ユニクロは、高い。コンビニ弁当も、高い。

 自社製品を「ライフウェア (life ware)」と称するユニクロ。20年以上も前から「洋服もコンビニ弁当も一緒」が柳井社長の持論です。そのくらい身近で、気軽に買いたいもの(買えるべきもの)なのだそうです。

 ユニクロがフリースで広まり始めた当初、ユニクロ着用がバレることを“ユニバレ”と揶揄する時期もありました。当時は、ちょっとお洒落な服は高いのが常で、安いものはその逆。安かろう悪かろうが普通だった時代、ユニクロをこっそり取り入れる人が多かった頃に生まれた言葉です。

 ところが今や、ファッション誌ではデザイナーズブランドのアイテムと並んで堂々とコーディネート掲載されています。むしろユニクロを取り上げないと、一味足りないくらいなのかもしれません。

 この捉え方の変わりようは、世間の価値観や経済事情などの要因以上に、ユニクロ自体の商品改善やプロモーションによるところが大きいと思われます。ユニクロは、バレたくないものから、周囲の共感を得られるポジティブなポジションになりました。

 すっかり、安くて便利で安心して着られる存在になったユニクロ。しかし、そんなユニクロを高いと感じる人々も存在します。それに対して、このクオリティと価格でそう言われてしまっては…と、業界を案じる声もありますが、私はこれに違和感を覚えます。なぜなら、街を歩けばユニクロより安いお店がたくさんあるからです。なにも年中閉店セールの商店や、低価格がウリのGUやしまむらを頼らずとも、見つかります。そこで、ユニクロは誰にとって安くて、誰にとって高いのか、考えてみたいと思います。

昔、PARCOは高かった

 昭和生まれ庶民の私にとってPARCOや丸井は高校生の頃から通ったファッションの入口、基地とも言える場所です。ローリーズファームやページボーイ、VIVA YOU(※2011年に終了)など、今も当時の店構えが目に浮かぶほどよく通いました。

 学生のバイト代で服を買っていた当時、PARCOで服を買っているといえば、〈服にお金をかけている子〉という認識がありました。つまり〈PARCOの服〉は高かったのです。

 一方、ユニクロといえば当時はフリース。1994年に始まり、1998年頃から流行りました。ヒートテックは2003年に発売です。寒さから逃れたいという生存欲求に近い切実なニーズに対し、超安価でしかもサイズ豊富に、老若男女に向けて応えたところは流石のディレクションです。エアリズムが先だったら、もう少し流れは変わっていたかもしれません。

 ヒートテックで支持を得はじめた頃も、ユニクロではジーンズが販売されていましたが、私の目でも穿いている人をパッと見てユニクロかどうか当てられるくらいには分かりやすく安っぽかったものです。ゆえに我々世代の頭には、〈ユニクロ=安い〉という刷り込みが出来ています。そしてもう一つ、製品クオリティがメキメキと良くなっていくのを見続けている生き証人なのです。

今はPARCOがユニクロより安い(こともある)

 今もPARCOにあるブランドとユニクロを比較しますが、この際、PARCOの中でも戦略の異なる渋谷PARCOは除きます。そうした上で、価格がどうであるか、一例としてウィメンズのきれい目パンツで見てみましょう。

〈ローリーズファーム〉税込4,400円

https://www.dot-st.com/lowrysfarm/disp/CSfGoodsPage_001.jsp?ITEM_CD=921693

〈ユニクロ〉税込5,990円


 (※ともに、2021年11月上旬の同日の価格)

 このケースでは、ユニクロの方が1,590円も高いです。よく見ると裾の仕上げはタタキとダブルで異なりますが、商品イメージから買い手の着用場面が大きく変わることはなさそうです。ここでは一例だけ挙げましたが、重箱の隅をつつくようにしてユニクロより安いものを探し出したわけではなく、意外と簡単にいくつも見つかります。

 全体的に見ればユニクロの方が低価格帯の層が厚くて主力のため、安い印象を持ちます。しかしアイテム軸で似寄りのものを探せば、ユニクロより安いものが苦労せずともあちこちで見つかるのです。低価格をウリとはしていない、名の知れたファッションブランドから、プロパー価格で見つかります。

 お店はどこもユニクロより狭くてちょっとごちゃごちゃしているし、ユニクロより服のデザインの味付けが濃いけれど、同じ用途で使えそうな商品をユニクロより安く見つけることが可能です。

誰にとってユニクロは安いのか

 ここで、柳井社長がアパレル製品の在り方をなぞらえているコンビニ弁当についても考えてみることにします。

 私はコンビニ弁当を滅多に買いません。一番の理由は、コンビニ弁当に食べたいものがないからです。栄養がありそうなものは彩りのためにきらいな野菜が入っているし、見た目にボリュームがあるように工夫されていることで逆に量を多く感じるし、食べた後のプラごみの嵩張りも非常に面倒に感じる、というのも理由です。

 そんな私が普段コンビニでお昼に買うものといえばカレーパンか中華まんとコーヒーです。しめて300円程度。これからするとコンビニ弁当は高いです(切り詰めているわけでも少食なわけでもなく、お昼を基本的にあまり食べません)。もし休憩で誰かとランチに行くなら、都内だと1000円前後かかります。こうなるとコンビニ弁当の方が安いですが、1000円前後出しても見合っているかそれ以上と思うお店ばかりですし、誰かとランチに行く意味がお腹を満たす以外にあるとも感じます。1000円出してコンビニ弁当と似たものをひとりで食べたわけではないので、比較する方が難しいと思います。

 このように、コンビニ弁当の中身にありがちな素材・料理とは違うところに重きを置いている人にとっては、いくら外出ランチより安くても、コンビニ弁当は高く感じます。正確には、高い安いよりもニーズに対してトゥーマッチの方向で「満足でない」ので、無駄に高く感じるのです。

 反対に、ランチに出るより簡単スピーディーを求め、休憩中の食事として質・量ともに申し分無ければOKで、特段食費を切り詰めているわけでもなく、という方々にとって、コンビニ弁当はなんと手軽に満たされるものだろうかと思います。

 言い換えれば、出かけて見て選んで回るより限定された中でサッと選びたい、日常着として質・サイズともに申し分なければOKで、可能な限り安く済ませたいというわけでもなく、という方々にとって、ユニクロ製品はなんと手軽に満たされるものだろうか、と思います。

 ユニクロでいいやと思える人(思う場合)は安くて手頃に感じますが、ユニクロ以外に目を向けた途端、ユニクロより安く似寄りの物を用意できるブランドは昔より格段に増えています。つまり人々は、できるだけ安い物が欲しいのではなく、もうユニクロで買おうと思ってユニクロに行きます。これは、エルメスで何か買おうと思ってエルメスに行くのと似ていて、ユニクロがブランドとして確固たる存在であることを裏付けるようです。もはや、ユニクロを価格帯で捉えて語る時代は終わったのではないでしょうか。
 
 表題の通り、私には、ユニクロは満たされないという意味で買うには高いし、コンビニ弁当も同様に高いです。そして最後に一つ、柳井社長が「コンビニ弁当と同じ」を公言して20余年、ユニクロもコンビニ弁当も同じような発展を遂げているあたり、普遍的な一言であったと感心してやみません。

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