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イタリアでグリーンパス導入


 猛暑が続いている。ここローマでは連日最高気温が37℃、38℃と、確かに昼間は外に出ると明らかに体温より空気が暑い。日陰や朝晩はマシとは言っても、オフィスや店舗はもちろん、もはや多くの住宅でも冷房を設置している中、室外機のためにに少なくとも街中では空気全体が暖まっていて、ひんやり涼しいというわけにはいかない。

 イタリアでは8月6日から、「グリーンパス」制度が導入された。
 「グリーンパス」は、コロナウィルス・ワクチンを接種したことを示す証明書で、スマホ上で表示するかまたは印刷するとパスポートのサイズに折り畳めるようになっている。レストラン等室内での飲食、美術館、映画館や劇場、スポーツ施設などの利用に際し、このパスもしくは48時間以内のコロナウィルス陰性証明の提示が義務となった。さらに9月1日からは飛行機、特急列車にも適用されるほか、大学や学校も全て、教員も学生も証明書が必須になる。
 6割以上の国民が既にワクチン接種済みとはいえ、さまざまな事情によりできていない人もまだまだ多い。仕事や生活に支障が出る場合もあるにもかかわらず急な決定で、反対の声もたくさん上がっていたが、ともかくこれはロックダウンを防ぐため、経済を止めないためだと、半ば強引に施行された。
 導入直後、ランチの時間に出先でふらりと立ち寄ったレストランで、空いている席があるか尋ねると、「外か、またはグリーンパスがあれば中でも」。
 違反の場合は罰則があるとはいえ、思っていた以上にきっちりと、早速導入されているのに驚いた。パスのQRコードを見せると、スマホで読み取られて確認される。専用のアプリで、氏名等が表示されるのだろう。身分証明書も合わせて求められる。もちろん特にやましいことはないし、確かに、他人のものを転用していたり不正がないか確認するためには、必要なことだと思いつつ、ただパスタ一皿を食べるために個人情報を晒すことに、やや疑問も感じる。パス自体、簡単に偽造できるようにも思えるが、同時に、個人情報を簡単に収集されることにもなっているのではないか?
 そのお店では確認したあと、「OKです。ではそちらの携帯にメッセージでメニューを送りますね」。グリーンパス情報には、(接種日や場所だけでなく)接種時に記入した電話番号も載っかっているということらしい。これだけの情報社会で、もはや個人情報など残念ながらあちこちに出回っているのだろうと思っているけれど(そういえば、このローマのあるラツィオ州では、ワクチン接種の予約システムがハッカー被害に遭う事件があった)、マスの、大量の個人情報流出とはまた異なる、今、目の前にいる他人に個人情報を開示していることに、ひやっとする。
 その後いくつか試したところ、QR情報を読み取って(身分証明書なしで)OK、というお店もあれば、QRをちらっと見せるだけのお店も、また全く聞かれなかったお店もあった。中には、グリーンパス反対派、うちは提示を求めません、というお店もあるようだが、そうなってくると、誰でもOKなお店よりは、チェックしているお店を選びたいような心理が働く。たとえグリーンパスがあったところで、完璧ではないこともわかっているつもりだけれど。

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 ワクチンの接種を猛烈な勢いで進めていたイタリアでは、一時は感染者数や重傷者数が目に見えて減り、バンザーイ!ようやく解放される!と思われた。実際、さまざまな行動制限が次々に緩和または解除され7月には、屋外で密でない環境であれば、マスクも不要になった。とはいえ、お店に入るにはマスク必須だし、街の中ではマスクをして歩いている人の方が多いくらい。
 先行きが再び怪しくなってきたのは、7月に入ったころから。改めてワクチン接種者に対しても引き続き感染対策を怠らぬよう注意喚起された。案の定その頃を境に、感染者数は上昇に転じたものの、幸い、爆発的な拡大とはならなかったのは、ワクチンの効果が大きいと思われる。

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 同じように、美術館などでの入り口でも、チケットと共にグリーンパスの提示を求められるようになった。これは、屋内施設に限らず、コロッセオやフォロ・ロマーノ、オスティア・アンティーカやポンペイと行った屋外施設も同様となっている。
 ホテルなど宿泊施設については、今のところ規定はないが、グリーンパスの提示を求めるところもあるようなので、注意が必要だ。

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 多くのイタリア人が、ヴァカンスの前にグリーンパスを入手すべくワクチンに急ぎ、反対派や何らかの事情で受けられぬ人は、とりあえず陰性証明書のために薬局に向かった。薬局で受けられる抗原検査は、すぐに結果が出て便利な上に安価だが、と言っても数千円はかかる。ローマやフィレンツェ、ヴェネツィアなど主要駅の前では、イタリア赤十字が無料の検査を行っているが、そちらは数時間待ちになった日もあるらしい。
 8月の夏休みは、1300万人のイタリア人が、国内でのヴァカンスを選んだという。これは昨年はもちろん、一昨年に比べても大幅増になっている。一方で欧州内からの移動を中心に外国人もだいぶ増えてきたとはいえ、まだまだコロナ前の水準にはほど遠い。

 その大移動を前に、慌てて見切り発車で導入したグリーンパスはまだまだ問題も多いけれど、感染拡大抑制に一効果を発揮することを願っている。

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Fumie M. 08.16.2021


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