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ひとり買い物デビューした娘

私はニヤニヤ、ハラハラしながら家の2階からスマホで動画を撮っていた。隣には夫もいる。

撮っているのは家からスーパーに向かう娘(小2)。今日、娘は初めて1人でお買い物に行くのだ。

貯まったお小遣い総額200円を握りしめて、グミを買いに初めて1人で近所のスーパーに行くのだ。


一張羅のサクランボ柄のワンピースを着た娘は緊張と嬉しさでフワフワとつま先歩きのような見たことのない変な歩き方をしている。


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娘のお小遣い制度が始まったのは8月の後半。
決めている目標が達成できた日は20円。

8月末。
娘が手に入れたお小遣いは200円だった。


お小遣いの使い道は絶対にグミ!と決めていたようだった。
以前から目をつけていた「コグミ(UHA味覚糖)」。
小さくてカラフルで可愛らしいグミがたっぷり入っている。スーパーに行くたびに娘の姿が消えた、と思って探すと陳列しているグミの前に屈んでいた、というオチは何回かあった。


お買い物デビュー当日。
コグミが200円でお釣りが出る値段であることだけを再確認して娘を送り出した。念のためGPSとキッズ携帯を持たせて。

夫と2人でGPSで娘の進行状況を確認する。
行き慣れたスーパーのはずなのに、道を間違えている。
やっぱり「緊張」って普段のパフォーマンスを妨害する最大の要因になるよなぁ、と改めて考えたりしながらGPS地図上で●となって動く娘をただ見つめることしかできない。


「ちょっと、見て来ようか」と2人でザワザワし始めた頃、娘は自力で軌道修正をしたようだった。「お〜っ!」と2人で声を上げる。

そして●は無事にスーパーへ到着した。
あぁ。きっと脇目もふらず一直線にグミのもとへ向かっているに違いない。


「こっそりスーパーで待ち構えてて動画撮りたかったなぁ」
「いや、店員さんに怪しまれるやろ」
「いやぁ、撮りたかったなぁ」
などと夫とやりとりする。2人とも携帯を食い入るように見つめたまま。

●は20分以上スーパーから出てこない。
コグミ1つ買うにしては時間が経ちすぎている。

え?なに?自動支払機で迷ってる?
コグミがなかった?
お友達に遭遇した?
お金落とした?
でもスーパーの中だから安全だよね?


夫とざわつき始めた頃、●がスーパーを出発した。再び夫と歓声を上げる。


●がゆっくりと我が家へ近付いてくる。

「そろそろ姿が見えてくるはず!」
再び2階の窓から娘を撮影しようとスタンバイする。

来た来た。見えてきた。
ん?
なんか荷物多くない?
絶対にコグミだけではない。

ピーンポーン


夫が迎え入れる。

娘の第一声は
「お父さんとお母さんの好きなものも買ってきたよ!」だった。

まずは自分用のコグミ。
それから…。
パピコ。
HARIBO。
チョコモナカジャンボ。
ぼんち揚げ。
卵ボーロ。

私と夫、それから息子の好物が網羅されている。
だからこんなに時間がかかったんだ。


ん?200円では足りなかったはず…。
聞くと、おばあちゃんからもらったお年玉1000円も財布に入れていたので使ったとのこと。

レジ袋は断ったようで、無料の透明ビニール袋2枚に戦利品をパンパンに詰め込み両手で抱えて帰ってきたのだった。

ありがとう。パピコは冷凍庫にはまだたくさんあるんだけどね。

普段、あまり感情を言葉にしない夫もさすがに
「嬉しい。ありがとう…。」と言っているではないか。

娘の顔は紅潮して照れくささと満足感と安堵感の入り混じったような顔をしている。


自分以外の人間が喜ぶのを喜びとする一面を持てた娘が誇らしかった。
こうやって少しずつ大きくなるんだなあと思った。


階段をひとつ登った娘は、この日をややハイテンションで過ごした。

私はこの愛おしい日のことを一生忘れないと思う。

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