、私はオレンジのケーキを頼んだ。


もう一つ、福岡の「パッパライライ」というカフェも忘れがたい。

エントランスは狭くて蔦のような緑があった。中に入ると、木の温もりがある天井の高い広い空間だった。

席があいていなかったので、中二階のバルコニーにてしばらく待った。

ナイフやフォークがかちゃかちゃと当たる音やお客さんの話し声や笑い声が聞こえてくる。それがなんともとても心地よい。

音がカフェの天井に上がっていって空に溶けていく。シャボン玉みたいに。あの音を聞いているだけで幸せだった。

席に通されて手渡されたメニュー表はダンボールのような紙ペラ一枚。それがさりげなく、そっけないのにとてもお洒落だ。

他の人が食べていたいかにもおいしそうなランチセットは食べそこね、コーヒーと軽いサンドイッチになったが、来てよかった。特別な場所だとわかったから。

人が背負った重たさがおいしいものを食べて、ふわっと軽いものに変わる。そういう祝福の時間と空間。

それを実現している「カフェの一つの理想型」。やっている人たちはなんてセンスがよいのだろう。

この雑誌で紹介されている店はほとんどハズレがない。いろんなカフェの空気を肌で感じてみたいと、繰り返し旅へと誘われる。

7.『珈琲いかがでしょう』コナリミサト


近所のカフェに置いてあって、普段はマンガはあまり読まない分、新鮮で面白かった。

たこのマークが目印のキッチンカー、たこ珈琲はお客さんが来てから豆をひきハンドドリップで珈琲を入れる。

時間がかかって嫌がる人もいるけれど、時間と手間の分、出会いが濃い。

たこ珈琲にやってくる人たちは、みな、疲れていたり、壊れていたり。

何も起こらない繰り返しの日々に死にたくなっているおばさんや、付き合う男に支配されまくっているガリガリの神経衰弱ぎみの女。才能のなさに絶望してやがて人をさげすみ貶めていく元アーティスト志望。

病んでいる人たちのオンパレード。血色悪い顔に突飛な行動。こういう描写はマンガの方が迫力があるし、なんか、すごく現代的。。

王子のような笑顔のたこ珈琲の青山さんは、カウンセラーのごとく、オーダーメイドの珈琲で心に寄り添う。

でも、そんな青山さんにも裏の顔がある。いつも逃げているようだ。今からは想像できない過去があるみたいだ。

下巻は、そんな秘密や、たこ珈琲の名前の由来がどんどん明らかになっていく。

最後の「ポップに生きる」。そのセリフに感動した。

人は弱い。傷ついて傷つけて勘違いする。でも同時に、そこから回復したりやり直したりする強さも持っている。弱さは強さにかわる。

そんな切り替えのスイッチは、意外と近いところに転がっているのかもしれない。街でたこ珈琲のキッチンカーに出会うみたいに、あたりまえに、偶然に。

・出会った場所:Me&you coffee @横浜市鶴見区

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