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王道のハッピーエンドよりも

曖昧さが残る物語の結末が、好きだ。
自分であれこれ想像することが出来るから。


近頃、ドラマや映画の最終回であのシーンをもっとはっきり描いてほしかったとか、この登場人物たちがくっついてほしかったとか、結末がよく分からなくてもやもやするとか…概して納得いかなかったという声を聞くことが多い。

王道のハッピーエンド、分かりやすい伏線回収、全てを明らかにする結末。

大きな声じゃ言えないけれど(と言いながら公共の場で書いとるやんって感じやけど)、なんでそんなに白黒はっきりつけてほしがるんだろう、切なさや悲しさが残る終わり方をそんなに批判するんだろうって少し不思議に思ってしまう。

確かに、分かりやすいハッピーエンドはあ〜良かったって満ち足りた気分にしてくれるし、伏線を綺麗に回収してくれる最終回は謎が解けた〜ってすっきり爽快だ。うん、王道ストーリーは大好きですよ私も。散々すれ違ってきた二人が最終回で奇跡的に結ばれるみたいな少女漫画的展開なんて、最高だと思う。

ただ。

余韻を残すような終わり方、上手くいかないこともある終わり方、謎が残る結末の方が、この先どうなるんだろうとか、あの登場人物たちはなんでああいう選択をしたんだろうとか、自由に想像できる余地があって、そっちの方が私は好きだなって思う。作り手の方々が、受け取る側の私たちに「あとは自由に解釈してくれていいんですよ」って選択肢を残してくれているような、素敵な心遣いを感じる。

あとね、結末にもやもやが残る作品の方が、長く深く人の心に残るのかもしれないって思う。分かりやすいところでいうと、大ヒットミュージカル映画ラ・ラ・ランド。

以下ネタバレ含むので、まだ観ていないけどこれから観るつもりだという方は、にこにこマークが出てくるまで、がーって飛ばしていただけると幸甚です。








オープニングの“Another Day of the Sun”が最高にわくわくするよねこんな渋滞だったら楽しすぎでしょうとか、丘の上のタップダンスなんなの目が眩むほど美しいよねとかミュージカル好きとしてはそういった点についても言及したいところなんだけど、本論からずれちゃうので一旦置いといて。

この作品、とにかく「最後にミアとセバスチャンが結ばれてほしかった」と言う人が周りに多かった。(因みに私はと言えば、鑑賞直後「夢も好きな人との結婚も両方掴めるのは一握りの人たちなのかな」とそこそこシビアなことを考えていた。 )

さて、ここでもしもの話をしたい。もしも、主人公二人の夢が叶って、二人が結婚するハッピーエンドだったとしたら、どうだったんだろう。 映画を見終わった人たちの会話は「あの映画よかったね」「あのシーンがよかったよね」という"良かったこと"の確認・共有作業のようになってたんじゃないかな〜って、勝手に推測してる。

でも。

実際は二人が別々の道を歩むという結末だったから、「二人はなんで一緒になれなかったのかな」とか「ミアはあの時どういう気持ちでセバスチャンを見ていたんだろう」とか、そんな疑問が次々に浮かび上がってきて、人と感想を話す時に"あなたはどう考えるか"という意見の交わし合いになっているように見受けられた。「あーあの映画良かったよね」以上。というような簡素な感想は殆どなく、各々の価値観が露呈されるようなものが多かったなという印象なのだ。

そんなこんなで、ラ・ラ・ランドは結末に納得出来ないという声を沢山聞いたけれど、その分多くの人の心の内を垣間見ることのできた映画だと思っている。人と意見を交わすことのできる映画って、きっと長く語り続けられるだろうし、なんでこんな結末だったんだろうっていう疑問とそれに対する自分なりの答えは、自分のものとして蓄積されるから、心にずっと残っていくんだろうなって、そんな風に思った。





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因みに、私の好みどストライクな物語の結末は、全てが上手くいくわけではないけれど、きっと未来に希望があるよっていう可能性を仄かに感じさせてくれるもの。

映画だと「幸福な食卓」。ドラマだと「そして、生きる」「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」「Nのために」「アンナチュラル」「あいのうた」「獣になれない私たち」「ドラゴン桜」。全部、大好きな作品。

「幸福な食卓」では、絶望的に悲しいことがあった後に、北乃きいちゃんが演じる主人公の佐和子がただただ川沿いの道を歩いているラストシーンが、もうなんとも好き(主題歌のMr.Childrenのくるみがまた絶妙なの、「誰かの優しさも皮肉に聞こえてしまうんだ」て歌詞…沁み入る)。

人生は、良いことばかりでも、悪いことばかりでもない。そういう、現実的で、希望を見出してなんとか生きていこうっていう考えが、私にはなんかしっくりくる。

何度も何度も繰り返し観ているドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」の主人公の音ちゃんは、亡くなったお母さんに宛てた手紙で、こんなことを書いている。

時々思うの。
世の中って綺麗なものなのかな?怖いものなのかな?
混ざってるのかなって思った。
だから、綺麗なものは探さないと見つからない。

散りばめられている素敵なものたちを探しにいこうっていう気持ちで映画やドラマを観ると、きっといつもと違った楽しみ方が出来ると思うってことを、なんだか誰かに話したくなったのでした。

#コラム #エッセイ #ドラマ #映画 #いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう #幸福な食卓 #ララランド

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