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奇跡ってなんだよ

涙なしでは観られないと噂の「7番房の奇跡」。
Netflixでの配信が3月4日に終了するとのことで、急いで鑑賞した。
【注意】このノートは、映画のネタバレを含みます。

ところで、映画で号泣したのは久しぶりだった。
誰かのセリフや行動に泣ける、というのではなく、ストーリーとして、誇張なしで、後半20分ほどは涙が止まらない程泣いた。

しかし、視聴後に涙をふいて冷静になると、ある疑問が浮かんだ。

「あれ、奇跡って何だっけ?」

7番房の囚人たちが、裁判での模擬応答の練習を手伝ってくれた時から、てっきりヨングの無罪を晴らすエンディングだと、その映画のタイトルから抱いた推測は、良い意味であっさり裏切られた。

「誰もお前に謝罪しないのになぜお前が謝る」-課長

死刑の執行は免れない。
声の限り叫んでも、お父さんは戻ってこない。
誕生日にプレゼントしたセーラームーンのランドセル姿で学校に通う娘も、
成長して弁護士になった娘を見ることもできない。

ここでもう一度、言おう。

「あれ、奇跡って何だっけ?」

この映画の視聴者には、「冷めたこと言うな、親子の愛は引き裂けないんだ」と怒られそうなので、ここからは私が勝手に考察しようと思う。

この物語は、冒頭と終盤だけ、娘のイェスン視点で描かれている。父親の死後、自分が弁護士となり、父親の判決を覆した。
無実の罪はようやく晴れた。
囚人たち、看守、課長たちの努力はようやく報われた。
権力者にはようやく勝てた。

父親の視点で見ていると最後まで悲劇だったけれど、俯瞰してストーリーを追ってみると、成長した弁護士のイェスンにとってはまさに、「7番房の奇跡」。父親の死後も理不尽な判決に向かい合い続け、最後に自分の力で父親の罪を晴らすことができた。

気球で有刺鉄線を通過していたら、脱獄ものの映画になっていたし、
裁判の模擬応答で本番うまく判決を覆せたとしたら、それは法廷ものの映画になっていただろう。

身を呈して娘の命を守った父親としての終末から目を逸らすことなく描くことで、「奇跡」がより際立つのだろう。

鑑賞後にぱっと思い出した曲があるので、こちらを最後に締めくくります。

文章を最後までお読み頂きありがとうございました。

♪傘村トータ「あなたの夜が明けるまで」

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