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私はアベンジャーズ

会社帰りの女性社員
 
自宅近くの歩道を歩いていると、
黒ずくめの人物に話しかけられる。
 
「中山さんですよね」
「うわっ!ビックリした!
 何ですか急に。
 あなた誰?」
 
「驚かせてしまってすいません。
 とても内密な話でして、
 こういった形を取らせて頂きました。
 申し遅れました。
 わたくしシールドという、
 国際平和維持組織エージェントの、
 高橋というものです」
「はあ…。
 でもそんな団体、
 聞いたことないですけど」
 
「ご存知ありませんか?
 アベンジャーズという名前は?」
「それは知ってます。
 マーベルヒーローがチームになって、
 世界の敵と戦う…
 あ、あの組織ですか?!」
 
「そうです、その組織です。
 私共はヒーローをサポートする者です」
「本物ですか?」
 
「証明するにはアベンジャーズの、
 メンバーを連れてくるのが、
 手っ取り早いのですが、
 何ぶん彼らも平和維持活動で、
 多忙なので申し訳ありません」
胡散臭うさんくさいけど、
 悪い人ではなさそうね。
 でも何で私に声を掛けたの?」
 
スカウトです
「スカウト?私を?
 事務員として?
 
「我がシールドにも事務員はおります。
 なぜ事務員と?」
「私の仕事が事務だから」
 
「そうだったんですか。
 すいません、あなたの素性すじょうは、
 大まかにしか知らされてなくて。
 名前と住所と携帯番号、
 あとは適性者てきせいしゃであることだけしか、
 手元のデータにはなくて」
「適性者?」
 
「はい。
 中山つむぎ様。
 あなたはヒーローになるための、
 身体能力素質を持っておられるのです」
「私が?
 そんな私、運動も得意じゃないし、
 特別なことと言えば、
 サクランボのくきを、
 舌で結べるぐらいですけど。

 会社の忘年会で披露したせいで、
 エロい女だと噂されて正直困ってます
 
「それは心中お察しします。
 ですがあなたは、
 あのスパイダーマンと同じ能力を、
 身に付けることができる体質なのです」
「ほんとに?
 私も糸を出して、
 銀座の町を飛び回れるの?

 
「可能です」
「ええ~どうしようかな~。
 お給料ってどうなります?」
 
「世界を救う仕事です。
 年間で一生困らないほどの、
 報酬を手にすることになります。
 命懸いのちがけの仕事ですから」
「う~ん、命を懸けるってのは、
 ちょっと重いけどヒーローでしょ?
 違う、ヒロインか!
 私、スパイダーウーマンになるの?」
 
「左様です。
 契約して頂ければ、
 あなたは新たなメンバー、
 スパイダーウーマンとして、
 彼らと共に世界を守ることになります
「OK!いいわ!
 あの会社も宴会芸のせいで、
 居辛いづらくなったし。
 こんな機会は、
 もう一生回ってこないでしょ?
 やるわ!スパイダーウーマン!」
 
「ありがとうございます。
 後から言うのは、
 ルール違反となるといけませんので、
 先に申し上げておきますが、
 スパイダーウーマンになるには、
 簡単な手術を受けて頂きます。
 その点は大丈夫ですか?」
「そうよね。
 私、糸出せないし。
 あれでしょ?
 ピーター・パーカースパイダーマンみたいに、
 放射線を浴びた蜘蛛に、
 まれればいいんでしょ?」
 
「あれは特殊な例でして、
 あの方法はまだ確立されてないのです」
「そうなの。
 じゃあ、どんな?」
 
「まあ薬の投与簡単な手術で、
 彼と同等程度の能力を出せるのは、
 実証済みなのでその方法になります」
「お薬と手術…それは仕方ないか。
 スーパーヒロインになるんだもんね?
 それで彼のように手首から糸を出して、
 自由自在に飛び回り、
 敵をバッタバッタ倒すんだから」
 
「いえ、それは無理です」
「無理?
 え?!
 私、スパイダーウーマンに…
 なるんじゃないの?」
 
「なります。
 でも手首から糸を出すのは無理です
「どういうことですか?」
 
「あれはピーター・パーカーだけしか、
 できないことでして、
 あなたは通常通り、
 蜘蛛と同じお尻からしか糸を出せません

おしりから…糸…
 いやーーー!!
 絶対!やんなーーい!!!」


 このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。

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