見出し画像

懲役ダイアリー 2017年1月16日月曜日 義理の妹の結婚

雪が深深と降り続く。窓の外を見渡すと、辺りは一面白銀の世界。真っ白な雪のような心になりたいと願う日々。

私が収容されている1−Dユニットは以前の喧嘩が原因で、ユニット利用制限がかかり、余暇時間の受刑者同士の交談ができなくなってしまった。それはそれで、平和になるので良いのだが、話ができないとなると少し寂しい。

そして以前にも増してそこらじゅうで不正交談が多発する。ルールってなんのためにあるのか・・・疑問を感じる。

月曜日は矯正指導日。この日は毎週ユニットミーティングというものが30分開催されて、民間の支援員さんと受刑者が様々なテーマで話し合い、更生に役立てるというもの。今回のテーマは、

「去年の自分を漢字一文字で表すとどんな漢字?」

というものだった。

受刑者から様々な漢字が飛び交った。

「金」

「性」

「賭」

「盗」

「罰」

「恋」

人それぞれ色々な思いがあるようだが、ちょっとマイナスな漢字が多い気もする。恋は凄く素敵だけど、エピソードは聞けなかった。

私の去年の漢字。「詐」とか、「拘」とか色々悩んだが・・・

「愛」

を選択した。

2016年は「愛」というものがなんなのか、実感した一年だった。

2015年に逮捕され2016年に保釈され、妻の元に帰り、妻に私が行っていたこと、妻に嘘をついていたこと、全てを打ち明け謝罪した。妻は一言。

「ありがとう」

と涙ながらに私に伝えてくれた。

「ずっと待ってるからね。愛してるよ。」

妻の言葉が頭の中から離れなかった。

保釈され帰宅し子供と半年ぶりに対面した時は、子供が泣きながら私の元に駆け寄り、小さな体で私を抱きしめた。

「パパぁぁぁぁぁっ・・・さみしかったよぉぉ・・・」

ずっと私は

「ごめんね、ごめんね・・・」

と頭を撫でながら子供に謝罪した。

こんなに愛されている。そして私はこんなに愛している。人生で初めて愛というものに気がついた1年だった。


妻から手紙が届く。内容は妻の妹が結婚をするとのことだった。

凄くおめでたいお話ではあるのだが、私は一つの不安を感じた。

「俺のことは結婚相手にどう話すんだ・・・。俺のことを話して破談になったりしないだろうか・・・。俺が義理の妹の幸せをぶっ壊してしまわないだろうか・・・。家族に犯罪者がいる。刑務所に服役している。この事実を相手の男性や親御さんが聞いたら・・・どう思うだろうか・・・。」

ずっと頭から離れない。

「隠すのか・・・。いやそんなことはすぐバレてしまう。どうするんだ・・・。」

せっかくの幸せな話・・・。私のせいで余計な足かせがついてしまっているかもしれない。本当に申し訳ない。心の底から物凄く辛くなった。

保釈中、義理の妹にも、妻の親にも面と向かって謝罪をしなかった自分を恥じ、責めた。私は怖かった。謝罪をすることが怖かった。文句を言われるのが怖かった。逃げたかった。本当にどうしようもない人間。ゴミ屑みたいな人間。とても苦しい・・・。こんな自分が嫌になった。

でも、自分ではどうしようもない事を考えても仕方ない。考えれば考えるほどどんどん気持ちが沈んでいく。進捗を見守って、その時に対応していくしかない・・・。そうするしかない・・・そうするしか。

就寝前に自分に言い聞かせ、静かに目を閉じた。

全ては順調に進んでいる。人生の成功に向けて。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?