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プロレスラー、川田利明選手を探訪

いつだったか、稽古場でプロレスラーの方がやっているお店に行こうという話になった。プロレスをモチーフに扱う「虎の館」において、確かに僕らはプロレスが大好きだけど、もっとプロレスラーの何たるかを知らなければならない…とか能書きを垂れてる内に、話がまとまった。

行くことに決めたのは、全日本プロレスで活躍した川田利明選手のお店「麺ジャラスK」。もちろん、川田選手のニックネーム「デンジャラスK」がモジられている。

川田選手と言えば、かつて「プロレス四天王」と呼ばれ、僕がプロレスを見始めた中一の頃、ガッチガチのとんでもない試合をしていた。三沢選手&小橋選手、川田選手&田上選手の地獄のようなタッグ戦を見て震えながら高揚した。客席から聞こえる地響きと相まって、僕はとんでもない世界に興味を抱いてしまったと少々怖くなったほどだった。

川田選手のマットに叩きつける悪魔のようなパワーボムと、反則なのかどうか永遠に分からないサッカーボールキックが脳裏に焼き付いている。

小田急線の成城学園前に集まった僕らは、20分くらい歩いてその店に着いた。ここだ。

そう、ラーメンと唐揚げのお店。男子が好きな取り合わせ。この発想にプロレスラーを感じる。

入店して席に着くと、常連客の皆さんがどんどん入って来る。あっという間にプロレス談義に花が咲く。厨房の川田選手も気軽に声を飛ばしてくれる。

到着した唐揚げとラーメン。ゴングが鳴り、僕らは食らいつく。

ボリュームのある唐揚げはパワーボムのようだった。

伊久磨さんが何度も唸ったスープカレーらーめん。オリジナリティに溢れていた。替え玉を注文すれば良かった。

完全にタダのファンと化してしまった僕らはTシャツにサインを入れて頂く。写真を一緒に撮って頂けることになり、川田選手の前でタイガーマスクを着ける。これは緊張した。亡くなった三沢選手は、かつて川田選手の先輩であり好敵手だった。その三沢選手こそが、二代目タイガーマスクだったことは有名だ。

「実は、僕ら…プロレスをモチーフにした演劇を創っているんです…だからマスクを持ち歩いていて…」と弁護しながら、怒られやしないかと内心ビクビクしていた。

杞憂だった。

「演劇かぁ。(常連客たちに)みんな、今の内にサインもらっておかなくて大丈夫か? 頑張って」

有難い言葉だった。勝手に背中を押されたような気がした。プロレスをずっと好きでいて良かったと改めて思った。

中学1年生の僕は、こんなふうに川田選手と話す日が来るなんて、もちろん想像できていない。プロレスは、プロレスラーは、時に人生レベルで僕らに迫って来る。

<文・フルタジュン>



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