物を売ることの落とし穴。

物を売るとなったとき、品質、価格、ニーズがピッタリあっていることはベースとして大切だ。どんなに品質が良くても高すぎたらそこにニーズは生まれないかもしれないし、価格が良くてもクオリティが悪かったらそこにニーズは生まれない。そしてそもそもそれはクオリティも価格も素晴らしいがニーズがないものかもしれない。根本的に最終的には私はこの3要素が網羅されてることでものは売れると思っている。問題はどういうふうに品質、価格、ニーズをコントロールするか(ニーズに気づかせるか)、どういうふうにオーディエンスから捉えられるように操作するかだと思っている。この操作というのは価格、品質、ニーズの間にあるあやふやなグレーゾーンの文脈をいかにマーケットに差し込んでいけるかにかかっていると思っている。

そしてそのノウハウが多くの企業に欠けているアビリティだと思っている。

私はもともと展示会や店舗のデザイン、ビジュアルマーチャンダイジングとさまざまなブランドの中で社員として働いてきた。1ヶ月数十本も売れば社内が潤っているような高級ブランドからピーク時には一日1億円近く売っても利益の少ないメガブランドにもいた。商材も5ミリ角の文字盤の中に精密メカが搭載された時計、中級クラスのヨーロッパアクセサリー、果ては自分一人では持ち上げられないような家具まで扱ってきた。ついこの間は初めて飲食業界にも手を出していた。顧客もBtoB、BtoCさまざまだった。さまざまなブランドなら問題も様々だろうとお思いかもしれない。確かに細かいところは様々である。しかしあるときふと、気づいた。どのブランドも同じ問題を抱えてるではないか。

売れているうちはいいのである。売れているうちはスプレッドシートは綺麗なのだ。何をしても売れるんだから心配する必要がない。売れることが当たり前になって誰もいつか来るであろう雨の日に備えることもなく、あっちのブランドこっちのブランドを掛け合わせたような物を作り、価格帯も似たようなものでバンバン売っていく。そこにこのブランドのそもそものポジションはなんだったか、なんてことは売り上げグラフが上がれば上がるほど社員は有頂天になりとにかく今流行りの物をひたすら作り売っていく。

そして流行りが終わる。そんなバブルは長続きするわけがない。そのような売れるタイミングで赴任したCEOは自分の戦略もなくただこの売れてしまうトレンドに乗っただけで、売れ行きが落ち出した頃にその手柄をごっそり持ち去って別のブランドに行ってしまう。そこに新しいCEOがやってくる。数字を読むのはチョー得意。全ては数字。データ。ファクト。MBA技法を使って帳簿をこねくり回すのだ。この新しいCEOは数字が得意と言ったが、数字が得意なだけなのだ。客はこのタイプの商品をもう買わない。それは数字に表れている。では今は何が売れている?となる。比較的(ただ、本当に比較的に)売れている商品に目をやってこれをもっと売るようにECサイトでもっと全面に押していこう、という。店舗にももっとこれを出していこう。そこでマーケティングディレクターが物申す、「しかし、この商品は我々のシグネチャーではないです。これではブランドイメージが。。。」と、そこでこのCEOはいう「売れなかったらブランドイメージなどは意味がない。潰れてもいいのか?」そう、これが典型的なアホあほブランドの戦略会議の賜物だ。

別にシグネチャーでないものを売ることが問題なのではない。問題は数字とデータだけ見て判断しているということだ。数字とデータはあくまで現状起こっている問題が数字として出ているだけで、それ自体が解決を導いてくれているわけではない。なぜ売れてないのかという読み解きが足りないと思うのだ。確かに4半期ごとに結果を出さなければいけないという重圧もあるとは思うが、その場凌ぎに絆創膏を貼って傷を隠しても膿んでくるのが根本の問題点というものだ。私は今までいろんなCEOを見てきたけど、なぜ売れないのか、と経営陣に問いて耳を傾けた人に会ったことがない。みんな自分でなんとかしようとする。あれは不思議でならない。きっと次の会社に行くための通信簿作りで頭がいっぱいなのかもしれない。

その時点で会社は潰れてなくてもブランドは潰れている。

間違いなく。そういう倒産してないけど内部化膿しているブランドが今山ほどあると思う。

いつも驚かされる。私はビジネスをビジネスとして学んだ人間ではない。いろんな事情があるのであろう。でもいくらなんでもお粗末すぎやしないか。。。





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