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門脇麦の映画を観たくなる理由がようやく分かった

彼女が出ているだけでその映画を観たくなるし、実際観てきた。

僕の中では「門脇麦」のクレジットの有無が、邦画選びのひとつの基準になることが多々ある。おそらく麦ちゃんよりも綺麗な女優さんもスタイルのいい女優さんもいるだろう。

だけど、お芝居を観たい、スクリーンで観たいと一番思わせるのは彼女なのだ。あまり深く考えたこともなかったが、先日出演の『A-studio+』を観て、そのワケが分かったような気がした。

彼女の主戦場は映画。稀にドラマも出るが、そう多くはない。バラエティの出演も少ない。

マスメディアでほとんど語られてこなかった素顔にギャップを感じた人も多かったかもしれない。なんせファンである僕ですらそうだったから。

こんなにも多面的な魅力を持ち、地に足の着いた人だったのかと新鮮な気持ちになった。それと何をしゃべるにも語りがすべて流々としていて淀みがなくって、頭の回転の早さも感じた。

多種多様な趣味を持つ女優さん

まず趣味の多さに驚いた。

今回明かされただけでも、釣り、キノコ採り、奇食、プリキュア、クラフトビール、幅がとっても広かった。話を聞いても浅い感じはせず、むしろ造詣が深い。服とかには無頓着で、同じお金でワンピースを買うなら、釣りのリールの方が欲しいと語る。

「芸術鑑賞をし、あとは珈琲を飲みながら読書」みたいな勝手なイメージからはずいぶんと誤差があった。釣りのために海に出かけ、キノコを採りに山に入る。想像よりも遥かにアクティブだ。

門脇麦のパブリックイメージは、インドアで落ち着いた雰囲気。

その話題に及ぶと「そういった役が多かったから」と演じた役の印象が強いことに本人も自覚的だった。「おとなしくて話しかけづらい」「芸術肌」そんなイメージを持たれやすい。「音楽詳しいとかもよく思われるんですけど、全然そんなことないんですけどね」と笑っていた。

映画がメインでバラエティにも滅多に出ないとなると、世間的には役と見た目の雰囲気から想像するしかない。イメージというのは不思議である。

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意外な交友関係を持つ女優さん

ギャップは趣味の領域だけにとどまらない。釣りやキノコを一緒に楽しむ仲間はなんと一般人で、それもSNSを通して知り合った人ばかりだという。写真も出ていたが、みんな彼女よりおそらく年上の、ほんとうにその辺にいそうなふつうの男性ばかり。

彼らは映画やドラマをほとんど見ないようで、最初のときから女優・門脇麦をまったく認識していなかったらしい。みんなで一緒に出かけたときに彼女がバッチリ移ってるポスターが張り出されている場所にいても、誰も本人が目の前にいることに気付かなかったとのエピソードは面白かった。

きっとそれがかえって居心地がいいのだろう。芸能人であることを意識させられない、気軽な付き合いが可能なコミュニティを大切にする役者さんは多いと聞く。

素の自分を開放できて、受け止めてくれる仲間の存在は心強いと思う。交流の場には「SNS上のハンドルネームしか知らない」人もいるのだとか。こんな世界線が存在するのかとちょっとだけ羨ましくなったのは本音だ。

有名人ではウエンツ瑛士と仲良しとのことで、それも意外だった。毎週のように共通の友人を交えて飲んだり、物件好きのウエンツと一緒に内見に行ったりする仲だというのは、彼女の口から語られなければ知る由もない。

地に足のついた女優さん

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タクシーにも滅多に乗らないとのことだった。帰りが夜遅くなったときでも電車に乗り、そこそこの距離でも歩くので、ウエンツも心配するほどだった。彼女いわく「いきなり贅沢はしたくない。それに慣れたくない。楽しみは先にとっておきたいので」というようなことを語り、今は28なのでせめて30以上からだと殊勝な理念を明かす。

ふつうに地下鉄に乗り、ふつうに働いている人たちを眺める。そういった時間を大切にしている。女優の仕事では浮世の世界にいるからこそ、こういう社会もあるのだと、しっかりと胸にとどめておく。鶴瓶さんの最後の語りでそんなところが彼女の良さだと触れられていた。

なぜ彼女の芝居は観たくなるのか。自分の中にあった積年の疑問に対する答えが、見つかったような気がする。仕事以外ではただの一般女性として生活し、ふつうの人たちに溶け込んで交流する。海や山といった自然に出かけ、公共交通機関にも平然と乗る。

等身大の感性がキープできる環境へと常日頃から身を置いているからこそ、彼女の芝居には身近な説得力が宿るのかもしれない。

同じぐらいの知名度の他の女優さんたちに比べても、麦ちゃんは一般人のなかに溶け込んでコミュニケーションを取り、世俗的な生活に触れている時間がおそらく長い。

彼女の放つ雰囲気や言葉に潜む体温が、遠く離れたものではなく、どこかの街ですれ違っていそうな息遣いで届くのは、それゆえではないか。

だから門脇麦という女優の居る物語には、自分にも関係がある話だと信じて観ることができる。彼女に不思議と惹かれ、映画に引き込まれるのはなぜだったのか、ようやくその謎が少し解けた。

僕は2013年の『ストリッパー物語』という舞台ではじめて門脇麦を観た。生で彼女を観たのはあれが最初で最後だが、あのときの美しく澄んだバレエの舞いと存在感はいまだに憶えている。

今回の放送を観て、ふとその時のことが思い出されたし、あらためて彼女のことが好きになった。



サポートが溜まったらあたらしいテレビ買います