【名作文学】オースティン『エマ』あらすじと解説

オースティンの「エマ」は、1815年に出版された彼女の6作目の長編小説です。

あらすじ

主人公のエマ・ウッドハウスは、美しくて賢くて裕福な家の娘で、恋愛に興味がなく、代わりに友人や知人の縁結びをしたがります。しかし、その結果はことごとく失敗に終わります。エマは、自分の友人であるハリエット・スミスを牧師のエルトンと結びつけようとしますが、エルトンは実はエマに惚れていました。

エルトンに断られた後、エマは別の男性であるフランク・チャーチルに興味を持ちますが、彼は実は秘密裏にジェーン・フェアファクスと婚約していました。ジェーンはエマの隣人であるベイツ夫人の孫で、エマとは仲が悪かったのです。エマはまた、ハリエットをチャーチルとくっつけようとしますが、ハリエットは実はエマの兄弟であるジョージ・ナイトリーに恋していました。

ナイトリーはエマの幼なじみで、常に彼女を諭したり叱ったりしていました。エマは自分がナイトリーを愛していることに気づきますが、彼がハリエットと結婚するのではないかと不安になります。しかし、ナイトリーもまたエマを愛しており、彼女にプロポーズします。エマは喜んで受け入れます。ハリエットも最初に求婚した農夫のロバート・マーティンと和解し、結婚します。ジェーンとチャーチルも婚約を公表し、みんなが幸せになるというハッピーエンドです。

解説

この小説の特徴は、オースティン自身が「私のほかには誰も好きになれそうにない女主人公」と言ったように、主人公のエマが自信過剰でお節介な性格をしていることです。この性格が彼女を様々な失敗や誤解に導きますが、同時に彼女を魅力的で鮮やかなキャラクターにもしています。

また、この小説では英語文学史上初めて自由間接話法(描出話法)が効果的に使われています。自由間接話法とは、第三者視点で物語を進めながらも、登場人物の心情や言葉遣いを反映させる技法です。この技法によって、読者は物語の流れや登場人物の感情をより深く理解することができます。

文学史上の位置付けとしては、「高慢と偏見」と並ぶオースティンの傑作とされており、当時の摂政王太子であったジョージ4世に献呈されたことでも知られています。この小説は、近代イギリス長編小説の頂点とみなされており、オースティンの作品の中でも最も人気が高く、映画やテレビドラマなどに何度も映像化されています。

また、この小説は、オースティンの作品の中でも最もユーモアや風刺が効いており 、読者を楽しませるだけでなく、当時のイングランド社会の風俗や価値観を鋭く批判しています。この小説は、オースティンの作品の中でも最も完成度が高く、彼女の才能と技巧が最も発揮されていると言えます。

登場人物

  • エマ・ウッドハウス:美しくて賢くて裕福な家の娘で、主人公。恋愛に興味がなく、友人の縁結びをしたがるが、失敗ばかりする。

  • ジョージ・ナイトリー:エマの幼なじみで、ドンウェルの地主。エマに対して諭したり叱ったりするが、実は彼女を愛している。

  • ヘンリー・ウッドハウス:エマの父で、ハートフィールドの住人。気鬱症で神経質な老人。

  • ハリエット・スミス:エマの年下の友人で、女学校の生徒。初心で素直な娘で、エマに憧れている。

  • アナ・テーラー(ウェストン夫人):エマの家庭教師だった女性で、ウェストン氏と結婚する。エマとは姉妹のような関係。

  • ジェーン・フェアファクス:ベイツ夫人の孫で、美しくて才能があるが、貧しい女性。フランク・チャーチルと秘密裏に婚約している。

  • ベイツ夫人:ハイベリー教区の元牧師の未亡人で、貧しいが明るい性格。

  • ミス・ベイツ:ベイツ夫人の娘で、おしゃべりで天真爛漫な女性。ジェーンの伯母。

  • フランク・チャーチル:ウェストン氏と前妻との間に生まれた息子で、チャーチル夫妻に育てられる。陽気で社交的だが、軽薄な面もある。

  • ウェストン氏:ランドルーズの住人で、貿易商。前妻と死別した後、アナ・テーラーと再婚する。

  • フィリップ・エルトン:ハイベリーの新しい牧師で、野心的な男性。エマに求婚するが断られる。その後、オーガスタ・ホーキンズと結婚する。

  • オーガスタ・エルトン(ホーキンズ):エルトン夫人で、ブリストル出身の金持ちの娘。傍若無人でお節介な性格。

  • ロバート・マーティン:農夫で、賢くて誠実な男性。ハリエットに求婚するが、エマに反対されて断られる。その後、和解して結婚する。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?