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夕方4時にお風呂に入ること

悠々自適な生活とは何かと聞かれたら、好きなときにお風呂に入る生活と答える。

できれば午前中じゃなくて、夕方あたりが好ましい。

一日の活動を終えて、あとはもう夕食を食べて寝るだけ、というタイミングでお風呂に入ると、こんなに優雅な暮らしはないという気がしてくる。

せっかくお風呂に入るのだから、カラスの行水ではなく1時間近く湯船に浸かっていたい。それでも何もなくて1時間いるのは辛いから、つい本を持って浴室に入る。

いつから本を読みながら入浴するという習慣がついたのかは忘れてしまったけれど、少なくとも学生の頃には本を片手にお風呂に入っていた。

あの頃は本そのものに対して無頓着だったから、ソフトカバーの本は湿気で無惨にも波打ち、ページはシミだらけになった。

結婚後、ある日本を読みながら湯船に浸かっている私を見て、夫がギョッとしていた。雨の日に窓を開けたまま外出して、窓辺の机の上に置きっぱなしになっていた本が濡れてしまいしばらく立ち直れなかった夫である。

夫にとっては風呂場で本を読むなんて本をむざむざ濡らしにいくようなことだ。(ちなみに、夫は濡れた本をなんとか元に戻すべく、どこからか本を冷凍したらよいという情報を仕入れてきた。そして実際に冷凍すると、完全とは言わないまでも、かなり良い状態にまで戻った)。

最近では、私も浴室に本を持ち込むときには細心の注意を払い、掌でひよこを包み込むようにタオルでそっと本を包み、水滴一つページにこぼさないように気を付けている。

とは言え、浴室に本を持ち込む時点で、本を濡らすリスクとは無縁ではないのだけれど。少々のリスクを犯したとしても、読書付きでお風呂に入るという誘惑には勝てないのである。

夕方、タイミングよく子どもたちが昼寝をしている。そのときに子どもを起こさないようにそおっと湯船をはりお湯に浸かる。
窓の外からは、家路につく子どもたちの声が聞こえてくる。日没にはまだ早いけれど、気を抜けば一瞬で流れ去ってしまう、そんなゴールデンタイム。

そのとき、なんら生産的なことをするわけでもなく、ひたすらぼんやりとしながらページをめくっているのがいい。

これが私の悠々自適の生活。
そう考えると、悠々自適な生活って意外とお手軽だ。


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