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いいチームは負けたときに関係性をつくる

阪神タイガースがホームの負け試合で、ゲーム終了後に選手や監督コーチがスタンドに向けてあいさつした。

それの何が? と思う人もいるかもしれないけど、プロ野球で勝利チームではなく負け試合のチームがあいさつするのは、まあまあ珍しいことなのだ。一部の選手が、ファンに小さく頭を下げてロッカーに消えて行くのはあるけど。

野球にまったく興味のない人には、どうでもいい話なのはわかってるけど「あ、これってチームがファンと新しい関係性をつくろうとしてる?」と思った。プロ野球チームに限らず、組織やブランドとファンとの関係性って大事だ。

ファンへのあいさつも、新しく矢野監督になって「俺らはいつでも基本的にファンのために野球をやりたい」という想いのひとつらしい。だからって「ほら、やってるでしょ」的な感じでもなく「自然」にやってるのが、いいなと思うのだ。

もちろん、あまりにも試合内容が「ふがいない」ときだったら、しないのかもしれないけど、ちゃんと最後まで「ゲーム」を失わずにやってきて、それでも結果としては及ばなかったときはファンだって「惜しいし悔しいけど、最後まで応援できてよかったよ」という気持ちになれる。

いやなれないよ、何がなんでも勝てないと嫌だ。負けたのにあいさつするとかあり得ん! という人もいるとは思うけど。

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べつに、パフォーマンスの是非とか、あいさつの精神性の話じゃない。そうやって、どんなときもファンのほうを「向いている」姿勢を見せていると、いざというときに違ってくる。

「応援が力になる」というのは、決してアスリートの常套句ではなく「ほんとうにそうなる瞬間」があるのだ。それはスポーツに限った話ではない。

組織やブランドがピンチに陥ったときだって、ずっとファンとの関係性をつくって大事にしてきたところは、ちょっとしたことでファンが離れたりしない。

なんならファンのほうが「自分たちのピンチ」ぐらいに自分事に捉えて、何かできないかと真剣に考えて動いてくれたりもする。

調子のいいとき、勝ち続けてるときだけファンのほうを向いて、いろいろ具合が悪くなったらファンのほうを向かない、負けゲームではそそくさと引き上げるではファンとの関係性はそれなりのものにしかならない。

今年の阪神タイガースがどんな結果になるかはともかく「ファンとの関係性」という古くて新しい指標で、どんな1年になるのか、ちょっと楽しみなのだ。