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スーパーなレジ

【レポーター】
「本日は話題のスーパー、
 マスダマエダ岡田店に来ています。
 
 1年前までこのお店は、
 近所に出店した、
 大型ショッピングモールの影響えいきょうもあり、
 深刻しんこく客離きゃくばななやんでいたそうです。
 
 そんな中このスーパーでは、
 画期的かっきてきな方法で、
 お客様を呼び戻すことに、
 成功したそうなんです。
 
 その立役者たてやくしゃの店長の前田さんに、
 お話をうかがいたいと思います。
 よろしくお願いします」
「前田です。よろしくお願いします」
 
「早速ですが、
 その集客につながった秘訣ひけつを、
 教えて頂けますか?」
「はい。ではこちらへ。
 うちは小さな地元スーパーでして、
 以前は時代の流れに乗り遅れまいと、
 このようにセルフレジ電子決済も導入し
 大手に付いて行こうとしてました。
 
 ですがそれにも関わらず、
 お客様は日に日に減っていき、
 オープン当初からの馴染なじみのお客様と、
 距離的な問題で来られる、
 ご近所の高齢の方しか来店されなくなり、
 来店者数はピークの6割まで落ちました
「それはお店としては深刻ですね」
 
「はい。
 そこで真似しただけでは、
 大型店さんにはかなわないと、
 独自のレジもうけることにしました。
 
 まずはこちらはセルフレジレーン。
 最近の利用は2割程度です。
 
 その隣は高速レジレーンです。
 こちらはうちの精鋭せいえいスタッフが、
 その名の通り高速…
 いや超高速で精算します。
 最近では口コミで見学に来られる方や、
 動画撮影に来られる方もおられます。
 
 そして隣は通常レジレーンです。
 ここは極々一般的なレジになります。
 スピードを求めない方は、
 こちらに並ばれます。
 
 そしてこちらはしゃべりレジレーンです。
 ここは特に常連さんが利用され、
 ゆっくりお喋りを楽しみながら、
 会計できるようになってます。
 これは海外のスローレジを、
 参考にさせてもらいました。
 どこであれ世間話をしたいのは、
 万国共通なようで常にこのレーンは、
 お客様がえません。
 
 そしてここが当店のオリジナル、
 お喋りレーンです。
 レジの前に椅子を5つ設置して、
 スタッフとお客様が、
 会話するだけのレーン
になります」
「これはまるで、
 バーカウンターみたいですね」
 
「はい。
 ここでは世間話はもちろん、
 お店に対する要望や、
 お客様の悩みや愚痴、
 様々なことが話されています」
「でもこれはお店的にいいんですか?
 申し上げにくいのですが、
 働かずにお喋りをしてる社員さんが、
 いるわけですよね?」
 
「その通りです。
 ですが先程も申し上げたように、
 お客様の要望も聞けたりします。
 
 それは生の声であり、
 お店の改善点でもあるのです。
 
 当店でもお客様の声を聞く、
 投書箱を設置していたのですが、
 やはり心無いものも多数ございました。
 
 こうやって、
 人と人とが向かい合って話をすることは、
 ただの感情論にはならず、
 意見交換によってより良い改善案に、
 繋がっていくといういい効果を、
 もたらしてくれました」
「お店側もお客様も一緒になって、
 いい関係性いい環境作りを、
 おこなっているのですね」
 
おっしゃるとおりです。
 それにちょっとユニークな現象も、
 起きているんです」
「それは何ですか?」
 
「実はこのレーンだけ、
 飲食することを許可してるんです
「このレーンだけですか?」
 
「はい。
 お買い物をされる方の中には、
 ついでにご自分用のご褒美ほうびを、
 購入される方も多いようなんです」
「あっ、それ私もよくします」
 
「お話だとおうちに持って帰ると、
 いつの間にか食べられたりとか、
 見つかってしまって、
 お子さんに取られたという方が、
 結構な数おられまして」
「なるほど…
 わかりました!
 ご自分用のご褒美を、
 ここで食べていくんですね!

 
「はい。
 世間話にスイーツや飲み物は、
 付きもの
ですからちょうどいいそうです。
 中には会話の途中で、
 おかわりを買ってこられる方も
 おられるようです」
「それは楽しそうですね」
 
「たまに私も参加しますが、
 とても楽しいですよ。
 そして今では、
 誰もここをお喋りレーンとは、
 呼ばなくなりましたね

「では一体何と?」
 
オアシスです」
 
「素敵ですね」
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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