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自分が外国人になって思うことーイギリスでの生活ー

先日、ロンドンで大学院生活を送る日本人3人と食事する機会があった。

「大学院卒業したら、イギリスに残って働いてみたいですか?」

なんとなく、世間話の中で出た質問だった。

「…イギリスからは、正直、早く出たいですね。」

全員一致で、この答え。意外な答えが返ってきて、驚いた。
イギリスはヨーロッパの中でドイツに次いでGDPランキング2位(世界5位)。なんとかイギリスに残って仕事を得たいと考えている外国人学生も多い。

「ロンドンでは、自分が外国人だと常に感じて、外国人にunwelcomeな雰囲気です。」

続けて、そう返ってきた。3人とも、ロンドンの生活で自分が外国人だということを意識させられるような出来事があったり、一人はあからさまな差別を受けたと教えてくれた。私には、衝撃的な答えだった。

私は普段、イギリス イングランド北部ブラッドフォードに住んでいる。ブラッドフォードは別名「リトルパキスタン」、「カレーの街」と呼ばれ、1950年代から流入した南アジアからの移民が経済を支えてきた移民の街だ。
不思議なことに、私はここで自分がマイノリティだと感じたことがなかった。街にいて自分のクラスメート以外の日本人と出会うことはないし日本語も通じないが、現在はアフリカ系の移民や難民も多く受け入れている街で、正直皆が外国人なような気がする。そんな中で、自分が外国人だから別に扱われたり、差別されたと感じたことは一度もなかった。
白人のイギリス人と外国人のカップルや、ミックスの家族も珍しくない。
正直、私はこの街での生活を気に入っていた。

ロンドンは世界的な大都市だ。もちろん外国人は溢れかえっている。それなのに、こんなに多様性にあふれた街で、外国人というだけで肩身の狭い思いをしている友人がいるなんて、と悲しくなった。

昔、私がアメリカ留学をしていた頃、自分は外国人で、東アジア人なんだと常に強く感じていた。フロリダ州に住んでいて、ラテンアメリカからの移民の街だったが、アジア人はほとんどおらず、英語が拙いと周りからバカにされているような気がした。見下されているような気がして、見知らぬアメリカ人としゃべるのが苦痛だった。(実際、そんなことなかったかもしれないが、当時20歳と若かったのもあってか今よりもっと繊細だったかも?)
正直アメリカの生活は自分を何倍も成長させてくれたが、常に自分が ''You don't belong here.''と言われているような環境で過ごす1年は、辛かった。

その経験もあって、私のイギリスでの生活はかなり精神的に楽だ。大学も留学生が大半で、みんな互いを尊重し合っている。多文化にとても理解のある学校だと思う。地元コミュニティのボランティアにも参加しているが、私が出会った白人のイギリス人の方々は助け合い精神にあふれ、愛のある方ばかりだ。

首都だから、人がたくさんいる分、いろんな考えがあるのは理解できる。表現の自由もある。だだ、このグローバル社会の中で、他者を排除する動きはとても悲しい。先日、イギリスはEUを離脱した。世界が目まぐるしく変化する中、まずは自分の国を守ろうとすることは当然のことだと思う。ただ、私たちはもう世界と切っても切り離せない環境に生きている。目の前の外国人に無礼にふるまうことが、自分の利益には繋がらない。もちろん、ロンドンの全員が外国人を差別していると言いたいわけじゃない。ただ、そういう体験をすると疑心暗鬼にもなるし、辛い体験は記憶に残りやすい。

日本では、どうだろうか。英語が通じづらい環境ではあるが、外国人の人たちが気持ちよく生活できているだろうか。孤立していないだろうか。周りの日本人たちは気持ちよく対応してくれているだろうか。困っていたら周囲は手を差し伸べてくれるだろうか。知らず知らずのうちに、彼らを傷つけていないだろうか。

外国人がその国で何をどう感じるか、それは外国人になってみないとわからない。この、ロンドンで日本人の友達が感じていることをイギリス人の友人に話したら、彼女はショックを受けていた。自分の国でも、他者にならなければ気付かないこともある。

外国人が増え続ける日本で、もう彼らの人手なしでは社会は回らなくなっている。私たちの生活を支えてくれる彼らに対して、どうか優しい社会であってほしい。ただ、大事な労働力だから大切にしようというのではなくて、どんな人にも優しい社会だったらいいなと思う。そしてこう願うだけでなく、何かできる人になりたいと強く思っている。

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