「言葉と歩く日記」 多和田葉子·著
日本で、実家近くの本屋さんで手に取って、なんとなくすぐに読まずにずっと手元に置いておいた本。ドイツ語と日本語それぞれで小説を書いている多和田さんの、小説はいくつか読んだけれど、新書も出していらしたとは。「言葉と歩く日記」、それはそのまんま、1月1日から始まる、言葉についての考察を軸にした、日記なのだった。
私自身は、イタリアにいるといっても、最近はほとんど日本語で過ごす毎日で、イタリア語もかなり怪しくなっている。ドイツ語は全くわからないし、イタリア語とドイツ語でどのくらい共通点があって、どこが違うのかも知らない。さらに、言語学そのものにそれほど興味がある訳ではない。けれども、多和田さんが(少なくとも)著書上で見せる、とくに日本語との間での葛藤や戸惑いに、強く共感する。
ドイツとイタリアでは生活も似ていることもあれば違うこともある(、と思う、当然のことながら)。「それはお前の問題であって、俺には関係ない」と言う時、ドイツ語では、「それは俺のビールじゃない」、とか、「それはお前のビールだ」と言う、という記述には、思わず声を出して笑った。そこは想像できるものの、多和田さんが拠点にしているベルリンは行ったことがないし、ドイツそのものほとんど知らない。それでも、あちこち出かける先も全く知らない街の話もあれば、今の仕事から、あっと想像できることもあったり、イスタンブールの話が出てきて、あ、懐かしいな、なんて思ったり。
つかず離れず、行っては戻る、ような接点を楽しんでいたら、なんと最後はヴェネツィアなのだった。私もいくつかご縁をいただいたアルメニア教会のあるサン·ラッザロ·デッリ·アルメーニ島や、サン·ジョルジョ·マッジョーレ島、そして何度言ってもやはり大好きなトルチェッロ島。
この時にヴェネツィアで行われたはずのイベントを、もしかするとすぐ近くにいながら逃してしまったのかと思うと悔しいけれど、きっとまたどこかで、そんなチャンスがあるんじゃないかなと勝手に期待している。
図らずも、この日記が終わっている4月15日にちょうど読み終えた。
2013年の刊行と最後に改めて気がついて、驚いた。
言葉と歩く日記
多和田葉子·著
岩波新書
21 apr 2024
#イタリア #読書感想文 #ヴェネツィア #ローマ
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