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トランスジェンダーの性別変更、手術規定は必要?不要?

トランスジェンダーの方々が戸籍上の性別を変更する際、性適合手術が必要とするのは憲法違反かそうでないかという家事審判で、9月27日に大きな動きがあるようです。

この弁論で双方の意見を直接聞いたうえで、年内には、上記が違憲か合憲かの判断を下すのだそう。

■『性同一性障害特例法』とは

『性同一性障害特例法』とは、正しくを『性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律』と言い、性同一性障害者、いわゆるトランスジェンダーに関する法令上の性別の取り扱いについての特例のことを記しています。

この法律によると、第三条四項にて、下記のように記されています。

(性別の取扱いの変更の審判)
第三条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
(中略)
四 生殖腺せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
(後略)

この第三条四項が、憲法に反していると原告側は主張しています。

2021年にはこの法律第三条三項の『現に未成年の子がいないこと』が憲法に反するとしての裁判が行われましたが、「憲法に違反しない」と判断されました。


■インターセックスの方の場合は?

いわゆる『インターセックス』と呼ばれる、生まれつき男性女性両方の性器があるなどの、染色体や内外性器に異常がみられる性分化疾患の方については、性適合施術なしに性別変更することが可能です。

インターセックスはトランスジェンダーと違い、医学による客観的な判断がつけやすいというのもあり、比較的容易になるのだと想像できます。

■命がけの手術

「女性に/男性になりたいのだから手術もしたらいいじゃない」という意見もあるようですが、当然、性適合手術には大きなリスクが伴います。

術中はもちろんのこと、術後のケアも痛みを伴ったりするようで、また、手術をすることでその後の寿命が短くなる確率も高いのだとか。

流石に今では、命を落とす確率はそれほど高くはないようですが、それでも、自分の自覚している性別にするのに大きなリスクをかけなければならないのが事実です。

■もし手術せずとも性別を変えられたら…

一方で、手術をしなくても性別を変更できた場合、どういったデメリットが考えられるでしょうか?

まず、私達が一般的に使用する『男性/女性』が、戸籍上の話なのか生物学上の話なのかをはっきりと定義づける必要があります。
お店などでの『レディースデー』や『レディースセット』、お風呂や更衣室の男性/女性、女性専用車、等。
その定義付けがされたとして、
「生物学上男性(女性)ではないから…」
という理由で断るなどがあった場合、手術なしで戸籍変更された方はそれが理由で、つらい思いをされる可能性があります。
また、その理由自体が差別か否かという論争も生まれるでしょう。

また、銭湯などで「生物学上の男性か女性か」の確認を行うのに対し、今までは身分証の確認を行っていたのが、裸になって確認するということになるのでしょうか?それは人権侵害の点も含め、現実的ではありませんね。

もし、すべて戸籍上のみを正とする場合、

現在よく論争されている『ジェンダーレストイレ』について、反対派の方の意見の多くは、
「体が男性の人が(風呂やトイレに)入ってくるのが怖い」
という意見です。
これが、手術なしの性別変更も可能になればより深刻化するかもしれません。

「体が男性の人が入ってくるのが怖い」
に関しては、女性だけではなく、トランス男性にもあてはまります。
東野圭吾さんの著書『片思い(文春文庫)』では、トランス男性の告白をもとに物語は進みます。
その中で、恐ろしい未遂事件の被害者になりかけますが、その時に、彼は、事件としての恐ろしさとともに自分の体が女性であることを突きつけられる恐ろしさにも向き合うことになります。
(詳細はネタバレになるので、本を読んでください)

体が女性の人にとっては、社会的な問題であるとともに、自身が犯罪に巻き込まれる可能性も考えてしまいます。
それを前提にしたうえで、医学・科学を踏まえ丁寧な説明を行い、誤解を解いていくことと、明確な線引きが必要になります。

■終わりに

上記の両者の例にとっただけでも、どちらが正しいとは言えません。
9月27日の弁論と、年内の裁判所の判断を私たちも注目すべきです。



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