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文明開花

無人島
ひとつだけ持っていくならという話。

前作はこちら。

男性二人の会話。

「そもそも無人島に何か持ってくって、
 質問自体がダメだと思うんだよね」
「いきなり、全否定」
 
「状況を変えた方がいいと思うんだ」
「どんな風に?」
 
文明のない時代に、
 ひとつ持っていくなら、
 何持ってく?って感じに」
「大幅な方向転換ほうこうてんかん
 でもタイムスリップ面白いね。
 文明がない時代ってのは斬新ざんしんかも」
 
「で、俺も試しに考えたみたんだけど、
 この答えが結構悩むんだ…。
 なかなかこれっ!てものが、
 決められなくてさ」
「これは難しいっしょ」
 
「だからちょっと
 その文明のない時代をイメージして、
 生活してみようと思うんだ」
「おおう、いいよ。
 何すんの?」
 
「まず何も持ち込まず
 生活してみようと思うから、
 ちょいちょいアドバイス頂戴ちょうだい
「ああ、いいよ。
 生活してみると、
 必要なものわかるからな…いいよ」
 
「行くぞ!
 まず朝、起きるところから…。
 ふぁー朝か、ぶるぅぅぅ超寒いな。
 え?!服ってこれ?!
 葉っぱ?!しかも1枚?!
 じゃあ…服で決まり!」
「おい!
 早くねえ?結論」
 
「いや、だって寒いのきついっしょ」
「きついけど、朝起きてまだ1分
 もうちょっと、生活してみたら?」
 
「そう?…まあそうか。
 まだ他に大事なものが
 あるかもしれないしな。
 わかった。じゃあ、起きました。
 葉っぱ付けた。寒いです。
 でも頑張って起きます。
 そしてシャワー浴びます…
 ない?ないの?
 はいシャワー…シャワー確定!」
「馬鹿なの?ねえ?
 シャワーってどうすんの?
 まず持って行けないよ?
 仮に持っていけても電気ないからね。
 使えないでしょ?
 それにエコキュート背負せおって、
 太古たいこへ飛ぶの?」
 
「あっ、そうか。
 いや俺、寝汗の量おねしょレベルで、
 朝シャワー浴びないと、
 一日気持ち悪くてさ」
「それは現在の話ね。
 そしてそれあまり聞きたくなかった…うん。
 寝汗ひどいのは水浴びで、
 何とかなるんじゃないかな?」
 
「そうか!
 頭いいなお前。そうしよ。
 朝起きて、葉っぱ付けた。
 寒いです。起きます。
 葉っぱ外します。水浴びします。
 寒いです。拭くもの…。
 タオルだな。きれいなタオル
 タオル決定!」
「いいの?!
 タオルで?!」
 
「体の清潔健康を守るには
 タオルでしょ!
 ちなみに俺は、
 一度フェイスタオルで軽く拭いてから、
 バスタオルでしっかり拭き取る派ね」
「今、お前の朝のこだわりどうでもいいわ!
 しかもタオルとバスタオルで、
 2枚になってるからな」
 
「そうか!
 困ったぁ~
 俺2枚ないとダメなんだよ~。
 どうしたらいい?」
「知るか!」
 
「分かった!
 でっかいバスタオルを持っていって、
 あっちでハサミで半分にすれば、
 ひとつで済むじゃん」
「ひとつ増えてるけどな」
 
「………あっ!」
「気づくのおせえよ」
 
「駄目か。もうちょっと考えてみるか。
 朝起きて、葉っぱ付けた。
 寒いです…」
「もうそのくだり飛ばしてよくない?
 これ夜までこの調子で行くの?」
 
「そうか。じゃあ水浴びしました。
 寒いです。葉っぱ付けた。
 でも我慢します。帰ります。
 足痛っ!!クツクツクツクツ!」
「お前、イベントごとに
 もの欲しがるなあ!」
 
「いやそう言ったって、
 今3か所ほどとげ刺さったから…
 あっ!棘抜き?」
「本格的に馬鹿なの?
 もっとひとつの品物で、
 色んな効果が得られるものとか
 あるっしょ?」
 
「そうか!
 ロキソニン
 痛み止めと、
 解熱作用のダブル効果!」
足の痛みから離れろ!
 痛いのはわかるけど……
 いや、わかんねえよ!
 いいか、よくみんなが言う、
 ナイフとかライターとかあるだろ?」
 
「いや、今はいらない。
 れてきたから」
「だから足から離れろって!
 のめり込みすぎだろ。
 予行練習であることを思い出せ」
 
「そうか」
ナイフなら物を切ったり、
 けずって道具とか
 色々作れたりするだろ?
 ライターは簡単に火が起こせるし、
 料理とか身を守るのに便利だろ」
 
「なるほど。お前頭いいな
「いや、大抵の人間はすぐ気付くけどな。
 あとは水の確保のためのろ過器とか、
 釣り竿っていうのも定番だけどな。
 生き抜くために
 一番大事だと思うものを選ぶんだよ。
 ひとつだけって条件なんだから」
 
「そうか。わかった!
 今度は完璧!」
「何かひらめいた?」
 
「これなら、みんな納得」
「で、何持っていくんだ?」
 
お前!」
「はっ?」
 
「お前、何でも知ってるし、
 連れてけば、全部やってくれるだろ」
俺がお断りだよ。
 もういいわ」
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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