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現代のイタリアサッカーを象徴した守備とは?(イタリアに見た、プレッシングとブロック守備)

2020UEFA ネーションズリーグ 第2節
オランダ vs イタリア

~イタリアに見た、プレッシングとブロック守備~

 イタリアと言えば「守備が上手い」というイメージが強いと思います。この試合でもそのイタリアの守備の上手さが色濃く出た試合でした。
 個人的な感想として、今回の対オランダにおけるイタリアの守備はまさに現代のイタリアサッカーを象徴するものであると感じ、そしてそれは、非の打ち所がない素晴らしいものだったと思います。
 そんなイタリアを象徴する守備とはどのようなものなのか?
 今回は、イタリアの守備について「プレッシング」と「ブロック守備」の局面に分けて分析していきます。


スタメン(オランダ)

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(イタリア)

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結果 : オランダ 0 - 1 イタリア
( 前半 0 - 1、後半 0 - 0 )


イタリアの守備
(プレッシング)

 イタリアはプレッシング時、ハイプレスとミドルプレス(攻撃的プレッシングと守備的プレッシング)を使い分けていた。そのため、この2つに分けて分析する。


ハイプレス(攻撃的プレッシング)

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① 陣形
 イタリアはハイプレス(攻撃的プレッシング)を行う時、下図の様に全体でマンマークとなる。
 マンマークの仕方としては、それぞれのマーカーが対応する相手を監視するイメージ。

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② スイッチ
 プレッシングのスイッチは、相手の最終ラインからボールが配球され、攻撃的プレッシングのエリアにボールが入ってきたとき。
 このとき、前線の選手(インモービレやインシーニェ)は相手最終ラインの選手に対してパスコースを限定するように立つ。

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③ 追い込み
 追い込み方としては、まず、相手CBに対して前線のインモービレやインシーニェがパスコースを限定し、②のように相手最終ラインから前方向にパス出しされたものをスイッチにボールの受け手に対して対応するマーカーが激しくプレッシャーをかける。このとき、ボール周辺のエリアではマークの強度を高くする。
 そして、攻撃的プレッシングのエリアでは常にボールホルダーに対してプレッシャーをかけ続ける。
(試合で見られたシーン)

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 また、バックパスに対してそのまま全体を押し上げ超攻撃的プレッシングに移行することもあった。

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ミドルプレス(守備的プレッシング)

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① 陣形
 イタリアはミドルプレス(守備的プレッシング)を行う時、下図のように、ウイングのインシーニェ(左)とザニオーロ(右)がMFラインに、アンカーのジョルジーニョがライン間に下り、「4-1-4-1」となる。
 このとき、まずは中央でコンパクトになる。

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② スイッチ
 プレッシングのスイッチは、相手最終ラインからボールが配球されたとき。厳密には、「相手最終ラインからサイド(相手SB)にボールが出たとき」と「相手最終ラインから中央にボールが入ったとき」の2つをプレッシングのスイッチとしているように見えた。

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③ 追い込み方
 追い込み方として、まず「相手最終ラインからサイド(相手SB)にボールが出たとき」は、右サイドでは相手SBに対して右ウイングのザニオーロが寄せ、左サイドでは左SBのスピナッツォーラが寄せていた。
 このとき、全体がボールサイドにスライドし、ボールサイドのエリアで敵を捕まえる。

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 次に、「相手最終ラインから中央にボールが入ったとき」は、中央で受ける相手ボランチに対してインサイドMFのロカテッリあるいはバレッラが寄せていた
 ここで、相手ボランチのデ・ローンが受けたときはロカテッリが、デ・ヨングが受けたときはバレッラが寄せるというタスクが与えられていた。

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 このとき、残りのMFラインの4枚は中央に密集して横並びになり、同時に前線から下りてくる相手をマークしていた。

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イタリアの守備
(ブロック守備)

① 陣形
 イタリアは自陣でのブロック守備時、下図のような陣形となる。(数字で表すなら4-5-1)
 ブロックの縦の幅は10~15m、横の幅はペナルティエリアよりも狭くする。

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 ここで、基準点はボールと敵。つまり、基本的にはゾーンで全体をコンパクトに保ちつつ、陣形の維持よりもボールホルダーに寄せたり、ボール周辺の敵をマークすることを優先とする。

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② サイド
 サイドのエリアでは、大外に立つ相手(SB)に対してSBのスピナッツォーラ(左)、ダンブロージオ(右)が寄せる。
 このときも、マンマークとゾーンマーク(危険なエリアをカバー)を両立させる。
 また、全体をコンパクトに保ちながらボールサイドにブロックをスライドさせる。 

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 以上のような、人を基準としたハイプレス、コンパクトに構えたミドルプレス、マンマークとゾーンマークを両立させるようなブロック守備は見事でした。まさにイタリアらしい守備でした。
 特にハイプレスの局面では、オランダに自由にポゼッションによるビルドアップをさせず、ロングボールを蹴らせることが大きな狙いであったと感じました。同時にそれは、オランダの長所を削るものでありとても有効だったと思います。
 最後に、この試合からも現代のサッカーではハイプレスとミドルプレスの使い分けが非常に重要であるということを感じました。

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