【名作文学】ディケンズ『二都物語』あらすじと解説

『二都物語』(A Tale of Two Cities)は、イギリスの作家チャールズ・ディケンズによる長編歴史小説です。

この作品は、1859年に出版されたディケンズの作品で、フランス革命前後の1780年から1794年にかけての出来事を描いています。物語の舞台は、ロンドンとパリの二つの都市で、タイトルもそれに由来しています。物語の中心となるのは、フランスから亡命した貴族のチャールズ・ダーニーと、彼に瓜二つの英国人弁護士のシドニー・カートンの二人の男性と、無罪の囚人だった父と再会したルーシー・マネットという女性との関係です。彼らは、革命に巻き込まれたり、恋に落ちたり、犠牲になったりしながら、時代の激動に立ち向かっていきます。

あらすじ

『二都物語』は、全3部からなります。

第1部「マネット父娘の再会」では、1775年から1780年までの出来事が描かれます。テルソン銀行の銀行員ジャーヴィス・ローリーは、17歳の少女ルーシー・マネットとドーバーで落ち合い、フランスへ向かいます。そこで彼らは、18年間バスティーユ牢獄に入れられていたルーシーの父アレクサンドル・マネット医師と再会します。マネット医師は精神を病んでおり、靴作りに没頭していましたが、娘と一緒にイギリスへ帰ることで回復していきます。一方、フランスから亡命した貴族チャールズ・ダーニーは、スパイ容疑で裁判にかけられますが、弁護士シドニー・カートンの助けで無罪となります。ダーニーはルーシーと恋に落ちますが、カートンもまたルーシーを愛していました。

第2部「ルーシーへの献身を告白するカートン」では、1780年から1789年までの出来事が描かれます。ダーニーは自分がサン=テヴレモンド侯爵家の末裔であることをマネット医師に打ち明けますが、その本名をルーシーには秘密にするように言われます。ダーニーはルーシーと結婚し、女児ルーシーと男児(夭折)をもうけます。カートンも夫妻と交流を続けますが、自分がルーシーに相応しくないことを悟っています。フランスでは革命が勃発し、バスティーユ牢獄が襲撃されます。マネット医師が囚われていた牢獄では、彼が隠していた手記が発見されます。

第3部「カートンの最期」では、1792年から1794年までの出来事が描かれます。ダーニーはかつての召使いの身に危険が及んでいることを知り、フランスへ向かいますが、旧貴族として捕らえられてしまいます。マネット医師とルーシーもフランスへ駆けつけますが、ダーニーはマネット医師の手記によって死刑判決を受けます。手記には、ダーニーの父と叔父が貧しい農民の娘を暴行し、彼女とその家族を殺害したことが書かれていました。その娘の弟がドファルジュであり、彼と妻テレーズはダーニーに復讐するために手記を公表したのです。カートンはフランスに来ていたバーサッドの正体を暴き、ルーシー一家の脱出を手配します。そして、ダーニーと入れ替わり、自らギロチンで処刑されます。カートンは死ぬ前に、自分の犠牲によってルーシーとダーニーが幸せになり、彼らの間にシドニーという名前の息子が生まれることを予言します。

解説

『二都物語』の特徴としては、以下のような点が挙げられます。

  • フランス革命を題材にしていること。ディケンズはトーマス・カーライルの『フランス革命史』に影響を受けてこの作品を書きました。彼は革命の歴史的な背景や出来事を詳細に調べ、物語に取り入れました。また、革命によって引き起こされた人々の苦悩や狂気、暴力や悲劇も生々しく描きました。ディケンズは革命に対して一方的な肯定や否定をしないで、その複雑さや矛盾を示しました。

  • ダーニーとカートンという二重主人公を設定していること。物語では、外見も性格も対照的な二人の男性が重要な役割を果たします。ダーニーは貴族出身でありながら貴族制度に反対し、正義感や勇気を持っています。カートンは才能ある弁護士でありながら自暴自棄で酒浸りです。しかし、カートンはルーシーへの愛から自己犠牲の精神を見せます。二人は互いに尊敬し合い、友情を育みます。

『二都物語』は、ディケンズの作品の中でも最も読まれている作品の一つです。物語は、ディケンズの他の作品と比べて政治的な色彩が強いですが、社会批判よりも人間の感情や運命に焦点を当てています。物語の冒頭の「これは最高の時代であり、最悪の時代であった」という有名な一文は、物語のテーマを象徴しています。物語は、革命によってもたらされた恐怖と希望、暴力と平和、悪と善、死と生を対比させています。物語は、カートンの自己犠牲によって終わりますが、彼の最後の言葉「これは私がしたことで最も良いことだった」という言葉は、人間の尊厳と愛についてのメッセージを伝えています。

この作品は、歴史的な背景と人間的なドラマを見事に結びつけた作品として広く知られており、多くの人々に感動や考察を与えています。もし興味があれば、ぜひ読んでみてください。

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