アルゼンチンに見た効果的なブロック守備
2022 ワールドカップ 準決勝
アルゼンチン vs クロアチア
今回は、2022カタールワールドカップでのアルゼンチンの守備について紹介します。
今大会のアルゼンチンの強みは、効果的な守備からのメッシ・アルバレス・ディ マリア等を基準点としたカウンターでした。そして、その守備は大会出場国のなかでもトップレベルであったと思います。
そんなアルゼンチンの守備について、今回は自陣ブロック守備の局面での、サイドと中央(ライン間)のエリアで効果的だったシーンを分析しました。
【システム】
アルゼンチン
クロアチア
結果 : アルゼンチン 3 - 0 クロアチア
アルゼンチンの
自陣でのブロック守備
① 陣形
アルゼンチンは自陣でのブロック守備時、下図のようにコンパクトな「4-4」あるいは「4-4-2」のブロックを形成していた。
また、後半には陣形を変え「5-3-2」のブロックを形成していた。
ここで、ブロックの縦幅(DFとMFのライン間)は約5~10mであった。また、ブロックの横幅は非常にコンパクトに設定され、ペナルティエリアの幅ほどかそれよりも狭くし、中央のエリアをプロテクトしていた。
② 基準点
守備の基準点としては、ボールと味方の位置を優先として陣形を保ち、その中で自らのゾーン(レーン)にボールホルダーがいる場合は敵を基準としてボールホルダーへ寄せていた。つまり、ラインの位置関係を崩すことなく一体的に動く「ゾーンディフェンス」を行っていた。
③ サイド
サイドのエリアでは、大外のボールホルダーに対して必ず1枚が寄せ、敵のサイドからの突破を防いでいた。
具体的には、SBのタグリアフィコ(右) / モリーナ(左)が、ボールホルダーへ対して縦方向を消すように正面からアプローチしていた。また、寄せるタイミングが的確であり(パスが出た瞬間に寄せ始める)、寄せるスピードも速いためボールホルダーに圧力をかけることができていた。
そして、寄せに出たSBの斜め後方のエリアをCBのオタメンディ(右) / ロメロ(左)が必ずカバーしていた。さらに、SHのマク・アリスター(右) / デ・パウル(左)は、寄せたSBのインサイドをカバーしていた。
【右サイド】
【左サイド】
④ 中央(ライン間)
中央のエリアでは、MFとDFのライン間にボールが入ってきた場合、CBのオタメンディとロメロのどちらか近い方がボールの受け手に対し、ラインをブレイクして飛び出して寄せていた。
ここではCBのオタメンディとロメロはアンティチポを行っていた(または狙っていた)。
※アンティチポとは、パスの受け手を背後からマークし、その足下に入って来る縦パスを身体を前に入れて(あるいは足を出して)奪うプレー。
このとき、DFラインを構成する他の選手は、内に絞って飛び出したCBの背後のスペースをカバーしていた。具体的には、飛び出したCBの真後ろに入るわけではなく、自分のゾーンにいる敵にも対応できる位置関係を保って斜め後方をカバーしていた。
以上、①サイドへボールが出た際は、必ず1枚(SB)が縦方向から寄せ、同サイドのCBやSHが斜め(ディアゴナーレ)をカバーする、②中央でのライン間にボールが入った場合は必ずCBが1枚寄せ、DFラインを構成する他の選手は内に絞って飛び出したCBの背後のスペースをカバーすることにより、アルゼンチンは非常に強固なブロックを形成することができていました。これらは、自陣ブロック守備時の重要なプレー原則の一つだと言えます。
今大会のアルゼンチンは守備が非常に上手いという印象を持ちました。そしてその守備から始まるメッシ・アルバレスを中心としたカウンターは出場国一の脅威となっていました。
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